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二人の夢

私一人の夢

かれこれ数年来、私は作家として、モデルとして、そしてライターとして仕事をしてきた。

「これらの三つの仕事を組み合わせたら、何か新しい価値を世の中に提供できるのではないか」

そう思いながら仕事に取り組んできた。

私の思いとは裏腹に、私のこの発想は当初あまり高く評価されなかった。

モデルをやっているということから、適当に容姿のことを言われて終わるだけなら相手の感性の乏しさを笑うだけでいい。困るのはモデルをやりながら文章を書いて発信していても、それ自体を評価することなく、ただ上から目線で「よく頑張ってますね」などと褒めてくる人間の多いことだった。

さらに容姿を売っている部分もあることから、私の取り組みを見ようともしないのに「ちやほやされて調子に乗ってる人間」「表面だけの薄っぺらい人間」などと言ってくる人もいる。

始めた当初、別に私のやろうとしていることがそこまで斬新だとも思っていなかったから、もう少しすんなりと受け入れられるものだとばかり思っていた。だからこうして自分がやっていることが、思うように評価されないことに悩んでいた。

最近になって(30歳手前になって)(「20代の女」があと少しで終わる頃になって)ようやく私の取り組みがポジティブに評価されるようになったという実感が湧いてきた。

私の働き方を「新しい働き方」として注目してくれる人も増えた。自分の働き方がすべての人に適しているなんてことは全く思っていないけど、こうして「新しい働き方」を貫いていけば、たくさんの人の支えになれるのではないかという気にもなる。

私はそういう存在になることを夢見て、今までいろいろなことに挑戦してきた。

作家・モデル・ライターとしての成功、そして「文章が書ける美女」としての地位の確立……これらの私の夢がようやく今、形になりつつある。

「夫婦の夢」になったとき

私がこの仕事を始めたのは2016年。そして初めてミスユニバースに挑戦したのは2014年。夫と結婚したのは2017年。

夫は最初から私の夢に興味があるわけではなかった。夫が私の夢を肯定し、期待するようになったのはここ2年くらいのことだ。

自分が一生懸命取り組んでいることに対して否定的な夫の姿勢に、私もイライラを募らせていたのだろう。結婚してから私たちは私の仕事や夢のことで激しく喧嘩をした。かなり激しい夫婦喧嘩で、下手をしたら離婚していたかもしれないレベルのものだった。

でも、夫婦喧嘩の後からは、夫の私の夢に対する見方も大きく変わった。私の夢を肯定し、期待するようになった。

「詩織が稼いでくれるから、俺は主夫になるよ」

なんてことも言ってくれる。私のことをそうやって期待してもらえるのはとても嬉しい。そして、

「会社員の俺が主夫になって、詩織が稼ぐんなら、今住んでいる場所に住み続ける必要もない。一緒に北海道に移住しよう」

なんてことまで言ってくれる。

私一人の夢だったら、北海道移住なんて膨らみ方はしなかった。もしかしたら私はずっと死ぬまで戦い続けていたかもしれない。

でも、大好きな夫がいてくれるのであれば、私の夢もまたわくわくするものになる。

私の作家・モデル・ライターの仕事の夢は、夫と共有できる「夫婦の夢」になったのだ。

私の夢は私一人の夢ではない

私の取り組みを、あれこれネガティブに言ってくる人は今もいる。というよりも、基本的に向こうは悪気があるわけではなく、無意識に私を見下しているのだから、私がモデルをやっている限り上から目線の傲慢な人間は付いて回るのだろう。

こうやって人前に出て、ステージに立って、自分で「文章が書ける美女」なんて名乗っている私を見て、「さぞ強い女なのだろう」などと思う人も多いかもしれない。

でも、実際には違う。私はとても弱い人間だ。

頭では「あの人達は馬鹿だから私を見下すことしかできないんだ」と分かっていても、心はかなり傷ついている。数が多いのも私がダメージを受ける原因の一つだ。

「こんなことやってて意味あるのかな」

弱い人間である私は、頻繁にそんなことを考えてしまう。

落ち込んでいる私に夫は語る。

「詩織が稼いでくれるから、俺は主夫になるよ」

「会社員の俺が主夫になって、詩織が稼ぐんなら、今住んでいる場所に住み続ける必要もない。一緒に北海道に移住しよう」

私の夢は、私一人の夢ではない。

この想いが、私に力を与えてくれる。








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