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いつだって俺らの誇り

最初に言っておくと、私はあまり物事に関心がない。冷めているわけではないけれど、面白いと思っても大抵は次の日に興味を失っている。究極の飽き性なのだ。

何かに夢中になれる推しがいる人が羨ましいけれど、理解できないだろうなと、芥川賞を受賞した『推し、燃ゆ』は、気になるのに読めなかった。

そんな私に転機が訪れたのが、2021年に開催された東京オリンピックでサッカーを見たこと。
なんとなくテレビをつけたはずなのに、目が離せなくなった。サッカーは見たことがなかったけれど、有名な選手は知っていて、夫と興奮しながら見たのを覚えている。
代表の中にいた相馬選手のことが気になり、もっとプレイが見たくて応援しようということになった。そこから彼が所属している名古屋グランパス(以下、グランパス)のサポーターになり、「推し」という存在ができた。

初めてスタジアム観戦したのは、パナソニックスタジアムでのガンバ戦。
スタジアムデビューは、グランパスのホームである名古屋で見たかったけれど、大阪に住んでいるため、なかなか行けなかったのだ。
アウェー戦となると、グランパスサポは少ない。どこの席をとればいいのかもイマイチわからず、ガンバサポに囲まれた席とわかったときは圧倒されて泣きそうになった。

幸先が悪いと思っていたけれど、その試合でグランパスは勝利したのだ。初めてのスタジアム観戦で勝ちを得た嬉しさと生のダイナミックな選手たちのプレイに感動し、そこから超スピードで沼っていった。

だけど、すぐにグッズには手を出さなかった。

理由は飽き性だから。
グッズの中でも欲しいのはやっぱりユニフォーム。
応援グッズといえど、諭吉が出陣しなくてはならないほどお高いのだ。

買ったとしても、応援しなくなったら?興味がなくなったら?ベテランの飽き性なので、自分の好きが信じられずに、とりあえずグッズを買うのは一年経ってからに決めた。

今、我が家にはユニフォームが2着ある。
律儀に一年経ってから、夫婦でそれぞれの推し選手のものを買った。スタジアムへなかなか行けないから、家で見るときでもユニフォームを着て応援することにしている。これがなかなか面白い。着るのと着ないのとでは、テンションの入りようが違うのだ。

当たり前のことだけど、グランパスが勝つとめちゃくちゃ嬉しい。試合のハイライトは何回も見るし、選手たちのSNSもその日のうちにチェックする。一通り喜びを噛み締めたら、最初から試合をもう一度見る。なんなら、グランパス以外のほかのチームの試合も見まくる。

グランパスが負けると、その瞬間、週末は地獄に変わる。(試合はほとんど土日)もう何もできない。力という力が全て抜けて、気力もゼロ。記憶力なんかも急激に低下して、試合後のことはほとんど覚えていない。夫婦の会話も、中身のない話ばかりになってしまう。

なんで勝てない。なぜ、いい選手がいるのに勝てないんだ……。

連敗なんてした日には苦しすぎて、発狂することもあった。もうサポーターなんて辞めてやる!と違うものを好きになろうとしてみたけど、どれも夢中になれなかった。
むしゃくしゃしてイングランドのプレミアリーグを見ることもある。プレミアリーグは、猛者たちの集まりなのでスキルがJリーグとは桁違いなのだ。なんじゃ、そのプレー!!!というのが続出する。それはそれは、面白い。面白いのだけれど、何かが違うのだ。

2023年Jリーグ第20節、横浜F・マリノスとの一戦。首位争いで、優勝を目指していたグランパスは先制点を獲った。そのまま勝ちきりたかったけれど、同点で終了。試合後に、サポーターが選手に歌ったチャント(応援歌)を聞いて、泣いた。

信じてる どんな時でも
愛してる どんな時でも
いつだって 俺らの誇り

SEMPRE(名古屋グランパスの応援歌)

本当にこれに尽きる。
どんなに連敗しても(今シーズンは3連敗スタート)、離れられないし、選手たちを信じている。絶望することもあるけれど、嫌いにはなれない。

サッカーの細かいルールや戦術なんて知らない。わからないくせに、ましてや関心がない奴が、こんなに好きなのだから、偏愛といっていいんじゃないだろうか。

Discord名:ケイ
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