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背景を想い、結果を残す

"結果じゃなくて過程が大事"

もういいよ、と思うほど、何度も耳にしてきた。

第一志望に合格できなくても、それまでに努力してきた道筋は色褪せない。

希望していた就職先ではない場所に勤めることになっても、自分を見つめ続けたあの時間の価値は残る。

本当にその通りだと思う。

さまざまな立場の人が、時代や場所に左右されず、紡ぎ続けてきた教訓。

でもそれは、一人ひとりが自分に言い聞かせ続けてきた証拠でもあるのだと思う。

実が結ばれることはなかったけれど、私は大丈夫。
あの人のことが羨ましくて仕方ないけれど、今の私も十分幸せ。

そう自分を励ますかのように、自分で自分を正当化し、次への階段にする。

どうしても人は、内面よりも先に外見が目に飛び込んでしまう。

大学名。企業名。顔の良さ。行動力。

●●に合格しました。
〇〇プロジェクト始めます。
●●円の利益を獲得しました。

海外で賞を取った。選ばれた。挑戦します。行きます。応援してください。

すごい同世代がいるなと思っていた。素直に憧れた。
ただ、その感情だけでは乗り切れない。

同時に自分の姿を映し出して、複雑な気持ちになる。

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この世界には、一定数、自分を魅せるのが上手い人がいる。

実は形だけで中身が伴っていなくても、実は誰よりも仕事をしていなくても、実はものすごい悪口を言っていたとしても、それは同じ場所で生きる人にしか分からない。

あの人の、世界に知られていない姿を見ている人は、ごく一部の限られた人だけ。

「いろいろ頑張っててすごいよね」「さすがだよね」

そうだよね。
たくさん挑戦して、いろいろなことに足を踏み入れて、形に起こしてる。

でも知ってる?

その人が溜め込んだ仕事は私たちに回ってくること。
みんなの悪口が世界に放たれていること。
無理なお願いをいきなりするのが平気な人がいること。
それを断れない人がいること。
それでも、頼まれたことを夜遅くまでやる人にとってすら、憧れの対象にまでなり得てしまう人がいること。

こちら側の感覚と、そちら側の感覚がまるでずれている。
へえ、そう見えているんだ。知らなかった。
全然違った。


こちら側で、あんなに地道に頑張っている人の存在が外の人間には伝わっていないこと。
私が悔しかった。

どうして。なんであの子の方が”評価”されているの。
あの子の分まで働いて、少しずつ積み上げて、それでもその姿が知られることはない。

「夢を叶えようとする姿はかっこいいよね」


あの子はみんなの理想だ。
でも、ここにあるのは現実。
現実を動かすのは私たち。

挑戦は尊敬の対象。維持は当たり前の現象。

挑戦した上での失敗は許されて、維持する上での失敗は怪訝な顔をされる。

維持する人間がいなければ世界は回らない。

そんなの、ずるいよ。


でも、何も言えなかった。

自分でもわかっている。これは一種の羨望を超えた嫉妬だ。

言葉にして行動に移せる彼らが、自由のままでいる彼女らが、信じられないほど羨ましい。

自分でもわかっている。そう思うのなら、行動するべきだ。

でも、全員が全員、好き勝手に発言したらこの世界は破綻する。

個人は組織の一部で、生命体の一部で、社会の一部なのだから。

その単位が小さければ小さいほど、羨望は黒さを帯びてくる。

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私は、自分をうまく魅せるのがうまい人たちを、少しも非難する気はない。

彼らの自己プロデュースは学ぶべきものがたくさんある。

私も理想主義者なのだ。
堅実そうなのにね、という言葉にやんわり首を振り、憧れの人の姿を思い浮かべ、気持ちをほとぼらせてきた。

今は陰に生きていても、必ず生み出す側の人間になると決めているから。

だからこそ、今この場所で生きられていることは、ここで味わった羨望と悔しさは、計り知れないほど大切なものなのだと思う。

維持と変化は同時には起こり得ない。
どちらを大切にしたいかは個人に委ねられるものであり、その個人同士が同じ世界に生きることは避けれらないがゆえに、衝突が発生する。
この衝突は不可避だ。

維持に生きて、変化する人間に対する憧れと悔しさを抱いた。

だから私は、変化する。

変化に生きて、維持する側の人間をも掬える人間でありたい。

全員に好かれること、全員に応援されることは、どれだけ素敵な人であっても叶わない。

それでも私は、できる限り相手の背景を想おう。

表で輝く人間の裏で、どれだけの人が支えているのか。
あの光は、どれだけの影によって成り立っているのか。
心を震わせてステージに立つ人間のすぐそばで、何人の人間が歯を食いしばり、涙をこらえ、手足を動かしているのか。

絶対に想像し続ける。絶対に忘れない。


そして必ず、叶えてみせる。


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