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【ネタバレ有】アンサング・デュエット「リピーテッドキネマ」夜明家セッションログ

【権利表示】

本セッションログは「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『アンサング・デュエット』の二次創作です。
(C)Fuyu Takizato / Draconian
(C)KADOKAWA

※下記二次創作ガイドラインに従って作成しておりますが、問題がある場合はご連絡いただけますと幸いです。

また、本セッションログは『アンサング・デュエット リプライズ』掲載「リピーテッドキネマ」(潮牡丹様作)のシナリオを遊んだものになります。
ネタバレがありますので、プレイ予定の方はここから読み進めないようお願いいたします。
また、今回のリプレイに登場するキャラクターは、『葬列マスカレード』掲載「双子座メテオライツシンドローム」の継続キャラクターとなります。前作セッションログも読んでいただけるとさらに楽しめます。









【キャラクター紹介】

バインダー/魔術師

夜明 聆(よあけ れい)PL:糢糊
18歳 男性
夜明家の魔術師。夜明探偵事務所所属。
超越的存在との交信可能な言語(=家系に伝わる呪文)を扱う魔術を用いる。主には、異界を捻じ曲げる、別の異界を呼びだし干渉させるなどに使っている。しかしあくまで異界とコンタクトが取れるだけであり、実態はシフターである妹が運用をかなりカバーしている。
家系のしきたりにより、実の妹を生贄として従えている。しかし、命を捧げることを本気では信じておらず、「有事の際は使っていいんだな」とは思っているが、有事は来てほしくない。
◇フラグメント
・お洒落
・妹への想い=憐れみと少しの畏怖?
・魔術
・オフの日
×通る声→硝子化
・異界の言語

シフター/助手

夜明 烏(よあけ からす)GM:花乃
18歳 女性
魔術師の家系、夜明家の跡取りである聆の双子の妹。
夜明家は男性が魔術師となり、女性は生贄としてともに行動するしきたりである。そのため、聆の生贄として異界に抗う心づもりで日々を過ごしている。……のだが、本人にその覚悟がないことを内心腹立たしく思っている。
普段は大学に通いながら、異界関係の事件の際は探偵として現場に赴く。
◇フラグメント
・黒い髪
・聆からの感謝の言葉
・サイコメトリー
・夜明の血
・気怠げな声
・異界の言語

【質問タイム】

シナリオ開始前に、ふたりに質問があります。
これはふたりのキャラクターの個性や関係性を確認するためのものです。

【質問1】ふたりは互いのことをどう思っている?
【質問2】ふたりの最初の出逢いは?
【質問3】猫が好き?犬が好き?それ以外でもいいよ?
【質問4】どんなアクセサリーが好き?
【質問5】危機に陥ったとき、助手を生贄にすると思う?

『アンサング・デュエット リプライズ』p. 143

GM:ちなみに烏の回答はこう。
【質問1】「魔術師の使命を果たすには芯が足りない、頼りない兄」
【質問2】「生まれからずっと一緒」
【質問3】「黒猫。なんか自分に似てる気がして」
【質問4】「チョーカー。本来は生贄を表す首輪なんだけど、現代っぽくないからこれにしてもらった。もう、これがないと落ち着かない」
【質問5】「今のあいつじゃ無理。私は世界を救うため――なんて大義名分があるなら、喜んで命を手放すけどね」

PL:聆の回答
【質問1】「細かいとこ色々詰めてくれるしっかりしたやつ」
【質問2】「……小さ、……胎児の時から?」
【質問3】「鳥。鷲とか梟とかいいよな。あと、魔術師といえばカラス」
【質問4】「わりとなんでも」(中二心をくすぐられるものが好き。ごつい指輪とか)
【質問5】「したくないな……」

【セッション本編】

チャプター0「三日月財団・魔術対策課」異界深度4

魔術師である聆と、三日月財団の会議室に呼び出されるところから、物語は始まります。部屋には三日月財団所属の魔術師にして魔術対策課長、ロゼッタ・アサクラだけがいました。
聆は烏を連れ、部屋の中に入ります。
ロゼッタは中性的な声音で、ふたりに依頼をしてきます。

