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プロ野球の運営会社はどんな会社?♯ 8 ソフトバンクグループ株式会社

 前回、楽天グループ株式会社について調べたのですが、楽天とソフバンクはどちらも2005年シーズンから球団運営を開始しました。当時はどちらも新進気鋭のIT企業というイメージがありましたが、現在は事業が多角化し、当時とは企業のかたちが大きく変化しています。ソフトバンクグループ株式会社がどのような会社なのか、楽天グループとの違いにも注目しながら、今回はソフトバンクグループについて調べていきます。

◯会社創設から球団買収まで

 1981年、孫正義さんによって株式会社日本ソフトバンクが設立され、ここからソフトバンクの歴史が始まりました。孫さんはアメリカ留学の際に「これから世界はパソコンの時代になる」と確信し、パソコンのソフトウェアを日本に流通させる事業を最初に取り組みました。

 1994年、グローバル企業になることを目指し、ソフトバンク株式会社に社名変更、同じ年に株式市場への上場を果たし、ここからソフトバンクの事業拡大が進んでいきます。1996年には日本におけるインターネットビジネスへの本格展開を図るため、米国Yahoo! inc.との共同出資により、日本法人ヤフー株式会社を設立、Yahoo!JAPANなどインターネットに関する事業や子会社を次々に立ち上げていきます。

 2000年にアリババグループに出資、このあたりから将来有望な企業に出資をすることで時価総額を上げていくことがソフトバンクのスタイルになっていきます。そして、2005年にホークスを買収してプロ野球に参入、ここでソフトバンクの名前が一気に世の中へ知れ渡りました。

◯ソフトバンクグループの現在の事業

 2023年6月21日に提出された有価証券報告書から、ソフトバンクグループの現在の事業を確認していきます。セグメント別で見ると、ソフトバンクグループの事業はコンシューマ、法人、流通、ヤフー・LINE、金融、その他に分けられています。各セグメントの主な内容については以下の通りです。

①コンシューマ

 個人に対するモバイル、ブロードバンド、電力サービスなどで、ブランドとしてはSoftBank、Y!mobile、LINEMOなどがあります。

②法人

 法人へのモバイル回線提供、携帯端末レンタルなどのモバイルサービス、固定電話やデータ通信などの固定通信サービス、クラウドやセキュリティなどの法人サービスがあります。

③流通

 元々、ソフトバンクはパソコンソフトの流通から歴史が始まりましたが、現在でも個人向けにパソコンやモバイル、ソフトウェアなどをソフトバンクショップや家電量販店に、クラウド関連商材、通信サービス、先端技術などを法人に卸すなどの事業があります。

④ヤフー・LINE

 インターネット上、LINE上の広告、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNなどがここに含まれます。

⑤金融

 クレジットカードやQRコード決済などのキャッシュサービスやPayPayなどがここに含まれます。

⑥その他

 5つのセグメントに分類できない事業がここに分類され、企業の働き方改革の推進や社内システムの導入などの事業がここに含まれます。

 ①〜⑤のセグメントでソフトバンクグループは2023年3月期、2022年からの1年間で約7700億円のセグメント利益を上げています。最も利益を出しているのはコンシューマ事業で2023年3月期に約4600億円の利益があります。楽天グループが大幅な損失を出している事業でソフトバンクは大きな利益を出していますが、これには理由があります。

 楽天グループは基地局の建設といったインフラ整備など、ほとんどゼロの状況からモバイル事業を始めました。しかし、ソフトバンクは当時、日本の携帯電話市場でシェア3位だったボーダフォンの株式を取得、社名を変更しての事業スタートだったため、インフラ整備にそこまで投資をする必要がありませんでした。ソフトバンクも当初はゼロからの携帯電話事業への参入を検討していたのですが、この時の選択が明暗を分けることになりました。

◯ソフトバンクグループとホークスの今後

 ここまで紹介してきたソフトバンクグループの事業については利益を出せているものが多いですが、ここ数年、ソフトバンクが大幅な赤字を出しているという報道を耳にすることが増えています。

 ソフトバンクが赤字を出している事業の1つが傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)です。SVFはグローバルベンチャー企業への投資を事業としているのですが、この投資事業の失敗がソフトバンクグループ赤字の原因になっています。

 ソフトバンクがホークスを買収して、もうすぐ20年になりますが、2010年代のホークスは間違いなく黄金時代でした。しかし、ホークスは現在、過渡期に入っています。正直、これまでの福岡ソフトバンクホークスは圧倒的な資金力を武器にして、ドラフトで選手を大量に獲得、そこからチームの主力となる選手を多く輩出したことで黄金時代を築きました。特に千賀滉大投手、甲斐拓也選手など育成登録から支配下登録を勝ち取った選手が活躍したことでホークスの選手育成が評価されている部分がありました。しかし、ここ10年、ドラフト上位指名で入団した選手がホークスの主力選手になるケースが少なくなっており、そこが問題になっています。

 正直、これまでのソフトバンクホークスは釣りで例えると、大きな網で魚を大量に釣り、その網に巨大な魚が偶然引っかかっていただけで、今は大きな網を投げても、良い魚が引っかからない状況になっていると思います。これからは槍で狙いを定めて、良い魚を確実に獲得することに力を入れなければいけません。ソフトバンクは企業の改革も事業の1つとしているため、今こそ腕の見せ所なのだと思います。


◯出典
・ソフトバンクグループ株式会社 2023年11月8日
https://group.softbank/

・ソフトバンクグループ株式会社 ソフトバンクグループの歩み 2023年11月8日
https://group.softbank/philosophy/history

・ソフトバンク株式会社 有価証券報告書・四半期報告書 2023年11月8日
https://www.softbank.jp/corp/ir/documents/security_reports/


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