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向日葵の協会と長い夏休み 雛桜√読了

読み終わりました。
ヒナ√を読み終わるということは初月の後半からやり始めた向日葵の協会と長い夏休みという作品の読了でもあります。
一か月弱ほどかけてプレイしきりましたが、ヒナ√にかかった期間は今日だけ。
読み進め始めたら止まらず、5時間近くぶっ通しで完走してしまいました。
僕がこの状態になる、つまりはそれだけ良い内容だったということです。
とても面白かった。とても。

ひまなつ4つの√の中でぶっちぎりで楽しめたし好きです。
雛桜√のEDであるさくらとことりという楽曲が今までの人生で聞いてきた楽曲の中で最も好きで、その曲を作中で聞くために僕はこのゲームを始めました。
最悪話が面白くなくてもこの曲が聞ければ感動できるやろwなんて考えてたりもしてました。
作品の良さからそのテーマソングが良い曲に聞こえる作品補正とはよく言いますが、その逆で楽曲補正みたいな。
そんな前提がどこかに吹っ飛んでいくほどお話が良かったです。
EDに入る前にシナリオで感極まってしまって楽曲補正どころじゃありませんでした。バッチリ作品補正がかかってもっと好きになるなんてね。

作品を完走した上で初めに伝えたいことがあります。
僕は基本良質な物語を求めているため、評価の高いものしかエロゲをやりたがらないタチです。
それで結構レビューを見たり前情報を仕入れることが多いのですが(ネタバレは全力で気を使って回避してます)。
他√感想でも言ったように詠√は凄くシナリオが良い詠ゲーっていう感想と、詠と雛桜は面白かったっていう二つの意見があったんですね。
これを僕個人の評価にあてはめると、

ヒナ>>>詠=ルカ>>>>>>>金剛石

となるわけですが、前提として間違っている所があると思っておりまして。
明確に別のルートであるのは間違いないのですが、詠√と雛桜√は地続きになっているんですよ。
詠√をクリアしないと雛桜√に入れないのはもちろんのこと、前者があっての後者、そして逆も同じだと考えているので。
なので、詠とヒナを分けて考えるのに違和感を感じました。

しかし、雛桜√単体でも十分すぎるほど良い内容でしたけどね。
感動のあまり終盤は涙が止まらなかったです。
物語そのものの良さでこれだけ心動かされたのはいつぶりでしょうか。
正直、雛桜√をやるまではそこまで雰囲気ゲーらしさを感じられなかったり、詠√が期待値を気持ち下回って少しだけ残念だったのですが、全てがひっくり返りました。
ひまなつという作品をプレイしてよかったです本当に。

以下詳しい感想、ネタバレ注意です。















ルート入り最序盤こそ特に変わったところはなく。
他√だとヒロインと仲を深めるところが小さい女の子に置き換わったというだけみたいな。
ただ、他ヒロインと違って回想がない、むしろ√序盤そのものが回想にあたるわけですから、本筋に入る前の尺が長く伏線も多かったように思います。

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序盤はとにかくちんまいヒナがかわいくてかわいくてもう。
もちろん小動物的な意味ですよ。
ちょっとしたことですぐはしゃいで子供子供する姿は、引き取られたことを忘れる微笑ましさがありました。序盤はね。

そんな朧白で過ごす心温まる日々も、誕生会を境にシリアスに展開していきます。
陽介が東京へ出て、今まで気になっても触れられることのなかったヒナの家庭事情、そして陽介の過去がついに明かされることに。
陽介の過去はもうドキドキでした。ずっと気になっていたことなので。
他√で全然己を見せなかった主人公がやっと自分の話をしてくれたんですから。
ヒナ√は雛桜の物語であり、詠が別の選択をした物語でもあり、陽介自身の物語でもあります。
ヒナの両親と陽介を引き取った人は同じ、陽介も当事者であるわけですからね。

ずっと向日葵畑に青い空青い海と、のどかな風景ばかり見てきた中で急に都会の喧騒に包まれる。
黒井と梢さんと対峙して突き付けられたのは重く苦しく汚い現実で、今まで過ごした優しい朧白の街との高低差に心が持って行かれそうになります。
殴りかかるシーンでは、ここまでで想像できないほど感情を爆発させる陽介。
どれだけ引き取り親のことを愛し、尊敬し、信じていたかが伝わってきます。芯が強いだけに、裏切られた時の反動だって大きいわけです。
幻想的な田舎の物語からいきなり現実に引き戻されるような展開でしたが、やっとケロQ枕らしくなってきたなと僕はワクワクしていました。
これでも全然ライトな方ですけれどね。