ロゼッタ「待っていたよ、魔術師。先日は『流星事件』の解決、ご苦労だった」

ロゼッタ「伝聞の限りだが、あれが現実世界に放たれていたとしたら、前代未聞の現象になっていただろう」

聆「いえいえ。こちらこそ。僕たちを見込んでくださいましてありがとうございました」

ロゼッタ「さて、今日も君たちにしか頼めない依頼だ」

聆「これはまた限定的ですね」

ロゼッタ「魔術に関する異界は多く観測されるが、魔術師はそうたくさんいる訳ではないからね」

ロゼッタ「ましてや、正当に『依頼』として引き受ける魔術師は少ない。こちらとしても頼みやすく、『解決』に導いてくれるだろうと期待している、ということだ」

聆「なるほど」

ロゼッタ「さて、依頼の話だが――およそ一ヶ月前、ある山村が突如消滅した」

ロゼッタ「住民も少なく、異界の影響は極めて軽微だったにもかかわらず、ただの一夜で村の全域が異界と化してしまったのだ」

ロゼッタ「魔術師、君には内部の調査と、この異界の破壊を依頼したい」

聆「山村は古来より異界に近いですからね……。もちろん、夜明の名にかけて解決のために尽力いたしましょう」

ロゼッタ「頼んだよ。それから今回の異界は、極めて短期間に、内部の時間がループしていると観測結果が出ている」

ロゼッタ「異界の内部では、何度も状況がリセットされていると言えば良いのだろうか……」

ロゼッタ「それに対抗するために、君には【傍観者の眼】を貸与しておく」

聆「【傍観者の眼】……ですか」

ロゼッタはふたつの指輪を聆と烏の前に差し出す。
シルバーの、いかついフォルムをした指輪だ。聆は自分の好みに合うものだと感じると同時に、奇妙な偶然を感じるかもしれません。

聆(お、かっこいい指輪……!)

ロゼッタ「【傍観者の眼】は、時間を繰り返す特性を持った異界内部で、所有者がその繰り返しに巻き込まれなくなる、という力を持った異界の遺物のひとつだ。貴重なものだから、なくさないでくれよ?」

聆「も、もちろんですとも」(うぉあ重要なアイテムじゃん)

【傍観者の目】は今回の作戦のために、ロゼッタが特別に貸与してくれるものとなります。ただし、判定等で使用する際には他のフラグメントと同様に扱われ、特にルールを変更するような効果は持っていません。

