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この冬へ帰る

季節は十月、風が吹き、住宅街からはストーブを焚き始めるときの匂いがする。気候は寒さに向かう傍、人肌恋しくなるこの季節。なんとなくひとりぼっちに感じる時期。肉まんに癒される冬の入り口。
イルミネーションやクリスマスケーキの話題なんかもちらほら出始めて、あぁまた一年が経ったんだぁ、としみじみする。いつだかの幸せだった冬を思い出して苦くなる。上書きするには名残惜しい記憶を。
ここで踏み出すかどうかが、今年の冬を決めると言うのに。

そんなことを毎年思うわけだ。

iPhoneのメモアプリに、作詞帳がある。
二年前、高校三年生のこの時期に書いた歌詞。
これを読み返すともう、不思議なことに、いま感じていることそのままで。感動してしまう。
自分で書いたのに、変な話だよ全く。

それでは聞いてください、


『この冬へ帰る』


薄暗く色づいてきた天
夜の始まりまだ5時半
懐かしくほろ苦いあの場所
なぞり歩いてみた夕暮れ
あれから一周また巡ったか
好きじゃない季節も いつしか過ぎ
前の冬の あったかさは消え
誰もがひとつ年をとった

もう一度幸せになることは
誰かの温もりを感じることは
私には私にはできるかな
合言葉を伝えられたら...
もうすぐ今年も終わる

あの頃には戻りたくないけど
このまま誰とも寄り添いあえない
人生で終わったらどうする?
お気に入りの歌に馳せた思い
呟いてすぐいいねの通知
君にも分かるのかい この思いが
明日になれば また始発の電車
この暗がりも過ぎるだろう

もう一度温めたいと思えた
今なら踏み出せるかもしれない
降り注ぐ積もる世界の愛50
μL増やせたら
もうすぐ雪が降るかな

人工の光溢れる
冬の景色の醍醐味を
「きれいだね」と言えるように。

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