朧白に帰って陽介を引き取ることを決めた陽介。
ここまでくれば流石に読めますけど少し意外でした。勝手に数年後に再開!みたいな感じなのかなと想像していたので。
そして…詠が別れを告げるシーンへと入ります。

「物語…これからの物語は、また違った風景。」
「全ての物語よりも、ずっと、ずっと先の物語」
「でも、それはよーくんが選んだ物語だから、そしてもっとも大事な物語だから」
「私は見守ってるよ、よーくんの進む先を」
「一緒に歩くことはできないけど」
「でも、ずっと、ずっと見守るから」
「その先の物語を」

これが、これがヒナ√が詠が選んだ別の物語と言い張りたい由縁です。
ここから彼女は黒猫へと戻り、ヨミとして二人に寄り添っていきます。
詠は愛を知って寝子麗へとなったのではないでしょうか?
人を愛することは相手の幸福を願うこと。自己を満たすための衝動である恋とは違う。
陽介への愛を持った詠は、陽介の選択を尊重して2人の幸福を…物語を見守ることを選んだんです。
かつての…三人の物語のように。
でも、ルカ√だって陽介とルカと詠の3人の物語だと思っています。
ルカが辛いときには寄り添い、何かトラブルがあれば助け、2人の幸福のために手助けをする。
まるで登場人物じゃないような言い草をするには名演出家すぎますよ、詠は。


して、物語は10年後。
一度EDを挟みタイトルに戻って新しくスタートさせるやーつですね。エロゲあるある。
ちんまかったヒナも高校生、陽介は三十路に突入しまして。
10年経っても変わらない朧白で、真のルカ√そしてグランドルートが始まります。
成長したヒナはもうすっかりおてんば娘といった様子で、家でも学校でも相変わらずハチャメチャです。
陽介視点とヒナ視点が50:50くらいで進んでいくのもまたヨシ。ちーこちゃんがユニークすぎて2人の会話も結構好きです。


歳を取ったのはルカも金剛石ももちろん同じなわけですが、

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月子ちゃんが見事に正統進化を遂げてとんでもない美人へと成長している…!
これはマズイ、マズイです。ハナから一番好きなキャラなのに更にドドドドストライクを突いてきます。
どうしてこんなにこの娘が刺さるんだろうと考えていたら、ふとデジャヴを感じまして。
サクラノ詩の藍先生に似てるんですよね。
成長した後だと髪型や服装なんかが特に似ています。
月子ちゃんの方が随分フランクではありますが、時折見せる悟ったような落ち着きぶりも似てるなぁ。
そう考えていると、数年後を舞台にヒロインの成長した姿を見れるって時点でそこもサクラノ詩のEP7からサクラノ刻の流れと同じやんけ!という。
枕というかすかぢ先生はこういうのやりたいっていう気持ちがあったんですかね?
登場人物が生まれた瞬間から死ぬまでを見届けたいとすら思う僕は大好物です。

その月子ちゃんとのお見合いが決まっては断ったり、友人の美味しい転職話を断ったりと、普段の仲睦まじい生活ぶり以上にいかに陽介がヒナのために全身全霊をかけているかが分かるエピソードが続きます。
日常シーンなんかでも、時折飛ばした10年間の回想を挟んでくれるのが良いですね。
結構この手の期間が空く作品て、その空白期間の補完を一切せずに主人公がそんなこともあったなあ~で済ますものも多いですし。
少しでも空白期間の描写があれば、どのような生活を過ごしてきて今こうなったかの想像をする素材になりますからね。嬉しいです。

して、ヒナは東京に、その後を追った陽介は再び東京へ向かうこととなるわけですが。

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私服のヒナカワヨ。詠のゴスロリも大正義ですがこういうファッションも好きです。
初見で見た時はなんか黒猫っぽいなって印象。帽子とかね。
大好きなヨミを意識してなのかな?なんて勝手に想像しちゃったり。

まあそんなことはどうでもよくて(よくない)。
ホテルに泊まって同じベッドで2人眠る前のシーン、これが本当に良くて。
10年前との対比になっているというだけでもエモくて仕方がないのに、お互いの心の内を話し始めたらもう…
養子縁組を組みたがらないヒナは、やはり自分が不甲斐なくて本当の親じゃないから梢さんの所に戻りたがっていると陽介は思っていて。
遥か遠い親戚ではあるもののほぼ赤の他人の自分のために10年間の全てを費やしてくれる理由が分からなくて、自分のことを重荷として責任を感じているヒナ。
ずっと言えなかった弱い部分である本心を曝け出すことで、互いを互いに想い合うあまり起こっていたすれ違いが解消されて更に親子の絆が深まります。