ストーリーフラグメント【傍観者の眼】
・ごつくて中二病っぽい
・タイガーアイが目のようにはまってる

・ふたつ並べるとしっくりくるデザイン

【依頼内容のまとめ】
・異界を調査し、異界が発生している原因を破壊するのが依頼内容
・異界内部は何度も同じ時間を繰り返している
・報酬は莫大なお金

烏「この指輪、聆が好きそう」

聆「わかる。わかるというか、しっくりくるというか、とても趣味だと思った」

烏「手袋してると普段遣いできなくて寂しいんじゃない?」

聆「まあ、それは確かに。ただ、見ているだけでもテンションは上がるぞ」

――しばらく聆による観賞用のファッションの話が続く。烏には聞き流されているが、そのことには気づいていない。

そんなこんなで探偵事務所に戻り、準備を整えるとふたりは依頼の村へ向かうのだった。

チャプター1「傍観者たち」異界深度5

【状況説明】
ふたりが村のあった地点に到着すると、そこが既に異界と化していることがわかります。

もう随分と長い間、ほんの数人の住人しか暮らしていなかったのでしょう、ほとんどの家屋は傾き、さらには生い茂った雑草によって立ち入ることすら難しくなっています。

そんな中で、ふたりが「ここは異界である」と判断できたのは、異様なまでに濃厚な魔術の気配と、足元に横たわる無数の死体の異様さによるものでした。

死体の中には、ふたりの見知った三日月財団エージェントのものも紛れています。

そのエージェントは、確か今回の事件には関わっていなかったはずなのですが……。

聆「おわー。予想はしてたけど、おわー」

そんな奇妙な状況下、調査を開始しようとしたところで、ふたりは何か近寄ってくる気配に気付きます。
まずは情報収集が必要でしょう。

ふたりは物陰に身を潜め、その何か――体長5メートルにも及ぶ、木彫りの鳥、おそらくカラスと思われるものの行動を観察することにしました。

烏「何あれ、カラス……?」

聆「カラスがあんなバカデカくてたまるか。……にしても、何の目的で動かしているんだ?そもそもの魔術の行使意図がわからなすぎる」

烏「もう異界だし、どんな生き物が出てきても不思議じゃないけど」

聆「烏、カラスについて何か思うことないか?何でもいいから」

烏「カラス、カラスって……まあ、私に関係するのかもしれないけど。むしろ、聆の方は心当たりないの?」

聆「魔術師っぽいなーって思うくらい? だから聞いてみたんだけど……」

烏「ふうん、そう」

烏「《見る》なら、どうぞ?」と手を差し出す。

聆「あー。やっぱりか」手を取ります。

烏と【手を繋ぐ】と、木彫りの鳥から、聆のものと似た魔力の流れがオーラのように立ち上っているのが分かります。

聆「?」

聆「???」

聆「あのカラス、俺のものじゃないのに俺のものみたいな気がするんだが……?」

烏「どういうことなのかしらね」

聆「烏にもわからないか」

烏「正直なにも。力を鏡写しにしているのか、似たようなものを再現しようとしているのか、それとも……」

聆「それとも?」

烏「……カラスに動きがあるみたい」

聆「おお」

ということで判定。

【判定】
「カラスから隠れる」難易度5

木彫りのカラスはどうやら死体を回収し、どこかへ運ぼうとしているようです。
見つからないよう、上手く物陰に隠れましょう。

夜明烏1d10=5異界深度5(1D10=5)1 失敗

夜明聆2d6=5異界深度5(2D6=5)9[6,3]9 成功

聆がフラグメント効果を2個使用し、判定を成功させます。

・ふたりとも成功した
無事、木彫りのカラスから隠れることができました。
このまま後をつけることができそうです。
ロールプレイに進みます。

聆「forstreki,mivoilliberigi」【魔術】と【異界の言語】のフラグメントを使う。亜空間を出現させ、目くらましとします。

聆「あっぶなー。こう使ったことはなかったけど、意外といけるもんだな」

烏「やるじゃない」

聆「だろー」

烏「じゃあ、後を追いましょう」

烏(成長が見られて、正直嬉しい)

聆「そ、そうだな」

聆(色々面食らっている)

【結末】
ふたりは木彫りのカラスの後を追跡し始めます。
果たして、この異界の正体とは何なのでしょうか……。

チャプター2「もうひとりの魔術師」異界深度6

【状況説明】
ふたりは木彫りの目を追跡していましたが、ふとした瞬間に見失ってしまいます。

しかしそれは「追跡を振り切られた」というよりも「一瞬で消えてしまった」というべき、不可思議な現象でした。

それどころか、ふたりはようやく「ふたりが同時に目を閉じると、周囲の風景すべてが大きく変化していること」に気付きます。

まばたきひとつ。
周囲の家屋が大規模な破壊魔術で吹き飛び、しかしその術者らしき何者かが、異界の驚異的な歪みによって引きちぎられる光景。

まばたきひとつ。
何事も無かったかのように、平穏そのものな――けれど誰もいない寒村の風景。

まばたきひとつ。
周囲を凍りつかせる異様な魔術を放つ何者かの姿と、それを引きちぎる異界の幻。

――そう、ふたりという観測者が、まばたきによって見ることをやめる度に、この世界は幾度も最初に戻り、似たような、しかし全く異なる時間をやり直し続けていたのです。

おそらくロゼッタが貸してくれた【傍観者の眼】がなければ、ふたりも一瞬前に見た他の光景のように、異界のリセットに巻き込まれ、前に進むことすらできなくなっていたことでしょう。

この異界は、何を目的として、何度も何度も時間を繰り返し続けているのでしょうか……。

聆「えげつないな……」

烏「これが無かったら死ぬまで異界に引きちぎられる羽目になっていたのね……」

聆「あくまでも、【傍観者】として、この異界に存在できるようにしていてくれている感じか」

烏「そういうことみたいね」

聆「そして【目】によって、俺らのいる時間軸のみならず、あまたの世界線や時間軸を【見る】、といったところか。やべえなこの指輪」

ふたりが改めてその調査をし始めたところで、魔術師は見覚えのあるものを、ふたつ見つけました。

ひとつは「砕け散った【傍観者の眼】」。

もうひとつは、よく見知った顔――「無残に身体をねじきられ、死亡した助手――烏の身体」でした。

ですが、助手本人は魔術師の隣にいます。
いったい何が起きているのか。

烏「これって」

聆「え?」

聆「おちつこう、え、ええ?」

聆「別の時間軸での俺ら?」

聆「……いや、未来という可能性も?」

聆「やべえな」

ふたりが調査をしようとしたところに、タイミング悪く巨大な木彫りのカラスが群れをなして出現します。
カラスたちは、なぜか助手の方に勢いよく群がってきました。

【手を繋ぐ】
時間を繰り返すこの力は、異界の能力というよりも、聆が普段使っている術の形式によく似たものだと、魔力の流れから読み取ることができます。
なぜ似ているのかまではわかりませんが……。

