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【対談】忠津孝 博士 × W.S.P / 新技術で世界が変わる!磁界センサー「JIKAI」誕生の軌跡

磁界の存在を検出し、磁場の強度と方向を測定するリモート磁界センサー「JIKAI edge AI SENSOR」(通称「JIKAI」)。従来の磁界センサーの性能を遥かに超える性能とAIによる探知結果解析を兼ね備えたJIKAIは、地雷撤去や水中探査、さらには宇宙探索にまでその可能性を広げています。
今回はワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)のCTO市川泰雅と開発者の忠津孝博士がJIKAI開発の軌跡と未来への展望について語ります。

JIKAI開発者の忠津孝博士(左)とW.S.PのCTO市川泰雅(右)

なぜJIKAIが注目されるのか?従来の磁界センサーとの大きな違い

市川:現在、ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は次世代型の磁界センサーを開発しているのですが、具体的にどんなセンサーを作っているのか、忠津博士に説明いただきます。

忠津:通常、個体を用いた磁界センサーというのは、通常3軸(X軸・Y軸・Z軸)の中心を合わせることが出来ないんですね。 そのため、私たちは3軸の中心を同一点に合わせる原点共有3D磁力計(JIKAI)の開発に取り組んでいます。

市川:原点共有3D磁力計(JIKAI)は地中や水中に眠る金属を高い精度で発見できるため、W.S.Pが行っている遺跡の考古学調査沈没船探索などの水中調査において大きな役割を担っています。このような調査には、従来、光ポンピングやフラックスゲート式といった磁力計が使用されていましたが、JIKAIはそれらの磁力計とどのような違いがあるでしょうか?

JIKAIを用いた調査例

忠津: まず、光ポンピングは非常に高感度で、防衛省など色々な場所で使用されています。しかし、磁力の強さは測れるものの磁力の向きが測れないという欠点を持っています。また、特定の方向に向かっている磁界に対する感度もなく磁力が測れないため、探査用には向いていないと言えますね。

忠津:フラックスゲート式はJIKAIと似ているのですが、フラックスゲート式の磁性材は個体で、JIKAIの磁性材は液体であるという大きな違いがあります。

市川:磁性材というのは磁界センサーのコア(磁気コア)であり、磁性材の周りにコイルを巻くことで磁界センサーが誕生するんですよね。

忠津:そうです。JIKAIはコアとなる磁性材が液体(磁性流体)で、磁化しないというメリットがあります。

市川:磁性流体は液体ですが磁性を持っているため、磁石に対して流動的にくっついてきます。面白いですよね。

磁石に吸い寄せられ上部に動く磁性流体

忠津:普通の金属は一度磁石にくっつくと、磁石になってしまいますが、これは「着磁」(外部から強い磁界を与えて磁性材料に磁気を付けること)しているからです。よくクリップが勝手に磁石になって、クリップ同士がくっついたりしますよね。磁界センサーの中で「着磁」が起こると、センサーの特性が狂ってしまうのですが、磁性流体は着磁があまり起きません。

JIKAIは磁性流体を用いることで正確性の高い計測を可能にしている

市川:例えば、このようなフラックスゲート式のセンサーに磁石をくっつけると壊れてしまうんですよね。

従来の常識を打ち破る新技術

忠津:なぜそのようなメリットを持つ磁性流体が一般的に使用されないかと言うと、パーマロイのような個体の磁性材に比べて透磁率が低いことが挙げられます。透磁率は「磁石の通しやすさ」(磁化のしやすさ)を表したものですが、パーマロイは18万程度、磁性流体は10程度となっており、磁性流体が磁気的に感度が低いものであることが分かります。

忠津:透磁率が低いため、磁性流体はセンサーに適していないというのが今までの常識でした。しかし、私たちは磁性流体の「着磁しない」というメリットを生かせないかと実験を重ね、ついに高感度な検出方法を編み出しました。新技術であると認められたその検出方法は現在、弊社の特許となっています。