そして、梢さんと再会した時にヒナだけではなく自分も裏切られた気がして寂しさを紛らわすため、誤魔化す為にヒナを必要としていたからという陽介の告白も。
そりゃあそうでしょう。ヒナの実母ですが、陽介の義母でもあるのですから。
繰り返しますが、やっぱりヒナ√は陽介の物語でもある…というか主人公主人公していると思います。
他の3人は、どうしてもヒロイン本人を中心に陽介が入っていくという感じがして、主人公像があまり見えてこなかったんですよね。
こうしてヒロインと一緒に物語の渦中に存在していて、互いに悩み苦しみ成長してこその主人公だなって。
その分陽介に感情移入できたからヒナ√をここまで楽しめたのも大きいかもしれませんね。主人公に感情移入できるかは大事ですよやっぱり。


朧白に戻り無事養子縁組を交わして、晴れて正式に親子となった二人ですが、ここからは親子2人と一匹の物語から、夫婦2人と一匹への物語へと。
エロゲで√作ってあってここから結ばれずに親子で終わるとかまあないでしょうし(僕は割とアリだと思いますが)、こっからどうくっつくんかなあ~と思っていたもんですが。
夏祭り後のキスはだいぶ急展開すぎて正直頭があまり追いつきませんでした。
ヒナはまだ分かりますよ?ずっと陽介のことが異性として好きで育ての親としての陽介との板挟みに悩んできたことがひしひしと伝わってきますから。
でも陽介側は衝動にしても掌返し唐突すぎませんかね…?
つい先日正式な親子になったばかりやぞと。ホテルでの娘に対する熱い家族愛はどこへいってしもうたんやと。
こう展開していくのが分かっていたにしても、陽介側の心境変化の描写がもっと欲しかったですね。せっかく感情移入していたのにここで現実に帰ってきちゃいました。
それでも、この時のヒナが大人びて綺麗で仕方がなかったのは認めます。
着物がそうさせたのか、買った髪飾りがそうさせたのは分かりませんが。

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このCGがこのゲームで一番好きで、一番美しいと思えました。


夏祭りから関係はギクシャクしたまま、梢さんがヒナを捨てた真相へと移ります。
やっぱ黒井いいやつじゃねえか…僕は一目見た時からそう思ってたぜマジで…
ケロQ枕の男サブキャラのとんでもなくカッコイイ&良いキャラ度ってなんなんでしょうね。
サクラノ詩の明石部長も、すば日々のマスターも大好きです。

梢さんと会えるせっかくのチャンスをヒナは全力で抵抗します。
せっかく陽介と養子縁組をする覚悟を決めて、晴れて親子になれたのに。
そこで今更実の母が出てくるなんて。
どのような事情であれ自分を置いていった事実は変わらないですから、そりゃ否定するでしょう。
それに対して、陽介はやはり梢さんがはなから悪事を働くような人だとは思えていないようでしたね。ホテルの時の自分の口から語っていましたが、現実を突きつけられた10年前からもずっとどこか信じ続けていたのでしょう。

結局陽介だけで梢さんとまた再開し、本人の口から起こったこととヒナを捨てた理由が語られます。
筋こそ通っているように思える内容でしたが、多くの人は納得できなかったんじゃないのかなのではないでしょうか。
なんなら、身勝手だと怒る人もいるかもしれません。
それでも、僕は梢さんの気持ちが痛いほど理解できました。
ワガママを言って誰かを憎んで、でもそれは逆恨みで、打ち解けたと思ったら過去の自分の行いが全てを滅茶苦茶にして、自己嫌悪して自暴自棄になって心が絶望に塗れて余裕がなくなってーーーーー潰れる。
自分が全部悪い。自業自得。自分のせいで回りが不幸になる。自分がいるから愛する人を不幸にしてしまう。愛するからこそ、自分と一緒にいることが怖くなって距離を取る。
人が死んでしまうとか会社が潰れるとか、フィクションほど大事ではありませんが似たような経験があるので。
こういう時、心が弱い人は自分を責め続けて逃避しか選択がなくなるときがあるんです。

これで、陽介は自分の中にあったわだかまりに完全に終止符を打つことができましたが、ヒナはそうも言えません。もっと滅茶苦茶です。
陽介の子になること決心していたのに、恨んでいた母の事情を知って、実母の元に戻って本当の親子をやり直すという選択肢が出てきて…
突然のキスで揺らいでいたところにこうなってしまっては、動揺もするし決心だって揺らぐでしょう。
ルカが望む本当のキモチ、その最後の一押しwそしたのは月子ちゃんでした。
やっぱり、一番人の心が良く見えてる。いや、朧白が見えているのかな。
必要なことと思えば嫌われ役も、自分のキモチだって押し殺して進んでいける、これも月子ちゃんの朧白への、朧白のみんなへの愛ではないでしょうかね。