【判定】
「カラスを退ける」難易度6
カラスの群れは、すべて助手の方へ向かって駆けていきます。討伐しなければ、助手の身に危険が及ぶのは確実ですし、今後の作戦にも支障をきたすことでしょう。
魔術師の実力を発揮し、カラスの群れを撃破しましょう。

夜明烏1d10=6異界深度6(1D10=6)10成功

夜明聆2d6=6異界深度6(2D6=6)5[4,1]5失敗

・どちらか一方だけ成功した
どうにかカラスの群れを撃破することはできました。
しかし、負傷を受けてしまいます。
失敗した方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。
次に、魔術師の場合にはそのフラグメントを「変異:呪いの噛み痕→傷は浅いが、出血が止まらない」に変異させてください。

聆は「お洒落」を忘却し、変異を受ける。

烏「こっちに向かってくる……!?」

聆「あっぶない!」

聆「lumifrukto,mivoilliberigi」光る宝石みたいなものをたくさん召喚します。

輝く宝石に埋もれたり目がくらんだりして、カラスたちは退かれます。しかし、木彫りのカラスの一体が烏に襲いかかろうとし、聆が庇って怪我をしてしまいます。

烏「聆!?怪我して――」

聆「傷は浅いんだけどな……なんか血が止まんないぞ?」

聆「ヤバいかなこれ?」

烏「あの木で傷つけられたから……」

聆「異界のものに触れたことによるダメージか……」

烏「多分止血も効かない、救急箱はあるけど気休めにすらならないわね」

烏「一応包帯でも巻いておく?」

聆「今のところ、出血し続けているだけだが、うーん。そうだな」

聆「お願いします」

烏はうん、とうなづいて包帯を手際よく巻いていく。しかしすぐに血溜まりができるので、むしろ目に見えるぶん精神消耗がありそうだ……。

烏「まあ、こんなもんでしょ」

聆「ありがとな」聆はぬぇーって感じのテンションになっています。

さて、とふたりが立ち上がろうとすると、周囲の様子がまた切り替わっている。

【結末】
ふたりは窮地を切り抜けましたが、戦闘によって、異界の主にその存在を気付かれてしまったようです。
それは黒い霧のような、正体不明の存在でしたが、どこか悲しげな声色で「あぁ、もう一度会えた」と告げると、ふたりをどこか別の空間へと、強制的に転移させてしまいました。
果たして、どこに連れて行かれるのでしょうか……。

チャプター3「手記、見覚えのある部屋」異界深度7

【状況説明】
ふたりは、次の瞬間には見覚えのある部屋にいました。
そこは魔術師が普段使っている、探偵事務所にそっくりな部屋でした。

しかし、窓の外は何も見えない暗闇で、外に出ようとしても窓もドアも開くことはありません。

聆「?」

聆「すごい見覚えのある部屋だが、一体、何が……?」

聆「烏、分かるか?」

烏「魔術でできた牢獄……といっても、生活に必要なものは揃っているみたいね」

烏「まるで、ここで暮らせと言わんばかり」

聆「部屋が再現されているとか、拘束者の深層心理でも見透かしてるのか……?」

聆「ただ、「ここで暮らせ」に対しての配慮的な何かがあるせいで、業が深まっている気が……」

烏「こういうときはね、大体手記を見るものよ」

聆「なるほど?」

烏「あんたの机、見てもいい?」

聆「だ、大丈夫じゃないか?」

聆(見られて困るようなものは……たぶんない。し、そのあたりのものも再現されているなら、ヤバいだろう)

