ブレードランナー

SFというジャンルは時代を先取りしなければならない。
その性質故に、SF作品が現実の未来へと影響を与えることも珍しくなく、「現実があの世界に追いついた!」というより、「あの世界があったから現実もこうなった」となっていると僕は考えている。
そんなSF作品の中でも、更にSFの根幹を築いた作品の一つが「ブレードランナー」だと認識している。
少なくとも、「ブレードランナー」から何一つ影響を受けていない後発のSF作品は無いと思うし、あったらモグリだ。

作品は個人的には面白いとは感じない。
画面も暗いが雰囲気も暗いし物語も暗い。
裏社会の殺し屋稼業みたいな背景があるから仕方ないのだが、物語はずっと平坦で退屈である。
アクションもあるものの、迫力あるものではないし、かと言って緊張感の走るスリリングなものでもないから、SF作品にそれを期待する人であれば間違いなくガッカリすると思う。
原作は(別物と言って差し支えないが)これまた有名なSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」なのだが、そのせいか物語としては小説向きに感じる。

この作品はやはりその美術に価値があると思っていて、サイバーパンクと呼ばれるジャンルをビジュアルとして完成させたことが最も評価でき、歴史的快挙だと思う。
「鉄腕アトム」が分かりやすい例だが、ロボットとかアンドロイドだとかの工学的な近未来というのは分かりやすく明るい。
当然ながら未来は明るいものだと誰もが信じたいワケだし、「鉄腕アトム」が当時の近未来の象徴であった核動力であるように、最新のテクノロジーには期待も膨らんでいる。
それを敢えて負の面から見た世界、そして描くのはそこにある裏社会というのが斬新な掛け合わせだったワケだ。
いつの時代も日陰には退廃的美学がある。

僕が観たのは82年公開当時のものではなく、後に再編集されたファイナルカット版だ。
調べて初めて知ったが、全部で7バージョンもあるらしく、最初のバージョンとファイナルカットでは全く物語の見え方が変わるほどのシーンが追加された……らしい(wikiより)。
見比べるほど作品自体に興味は無いというか、単純に面白くないので何度も見たくないから、その真意は僕には分からない。
因みに「ブレードランナー2049」も準新作ぐらいの頃に観ているが、この「ブレードランナー」の価値であるSFの礎という目新しさが無いにも関わらず、相変わらず物語は単調で面白くなかった。

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