となりのトトロ

チビの頃、文字通りVHSが擦り切れるまで観たジブリ作品が2つある。
「もののけ姫」と「となりのトトロ」だ。
前者はトラウマに近いというか、乙事主が怖くて怖くて仕方がなく、しかし怖いもの見たさのようなアレで見ていた側面が強いのだが、「となりのトトロ」には夢を見ていたのだと思う。

僕がチビの頃は両親共働きで、祖父の家に預けられることが多かった。
山の中……というほど奥深くではないが、田畑に囲まれた田舎の野山へ少し入ったところにある祖父の家は、「となりのトトロ」の舞台にそっくりだった。
数件の家と集落のようになっていて、隣の家にも同じくらいの歳の子供もおり、野山の麓までは一本道。
その一本道と一般道の交わるところに、煤苔たバス停があった。
街灯はバス停にだけあるので、夜は真っ暗というワケだ。
野山を掻き分けていくと大きな墓地公園があり、夏はセミやらカブトムシやらの虫採りが捗るから、僕も5月頃からは姉と一緒に小さな冒険に出たものだ。
トトロといえば、という楽曲「さんぽ」を聴くと、記憶力の悪い僕でも鮮明にあの頃を思い出せる。

そんな似たような環境で似たような子供が主人公の「となりのトトロ」では、不思議な出会いと冒険がある。
僕も夜にあのバス停に行ったらネコバスに会えるかも!とか、墓地公園のもっと奥の山の中まで行ったら何かいるのかもしれない!だとか、とにかく子供心をくすぐられるのだった。
祖父の家の2階は若き日の母の部屋と既にいなかった祖母の部屋があったが、埃だらけの物置になっていたのも探究心を刺激したが、ちょっと思ってたのと違う"まっくろくろすけ"が出てきてビビったのも笑い話だ。

「となりのトトロ」といえば、実はメイとサツキは死んでるだとか、ネコバスはこの世とあの世を行き来しているだとか、トトロは人を食べるとか、どちらかというとホラー要素の噂話や考察が多いことでも有名だ。
正直なところ、そう言われれば確かになぁと思うことも多いのだが、僕にとってはあの頃を思い出す時に想い出を鮮明にしてくれる作品である。
あまり野暮なことは考えたくなくて、柄にもなく考察をせず物語も気にせず、表面にある不思議な御伽噺として記憶していたい。

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