部屋の角、聆の文机の上には手紙か、手帳、あるいは走り書きのメモと、まばたきをする度に姿形を変える、ひとつの手記が置かれていました。

聆「机にすごく元凶めいた存在があるな」

烏「……読む?」

聆「読むしかないだろうな……」

その手記を開けば、次のような、告白とも懺悔とも取れる言葉が、よく見知った魔術師――聆の筆跡で書かれています。

・聆と烏は、山村で発生した異界の破壊依頼を受けた。
・山村で発生した異界はとても簡単なものだった。
・しかし、聆はほんの少しの油断によって、助手である烏の命を失ってしまう事態になってしまった。
・聆は破壊に失敗した異界に己を同化し、烏の魂を元どおりに作り直す魔術儀式を実行することを決意した。

そして、手記の筆跡は徐々に人のものとは異なる、奇妙に歪んだものへと変貌していきます。

・それから数百年にわたって、聆は烏の魂を再生するための材料として、無数の人命を生贄に捧げ続けた。
・小規模だった山村の異界は、無尽蔵に人を引き寄せる致命的なものに変化した。
・何人もの魔術師を返り討ちにし、生贄に捧げた。

・しかし――それでも烏を生き返らせることはできなかった。

・異界と同化したせいなのか、魔術師の適性のせいなのかは不明だが、幾度もの検証によって「人の魂を再生することは、絶対にできないこと」を、聆は理解してしまった。

そして、最後にはこう書かれています。

・聆は、もう一度だけ烏に会うために、異界を過去の山村に転移させることにした。
・そうすれば、きっと聆と烏が派遣されてきて、もう一度会うことができるから。

一一よかった、また、君に会うことができた。

【手を繋ぐ】
手記の文章が、幻のようにふたりの前に再現され、数百年分の記憶を実体験のようにたどることができる。

聆「おわぁ、まて、まってくれ」打ちのめされて、烏の手をすがるように掴んでしまいます。

烏「どうして、どうしてどうしてどうして」

烏「殺してくれれば良かったのに!死なせてくれれば良かったのに!」

聆「……それはできなかったし、できない」

聆「……たぶん、きっと、おそらく」

烏「魔術師なのに、助手に執着するから」そう叫ぶ烏の目からは、涙が溢れてこぼれ落ちている。

聆「……」

【選択】
「ここに留まるか、異界を破壊するか」

奇妙なことに、この部屋には生活に必要なものがすべて揃っているようです。
かつての魔術師から、今の魔術師への贈り物なのでしょうか?
助手を失うことなく、永遠にここで生きられるように、と。

ふたりには選択肢が用意されています。
どちらへ進むかを決めてください。

ここに留まる場合は、ふたりとも「ロスト」となります。
異界は際限なく拡大し、数十人の魔術師と、1000万人に及ぶ民間人の被害者を出す結果となりますが、ふたりは異界と現実の狭間、魔術で編み上げられたこの部屋で永遠に一緒に過ごすことができます。

