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ゲーム法廷【事例No.1】勇者を名乗り窃盗を繰り返した男の話。

【ゲーム法廷とは・・・】

ゲームや漫画の中に出てくる「凶悪犯」たちを、「裁判長もっぴ」が一人ひとり吊し上げていくという法律がテーマの空想企画です。なお、可能な限り、実際の日本の法律に基づいて執筆しておりますが、あくまで空想の世界の話です。正確な情報を知りたい方は、お近くの法律の専門家にお尋ねください。

■事例:勇者を名乗り窃盗を繰り返した容疑者R


被告人Rは、自ら「勇者」の名を語り、訪れた街の住人を安心させた上、深夜、全住民が寝静まった後などを見計らい、無断で住居に進入。さらに金品を窃取したもの。訪れる街すべてで犯行におよび、その後逃走。趣味である野生動物のハンティングに用いる刀剣の購入資金などに利用した。
被害総額は約5000G。素泊まりの宿泊料金が大人1人50G程度であることから、日本円に換算して数十万円にあたると考えられる。また窃取した品には希少価値の高い品々も多く、その被害は甚大なものと想像される。

■窃盗罪なら10年以下の懲役及び50万円以下の罰金

この勇者Rさん、はっきり言ってかなりの悪行を繰り返しております。相当な極悪人といえそうですが、このケースでは・・・、

【刑法第130条:住居侵入罪】
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

【刑法第256条:窃盗罪】
1.盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2.前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

上記の罪が該当してくるでしょうか? ただ、そこは正義の味方、勇者Rさん。救済の手立てが全くないか?というと、決してそんなことはありません。

勇者を救済するためには「違法性阻却事由」にあたるかどうかが焦点になりそうです。「違法性阻却事由」とは、簡単にいえば「確かに窃盗などの罪にあたるけれども、社会的には妥当性があり、特に悪いわけじゃないよね?」と考えられるかどうか、ということ。

例えば、代表的なものが「正当防衛」です。人を殴ったこと自体は、傷害罪にあたります。けれども「ちょっとまて!それは反撃なんだから仕方がないんとちゃうか?」と判断されて罪に問われない、となるわけです。(…もちろんやり過ぎはダメですけど)

勇者Rさんの場合、この「正当行為」にあたるがどうかが争点になりそうです。

■容疑者の行為は「正当な業務」にあたるのかが争点

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【刑法第35条:正当行為】
法令または正当な業務による行為は、罰しない。

たとえば、スポーツでケガをさせてしまっても罪にならない、というのはコレにあたります。この「正当な業務」には、「被害者が承諾しているケース」というのも含まれますから、例えば「勇者様に持っていって欲しい!」みたいな世界共通の思いが立証できるとしたら、なんとかなるかもしれません。

ただ、悪人の金品を盗んだ場合であっても、れっきとした犯罪です。世界中のみんなが「持っていって下さい」と思っていたと考えるのは、やっぱり相当無理があるような…。

勇者Rさんの無罪への道のりは、ラスボスを倒すよりも険しそうです・・・。

■あなたが「犯罪プレイ」をしないために

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1.他人の家に勝手に忍び込まないこと。
2.タンスや壺の中にある他人のものを、勝手に持っていかないこと。

当たり前のことですが、ゲーム内では平然と盗みが繰り返されます。たとえクリアできなくても、社会通念に逸脱しないプレーを心がけましょう。

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