パーマロイと磁性流体の最大比透磁率の比較

市川:フラックスゲート式のセンサーは地磁気のような外部の磁場の影響を受けるため、磁界を計測する際、このグラフ(磁気ヒステリシス曲線)が示す通り原点にズレが生じてしまいます。一方、JIKAIには原点のズレがないため、信頼性の高い計測結果を得ることが出来ますね。

フラックスゲート式のセンサーは2つの曲線の中心点がずれている

市川:磁界センサーをドローンに搭載する場合、モーターのような磁力に影響するノイズがたくさんあるので、フラックスゲート式だとそもそも値が狂ってしまうんじゃないかという不安もありますね。

忠津:そうですね。ドローンのモーターなどには強い磁石が使われているため、フラックスゲート式の磁界センサーにも着磁しないような工夫が施されているのですが、電源が切れた時にはそういった機能も働かないため、結局数値に狂いが出てしまいます。ですが、JIKAIはそもそも着磁しないため、狂わせようと思っても狂わないんですね。

JIKAIが切り開く可能性 〜地球を超え宇宙へ!

市川:JIKAIは耐久性が高いため、深海だけでなく宇宙探査にも貢献出来そうです。

忠津:はい。例えば火星に磁界センサーを持っていくとなった時、火星にどれほど強い磁界があるかは分からないんですよね。 予測はありますが、実際に測った人はいない。思いもしない強い磁力があれば、従来の磁界センサーだと使えなくなってしまうということが起こり得ます。ところが磁性流体を使ったJIKAIであれば、どれほど強い磁界に晒されても、その場から離れると元に戻るため信頼性が高いのです。

JIKAIは宇宙資源探索への応用も期待されている

市川:フラックスゲート式の磁界センサーを宇宙に持っていったけど壊れてしまった、では遅いですよね。だったら、信頼性の高いものを使って探査する方がいいですね。

忠津:その通りです。JAXAとも共同研究をしていますが、 JAXAやNASAが使っている磁界センサーの技術はフラックスゲート式です。宇宙探査の際は、様々なメーカーの磁界センサーを用いて計測結果の信頼性を補っているのですが、フラックスゲート式自体の欠点は補えません。

忠津:そのため、JIKAIなどフラックスゲート式とは原理が違う磁界センサーも用いて、計測結果の比較を行う。未知の世界に挑む宇宙惑星科学探査の分野ではそのような考え方を取り入れています。

宇宙惑星科学探査分野における磁界センサーの使用方法について語る忠津孝博士

市川:センサーが1つだけだと不安ですもんね。W.S.Pも今後、宇宙探査への進出を考えていますが、そういったリスクも一緒に考えていきたいです。

機雷探知から沈没船調査まで、多岐にわたる活躍

市川:ここにあるのはW.S.Pが開発した水中調査用の水中3Dスキャンロボット「天叢雲剣(MURAKUMO)」です。沈没船などの3Dスキャンを行い、ミリ精度の3Dモデルを作成するというものですが、一部を作り変えてJIKAIを組み込みました。

市川:磁界センサーは海中でのニーズも幅広く、金属製の資源や沈没船の探索、さらには機雷調査など、多岐にわたる調査活動で活躍しています。

JIAKIを使用することで広範囲の海域を効率よく探索できる
JIKAIを搭載した天叢雲剣(MURAKUMO)
JIKAIを組み込むことにより海中に眠る金属の探知も可能に

市川:それこそ、フラックスゲート式の磁界センサーはスマートフォンや車にも使われてますよね。そのような部分にW.S.Pのセンサーが使われたら、ものすごく嬉しいです。

忠津:研究・開発ですから、世界的にもトップでなければ意味がありません。他社の優秀なセンサーと比較しつつ世界で1番良いものを作ることが私たちの目標です。

市川:今後もどんどんアップデートして、他のものに負けないような、高性能で"ワクワクする"ものを作っていきたいと思います。本日はありがとうございました。


従来の磁界センサーの性能を大きく上回る、革新的なリモート磁界センサー「JIKAI edge AI SENSOR」。新たな探索の基準を打ち立てつつあるこの磁界センサーを用いて、ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は未知の領域に挑んでいきます。ぜひ活動をフォローいただき、応援をお願いいたします。

JIKAI edge AI SENSORについてはこちらの動画もご覧ください。

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