烏「……殺せないなら」

烏「ずっとこの異界で、暮らしてもいい」

聆「……」

烏「その代わり、この――聆の生み出した異界は現実に拡大し、被害は出続ける」

聆「それは間違っている」

聆「殺せないけど、ずっと暮らす、を選択するのは、してはいけない」

聆「と思う」

【判定】
「部屋を破壊し、元の異界へ戻る」難易度7

偽りの部屋を破壊し、元の異界へ戻りましょう。
この魔術は数百年後の魔術師本人が紡いだものなのですから、魔術師とその助手であれば、破壊することができるはずです。

夜明烏1d10=7異界深度7(1D10=7)4失敗

夜明聆2d6=7異界深度7(2D6=7)7[5,2]7成功

聆はフラグメント効果を使用し、烏の判定を成功させる。

・ふたりとも成功した
ふたりは偽りの部屋を破壊し、元の異界へ戻ることができます。
ロールプレイに進みます。

聆「……出よう。ここから」

烏「……分かった」

聆「大切に思っていないわけじゃない。でも、僕たちは魔術師だから」

聆「だから、……ごめん」

聆「ごめんね」

烏「魔術師なら、そうでなくちゃ」

聆「……ありがとう」

烏「聆は、正しい選択をしただけだから」

烏「私がいるうちは、……私がいなくても、異界に立ち向かい続けなさい」

烏「この力を使って」

聆「……ああ」

聆「さて。この部屋?異界に対しては、ガチガチに防御が組まれてる。俺だって普通に考えて俺を封じるならそうする。……だから」

聆「基礎魔術であるところの、身体強化・道具の硬化を使って、出られるまでぶん殴ってやろう!」

聆「俺の机なら、指輪くらいある。本当はしたくないが、緊急事態だ!!」

烏「圧倒的に脳筋ね……」

聆「というわけで、レッツメリケンサック!」

烏「いいけど、出るまでもう数百年かける気?」

聆「……」考えてなかったって顔

烏「いいわよ、一発殴って壊せそうなところ、探してあげる」

聆「!」

烏「私だって、聆の弱点くらい知ってるわよ。……アドバイスがないと100年経っても直らないのね」

聆「弱点」

烏「……ここから出られたら、教えてあげる」

聆「なんとしてでも出るぞ」

烏「じゃあ、」と《サイコメトリー》。

烏「私の部屋」

手を繋いで烏の部屋に行くと、他のところより魔術の防御が薄くなっているのが分かる。

烏「ビンゴ」

聆「烏の部屋か……」

聆「あまり入らないけど、(記憶から)ちょっと変わったか?物が増えてる?」

部屋には数々の魔術的道具が並べられており、ベッドの上に真っ黒な女性のシルエットが座っている。

聆「……あれって」

烏「私。できそこないの。完全に、聆の魔術で出来てる」

聆「我ながら趣味の悪い……」

聆「だいたい、へたくそすぎないか!?」

烏「少しだけ、ひび割れがある。あれを壊せば、この部屋は存在意義を失って消滅する……と思う」

聆「なんて?」

聆「壊すのはちょっとだけ恐れ多いんだが……」

烏「私の“目”からはそう見えるってだけ」聆から手を離すと、シルエットははっきり烏と分かる造形になる。目は閉じている。

聆「……そうか」

烏「壊せないなら、壁殴り百年になるけど」

聆「本物は案外すまし顔はしてないし、口がよく回ってるし、意外とがめついんだぞ!」

烏「………………」

烏は「ふふっ」と笑いが漏れる。

聆「これは壊す。つくってるやつも百年くらい経って、モーロクしたんだろ」

烏はなんかツボに入って爆笑してる。出来損ないの烏については、
・祈りの思いで作られたため、どこか神々しい
・烏の瞳だけ再現できなかったのではないか
と推測を述べる。

聆「うぉりゃ!」

聆「あと、こっちは烏の分!そぉれ!」

偽物の烏は殴った感覚こそあれど、人間ではないことを証明するように、ひび割れ、空間とともに無数の破片となりました。

【結末】
魔術で編み上げられた偽りの部屋を脱出したふたりは、元の異界へと戻ってきます。
悲壮な道を選んだ未来の自分自身を倒し、異界を破壊し、今度こそふたりで現実世界へと戻る戦いを始めましょう。

ファイナルチャプター「リピーテッド・バロック・キネマ」異界深度8

【状況描写】
偽りの部屋から、異界へ戻ってきたふたりを見て、黒い霧に覆われた異界の主――ありうるかもしれない未来の魔術師本人は不器用に微笑みます。

その唇が何かの言葉を紡ぎますが、それはもはや、人間の声とは異なるただの雑音にしか聞こえません。
ふたりにわかるのは、その声には安堵と、諦めが滲んでいることだけです。

異界の主は満足そうに、寂しそうに目を閉じ、その身を巨大な異界そのものに委ねます。
まるで、あとはふたりに任せたと言わんばかりに。

そうして、偉大なる、数百年を生きた未来の魔術師を取り込んだ異界は、急速に成長を始めました。
これを打ち砕くことができるのは、今この世界に、ふたりだけしかいません。

