ローン人間(えせエッセイNo.9)
頭が痛い!!
低気圧のせいだろうか、頭が割れそうだ。孫悟空が頭を締め付けられているイメージに近い。悪いことばかりしているので仕方がないか……
朝から大雨警報が発令されている。特大の低気圧だろうか。当然、こんな日は会社に行きたくない。
こんなときに、コピー人形が居てくれたら……
誰もが憧れたであろう、あのコピー人形。藤子不二雄の名作パーマンのコピー人形だ。鼻を押すだけで、押した人そっくりの人がむくむくっとできあがる。目印は、赤い鼻だ。
1996年、イギリスでクローン羊が誕生したことが大きなニュースになった。
「コピー人形が完成する日も近いか」
そんな風に感じた人も多いに違いない。何を隠そう、私もその一人だ。これで学校や会社をサボれるぞ……と。
しかし、残念ながら日本におけるクローン人間の研究は、2000年に法律で禁止さてしまった。具体的には禁止されたわけではないようだが、かなり制限があるようだ。
専門外なので詳しくはわからないが、コピー人形の実現が難しいことだけは理解できた。
コピー人形が実現不可能と考えただけで、心にぽっかりとバスケットボールくらいの大きな穴が開いたような気がした。
安西先生の幻聴が聞こえる。
諦めて出社した。
心にぽっかりと空いた穴は、何かほかのモノで埋めなければならないらしい。失恋でぽっかりと空いた穴は、ほかの人や趣味、自分磨きなどで埋めるという。
コピー人形で空いた心の穴は
ぽぽちゃんかメルちゃんで埋めるしかないのか……
ぽぽちゃんの画像を探していたら、とても魅力的な大人のぽぽちゃんが見つかった。しかし、この件については、そっとあなたの胸の内に秘めておいてもらいたい。決して「楽天Kobo」のぽぽちゃんを検索してはならない。
絶対にだ。
話は変わるが、私の知り合いに、ローン人間がいる。少なくとも2人以上。話を聞くと、いくつものローンを返済しているらしい。
決してあやしい裏社会の金融会社ではなく、表社会の金融会社だと聞いて安心した。一方で、自分の考えとまったく異なる人がいることに驚く。
どうやら「借金は自分の財産だ」と認識しているようだ。そういう考えもあるのかと、新たな知識を得て小躍りしたい気分だった。
今まで私が借りたローンといえば、住宅ローンだけだ。車はお金を貯めてからキャッシュで買っている。今はお金が貯まらないから、修理に16万円かかろうが、車検に15万円かかろうが、乗り続けるしかない。
住宅ローンも昨年の春に払い終わり、現在はノーローン人間になった。肩の荷も下り、心なしか五十肩も軽くなったような気がする。
コリコリと音が鳴るのだけが気になるが、首もまわる、まわるよ、お金は回る。いや、お金は全然まわってないのだが……
私の場合、ローンの支払いがないことで肩の荷が下りたと感じたが、ローン人間の感覚とは異なる。
彼らは、ローンの支払いを終えると、安心するどころか不安になるらしい。ぽっかりと空いたローンの穴を、別のローンで埋めなければならないと焦燥感に駆られるらしいのだ。
以前、職場が一緒だったA君は、ローンでハーレーを買った。そして、まだまだローンが残っている状態で事故を起こし、入院。自慢のハーレーは廃車だったらしい。
かなり酷い事故だったようで、片目は失明寸前だったという。少しずつ回復していったが、何年経っても「片目が見え難いんですよ」と吐露していた。
そんな彼は、まだバイクに乗れる体ではないのにバイクを買っていた。乗るよりも改造することの方が楽しいらしい。
それはいい。バイクには人それぞれの楽しみ方があるだろう。
しかし新しいバイクも、当然ローンでの購入だった。そして、ローンが1つ終わりに近づくと、次に購入するものを考えるらしい。「ローンの権を他人に握らせるな!」といったところだろうか。
ローンの枠を決して開け渡してはならない。それが彼のルールなのだ。ぽっかり空いた穴は、違うローンで埋めなければ気持ちが悪いらしい。
それがローン人間。
最近よく聞くタイパの話とは真逆の考えだ。ほんの少しでも隙間があればねじ込んでくる。ローン人間は手強い。節約という意識は毛頭ない。あなたも、ローン人間には気をつけた方がいいだろう。
クローン人間とローン人間。一字違うだけで大きな違いだ。
おしまい。
只今、心の隙間を埋めるためにお仕事依頼を募集中です。じゃんじゃんバリバリ書きますので、下記フォームまでお願いいたします。
追伸
記事を書いている間に「緊急安全確保」の指示が鳴り響いた。どうやら、隣の市で土砂崩れが発生したらしい。ここは赤い鼻のコピー人形に任せ、私はそそくさと 帰宅 避難してもいいだろうか。
頭も痛いし。
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