祖母と、茶碗蒸し。
私の実家は、
両親と父方の祖母が一緒に住んでいる。
家の中では繋がっているが、
生活スペースは別の階になっていて
半二世帯住宅のようなつくりになっている。
祖母は高齢だが、
洗濯や掃除、料理など
できるうちは自分でやりたいとのことで
私の母とは別に行っている。
たまに両親が掃除を手伝ったり、
多めに作ったおかずを
お互いお裾分けしたりしているらしい。
祖母は料理がとても上手で
お正月といえば祖母の作るおせち料理だった。
祖母のなますやうま煮がないと
お正月が来た気がしない。
他にも天ぷら、オムライス、ポテトサラダ、
ちらし寿司、手羽元と大根の煮物など
どれもおいしい料理ばかりなのだが、
特に絶品なのが茶碗蒸しである。
祖母の作る茶碗蒸しは
下準備に2〜3日もかけて作る。
椎茸や昆布で丁寧に出汁をとって、
卵を濾して、具材を準備して蒸す。
季節によって、中に百合根が入ったり、
コーンが入ったり、麩が入っていたりするのも
中に何が入っているのか探す楽しみがあって嬉しい。
一般的な茶碗蒸しは少し塩気のあるものが多いが、
祖母の茶碗蒸しは栗瓶のシロップが入っているので
少し甘みがあるのが特徴だ。
私があまりにも
「おいしいおいしい」というので、
祖母は私が帰省するたびに作ってくれて
「yちゃんには夜用と次の日の朝用とふたつね」と
ひとつ多く作ってくれる。
食べ終わったあとにお礼を伝えに行くと、祖母は
「こんなおばあちゃんが作った料理だもの。
味付けはその時その時だから、
おいしいかわからないよ?」といつも言う。
(ちなみに、おいしくなかったことはない。)
そして
「yちゃんはもうおばあちゃんよりも
茶碗蒸しをうまく作れるでしょ?」と言う。
実は何度も横で見ていたり、
少し手伝ったりするので
作り方はすっかり覚えてしまったのだが、
やはり「祖母の作る茶碗蒸し」が食べたくて
茶碗蒸しはまだ作れないということにしてある。
そんな祖母も90代を迎えて、
料理をするのが少し大変なときもあるらしい。
それでも私をはじめ、孫たちが来るときは
腕によりをかけてみんなの好物を作ってくれる。
「特別な作り方はしていないけど、
おいしくなぁれ、おいしくなぁれと
思いながら作っているのよ」と祖母は言う。
もしかしたらそれは料理をするうえで
一番大事なことなのかもしれない。