クライマックスは、いつかの協会の屋根の上で。
ここで、陽介の娘になることと恋することでぐちゃぐちゃになっているヒナに陽介がプロポーズして2人が結ばれます。
泣きました。ヒナが自分の気持ちを吐き出すところから涙が止まりません。
陽介のことがずっと好きで、結ばれたくてずっと養子縁組を断ってきたヒナ。
陽介の娘としての家族愛が心からのものと知り、気持ちを押し殺して正式な親子になることを選んだ。
それが、ヒナが愛する朧白の人達が、そして陽介がもっとも幸福になる手段だと思ったから。相手のことを考えて、自分を殺した。
約束した“いい子”であるために。
でも、覚悟を決めた矢先に自分の気持ちをほじくり返されて。
あんなに恨めしくしていた梢さんだって愛していて、一人ぼっちにさせるのはかわいそうで…
だから、10年前に“いい子”であることを約束した事件の象徴である、協会の屋根の上へと行ったんです。
いい子であることをやめて、陽介と結ばれたいがために。
ヒナ自信は惚れた時の場所に戻りたかったと言いましたが、僕にはこすいた意味が込められているとしか思えませんでした。

長年抱き続けて、苦悩して、封じ込めて我慢して、考えては涙溢れて画面が見えません。
全ての事情を知り、ヒナの成長に、人生に寄り添い、気持ちが分かるからこそ。感情が限界を迎えて涙が止まらない。
これだけ人のことを想い、愛する二人が結ばれて心から幸福になってくれたことに、感動したというよりもほっとしました。
報われて本当によかった、と。

出会い、楽しく過ごした向日葵の協会で
愛する人たちに囲まれて、愛する人と結ばれる。
10年分の長い長い夏休みの物語、そのハッピーエンドを飾るように
鐘の音が響き渡ります。


あなたがまいにちわたしにくれた
えがおや あいや ぬくもりや すべて
これからまいにちわたしがみんなにおくる
すてきなえがおになれたらいいな
                    -さくらとことりー




あとはエロシーン回収の消化試合なので特になし!2人の幸福な姿が見れてうれしい!
強いて言及するならば…
このゲームのスタッフ班風呂セックス好きすぎじゃね…?
いくら協会内か青姦しか場所がないとはいえ風呂でヤりすぎではないでしょうか。ここまでくると普通にフェチな気が…
なんでもありません!


以上ルカ√感想でした。
大大大満足ですよもう。やっぱりケロQ枕もすかぢ先生も大好き。
やってよかったですほんと。
これだけの充足感を得られたのを冷静に分析すると、シナリオが普通に凄く良かったってのは前提なんですけれど。
前述の通り僕自身が主人公たちを長~~~く見守って、成長する姿とかした後を見たり、長年の夢や気持ちが成就して報われるまでを見るっていうお話がジャンル的に凄く好きって言うところと。
掘り下げと描写の時間と物語内の期間が長ければ長いほど感情移入&世界観に入り込めるからって言うところもあったのかな~と思いました。
あとはやっぱり主人公これ大事。主人公の視点に立って小説のように想像へ気持ちを寄せていくのではなく、ありのままをどう受け取って楽しむかがビジュアルノベルの醍醐味ですから。

して、最後にひまなつという作品を読了しての感想を少し。
雰囲気ゲー雰囲気ゲーと言われる割には僕的には最後まであまりそういう部分を軽く程度しか感じられず、普通にシナリオで魅せられてしまいましたね。
そして、全体を通して
「愛することの苦しみ、その肯定と救済」
がテーマであり、メッセージ性を感じました。
詠√でほんわかと浮かんでいたテーマですが、梢さんの真相を知ったところで確信に変わりましたね。
僕も、自己犠牲をしてでも真の幸福を願えるような人がいれば、そうなれる人間であればいいなと思います。
老若男女関係ありません。
家族愛友人愛師弟愛男女愛作品愛。愛はどこにでも生まれるものですから。

大学の方も本格的に忙しくなりそうなのでさっさと中途半端に投げ出しているレイラインに戻りたいところなのですが、読了感が凄くてしばらくは次の話に入れそうにありません。
この読了感も読み終わった喪失感というよりかは、陽介とヒナと詠の物語を最後まで見れてよかった~~~という喜びと満足感が凄くて他がいらない状態になってしまっているんですよね。
これまで辛いときに何度も助けられ、支えてきてくれたさくらとことりという楽曲も、これからは自分のことと作品のことを思い出して感情がオーバーフローしてしまいそうです。

オットセイに課金してもガチャは回せません。