温泉の楽しみ

温泉といえば、やはり楽しみなのは景色でしょうか。

初夏なら青葉がいきいきとしているでしょうし、秋には赤に黄色に色付くでしょう。山はもちろん海が見えるのも、寄せては返す波に心洗われる思いがするはずです。

しかし私の視力は0.1。めがねをかけたまま温泉へは入れないですから、正直なところ山や海の景色は見えません。

それでも楽しみなのは、温泉仲間の友人がいてくれるからこそ。今日も私がつまずかないよう、手を引いてくれています。

私の目にはっきり映るのは、友人の白い背中だけ。

「本当、あなたの背中はきれいよね」
友人は軽く笑うと「ほめても何も出ないけどね」とニッと口を横に引く。「ほら、ここはね、露天風呂から海と富士山が見えるの」
そう言う友人の背中を、私はじっと眺めていました。

本当、温泉といえば、楽しみなのは景色ですよね。