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寸劇「THE・ネーム」

〈ここは2XXX年の日本。数百年前は「キラキラネーム」というのが流行ったそうだが、今では「THE・ネーム」というのが流行っている。そして、その名前のインパクトは人々のスクールカーストや会社の取引にも影響している。

「THE・ネーム」がどのようなものかは多種多様。ここでは「THE・ネーム」がいかなる効力を発揮し、そしてどんな名前なのかを見ていただこう〉


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面接官  「えー、本日は駅前に新設するショッピングモールのテナントの件でお集まりいただきありがとうございます。東棟の1階、一等地に3件のご応募がありました。今回はこの場所に入るお店──仮にA店B店C店、それぞれの従業員のかたのお名前並びに店名で決めさせていただきます。3店にはそれぞれ従業員代表者3名お越しいただいております。」

A店  「よろしくお願いいたします」

B店  「よろしくお願いいたします」

C店  「よろしくお願いいたします」

〈全員おじぎ〉

面接官  「わたくしは皆様のお名前やどのようなお店かについては全く情報を得ておおりませんので、これからよろしくお願いします。えー、そうしましたらまずA店のほうからお願いします」

A店  「はい。まずわたくし先鋒『高橋 一郎』と申します」

面接官  「ははあ。なんとも普通のお名前のように聞こえますねぇ。現代での希少性という策でしょうか」

B店  「貴店には「THE・ネーム」の方がいらっしゃらないんですかねぇ?」

C店  「もしかして全員普通の名前という奇策?」

面接官  「まあまあ。ではB店の先鋒をお願いします」

B店  「わたくし、名字が桃。名前が太郎で『桃 太郎』と申します」

C店  「あら、一郎の次は太郎かぶりですね」

面接官  「では先鋒最後にC店の方お願いします」

C店  「はい。『松井 貴博』と申します」

C店以外の一同  「……」

〈顔を見合わせたり悩んだりする〉

A店  「あっ!!!!!!!!!!」

〈A店ハッとして立ち上がる〉

B店  「ど、どうしたんですか」

A店  「松井貴博って……もしかして……数百年前の伝説のオネエタレント、マツコ・デラックスの本名じゃない!?」

松井(C店)  「さようでございます」

〈松井嬉しそうに〉

面接官  「なるほど。そう来られましたか。それではまたA店のほうから中堅をお願いします」

A店  「はい。僕は『鈴木 一郎』です」

面接官  「ほー。A店さんはだんだんと人選がわかってきましたね。」

鈴木(A店)  「ちなみに僕は次男で一郎と名づけられました」

〈鈴木ちょっと得意気に〉

桃(B店)  「ちょっと、追加情報はずるいんじゃないですか!?」

面接官  「まあまあ落ち着いて。それではB店の方」

B店  「はい。わたしは『浦島 太郎』と申します」

高橋(A店)  「桃太郎の次は浦島太郎ですか。でも……最後の方は女性ですよね?金太郎ではないのか……」

〈高橋、B店最後の人を見ながら〉

面接官  「中堅最後どうぞ」

C店  「はい。原武裕美です。」

鈴木(A店)  「この方も誰かの本名なんですか?」

原武(C店)  「おっしゃる通りです。数百年前のアイドル、郷ひろみの本名です。」

面接官  「中堅の皆さんのお名前をお聞きしたところで傾向が見えてきましたね。では大将を。」

A店  「僕ですか。僕は皆さんの予想通り、『佐藤 一郎』です」

原武(C店)  「なんと、ひねりのないこと」

B店  「わたくし、『竹取 かぐや』と申します」

松井(C店)  「そっちできたか!そして髪型がベリーショート!」

〈松井大げさすぎる位のリアクション〉


佐藤(A店)  「うちは全員一郎ですが、C店さんもきっとひねりがないのでしょうね」

C店「失礼な発言ですね。わたしは杉本高文といいます」

桃(B店)「あなたは誰の本名なんですか?」

杉本(C店)「数百年前の伝説のお笑いタレント、明石家さんまの本名です」

高橋(A店)「ええ!あの明石家さんまの!?僕の祖父が昔のお笑いタレント好きで、明石家さんまのファンだったんですよ」

〈高橋嬉しそうに〉

浦島(B店)「話が脱線していますよ」

面接官「それでは、それぞれのお店のお名前とどのようなお店か。そして店名教えてください」

鈴木(A店)「はい。まずわたくしたちはラーメン店でございます。店名は……『二郎系ラーメン・一郎』です!」

ラーメン店除く一同「ややこし!!!!!!!!!」

〈一同ひっくり返るかのように〉

面接官「なんとまあ、意表を突いた店名ですね。ではB店さんはなんですか?」

竹取(B店)「はい。まずは店名を『できたてのポップコーンはいかが?』といいます。その名の通りポップコーンの専門店でございます」

原武(C店)「なんかその店名、聞いたことあるような……」

〈原武悩む素振り〉

佐藤(A店)「私もレトロカルチャー雑誌で見たことのあるフレーズのような……」

〈佐藤斜め上を見て悩む風〉

桃(B店)「お二人とも、きっと気のせいですよ」

〈桃、少し焦って〉

面接官「それでは最後にC店をお願いします」

杉本(C店)「はい。わたしたちはレトロカルチャー、特に昔の芸能人のグッズを取り扱うお店です。店名は「オールスター感謝店」といいます」

〈「オールスター感謝店」をゆっくり明るく〉

面接官「なるほど。ありがとうございます。以上ですべての情報が出揃いましたね。」

松井(C店)「結果はいつ頃までに出るのでしょうか?」

面接官「それがですね……選考に一週間かける予定だったのですが……」

〈面接官遠くを見る風に〉

浦島(B店)「なにか、不都合でも?」

面接官「いま、この場で結果をお伝えします」

〈面接官全員の顔を見て〉

一同「今!?!?!?」

〈全員食いつくように〉

竹取(B店)「そんなにすぐに……ですか?」

面接官「ええ。オールスター感謝店さんにテナントに入っていただきます」

〈面接官さらっと言う〉

鈴木(A店)「ち、ちょっと!そんなにあっさり発表しないでくださいよ!」

〈鈴木慌てて〉

桃(B店)「そうですよ!なんか……こう、固唾をのむ時間とか、くださいよ!」

〈桃もどかしげに〉

原武(C店)「ちなみに、うちのお店に決まった理由は……?」

〈原武恐る恐る〉

面接官「ああ、それはですね、飲食店をやる設備がないからです。はっはっ。ラーメン店さん、ポップコーン店さん、すみませんねぇ」

〈ラーメン店、ポップコーン店各々の表現で呆れる〉






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