聆「未来の自分……か」

【手を繋ぐ】
異界の風景が、山の寒村のものから、ふたりの思い出を映した走馬灯のようなものに変化する。

聆「そして、これらは思い出の上映なのかな……」

烏「でも、この走馬灯はちゃんと、『私達の』思い出」

聆「『俺達の』か」

烏「本物の走馬灯になんか、してやらないけどね。そうでしょ?」

聆「……そうだな」

【二重判定】(P.72)
「異界を破壊する」難易度8

聆2d6=8異界深度8(2D6=8)8[5,3]8成功

烏1d10=8異界深度8(1D10=8)9成功

聆2d6=8異界深度8(2D6=8)6[5,1]6失敗

烏1d10=8異界深度8(1D10=8)9成功

聆がフラグメント効果を1回使って成功にする。

・4回成功した
ふたりの魔術は、異界を構成するすべての魔術を打ち砕きました。
ロールプレイ後、結末その1に進みます。

聆「……烏、走馬灯を見て、思ったんだが。俺一人だったから、異界が暴走しているわけだよな」

聆「でも、烏がいる今ならば、コントロールが可能なんじゃないか?」

聆「できるかはわからないけど、今の俺が異界を生み出して、それを烏がコントロールして、このヤバい異界を駆逐するというのはどうだろう?」

聆「……いや、できるかわからないんじゃなくて、やるしかない、だな」

聆「協力してほしい」

烏「私達の血なら、できるかもね」烏はニッと笑う。

烏「いいよ。言葉は紡げる?」

聆「ああ。――夜明けを我らは望む、みたいなイメージで異界をつくっていきたいんだけど……」

(GM・PLで魔術の相談を行う)

聆「mivoilliberigi~だと、召喚になっちゃうからな」

烏「なら、これはどう?“nivoilliberigiaŭroro”」

烏「文法は今は省略する、これなら『我らは夜明けの異界を望む』にできるはず」

聆「望むというより、作る意志でいったほうがいいかもしれない」

聆「今思った」

烏「作る……まあ、言葉が不完全なら聆の想像力でなんとかしてね」

聆「ああ」

烏「創造がKreiだったはずだから……nikreiaŭroro」

聆「ニクレイアゥローロ」

聆「ニ、クレイ……。よし。烏も唱えてほしい」

烏「うん」手を繋ぎ直して。

聆・烏「nikreiaŭroro」「nikreiaŭroro!」

聆と烏を中心に、光があふれ出し、それは闇にふれると闇を飲み込み、より大きくなっていく。
――さながら、夜明けのごとく。

【結末】
眩い光に映しだされたのは、数百年にわたって助手を生き返らせることだけを考え続けた、ひとりの魔術師の姿でした。

そして、一度まばたきをした次の瞬間に、異界は砕け散り、いつの間にか現実世界に戻ってきていました。
——無事かどうかはともかく。

それでは、物語の結末を描きに、アフタートークへ進みましょう。

【アフタートーク】

異界への抵抗は4が出たため、前セッションを含めたすべてのフラグメントの忘却のチェックが外れ、変異もすべて消えました。

聆「打ち上げ~」

烏「今日はどこに行く?」

聆「またケーキとか食べにいこうぜ」

烏「ま、いいわよ」

聆「……やっぱり外の世界はいいな」割と小声

烏「そうね」

聆「ずっとくら……なんでもない。というか、聞こえてたんだな!?」

烏「心の声で言ったつもりだった?しっかり声に出てたわよ」

聆「……」

聆「よし、ほら、いくぞ」

烏「はいはい。ところで、あの『夜明けの魔術』だけど」

聆「あ」

烏「あれ、私達の家系に無い系譜よね」

聆「勝手につくったからな……」

聆「一族にお伺いを立てたら立てたで、めんどうなことになりそうだし」

烏「報告の中には入れなかったんでしょ?」

聆「できるか」

聆「いれたら大変なことになるって」

烏「じゃあ、私達ふたりだけの名前をつけときましょう?」

聆「いいな」

烏「魔術は命名しないと、流派を名乗るときに大変だしね」

聆「……【明鴉】とかどうだ?」

烏「夜明を告げる鳥の声……まあ、聆にしてはセンスあるんじゃない」

聆「だろ?」

烏「じゃあ、決まりね」

聆「おー」




アンサング・デュエット「リピーテッドキネマ」、これにてセッション終了です。
お疲れ様でした!





【セッションの際使用させていただいたもの】

アンサング・デュエット サポートページ

BGM

フリーBGM・音楽素材MusMus様

PeriTune様

FREE BGMDOVA-SYNDROME様

甘茶の音楽工房様

セッションツール

CCFOLIA様

セッション素材

いかさん様 アンサング・デュエット ココフォリア用素材


肋屋しゅう様 アンサング・デュエット ココフォリア汎用シート素材

茶乃介様 【TRPG】アンサング・デュエット専用マップ(素材Vol2)

OKUMONO様

ICOOON MONO様

キャラクターシート

キャラクターシート倉庫様(リンクは2人のキャラシです。立ち絵もあるよ!立ち絵の権利表示はリンク先で!)

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