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#71 日本が改革できない社会なのは、

 日本の行く末を決める衆議院議員選挙が近づいてきました。今さら話すことではないかもしれませんが、選挙は議員を選んで国会(立法府)を作り、その立法府が定めた法律で行政や司法が運営されていくわけですから、政府を作るのは選挙であると言っても過言ではないと思います。この基本が理解できていれば、「選挙で何をすべきか」がよくわかります。

 政府は市民が選挙という手段で作るものであり、その政府を今よりさらによりよく作り変えていくためのものでなくてはならないはずです。政府に任せっぱなしにするのではなく、個人個人がよく考え、知人や友人と議論した上で、その結果を示すのが選挙です。

 ですから、学校で教えている「選挙の仕組み」「法規」「衆議院や参議院の任期や定数」などのテストに答えるような薄っぺらい知識では決定的に不十分だと言えます。

・選挙のとき具体的にどう行動すべきか

・「投票に行かない」ということを選択することは、どういうことか

・政治家とは何をする人なのか

 などと言った本質的な問題について考えることが大切だと思います。

 日本は先進国の中でも投票率が最も低い国の一つと言われています。OECDの2016年の報告書では、国政選挙の投票率は、加盟国の平均が66%ですが、日本はスイス、ラトビアに続きワースト3位の約52%です。また世界200カ国・地域で行なわれた選挙の投票率を公表している国際NGO「民主主義・選挙支援国際研究所」の2019年の公表データでは、日本の投票率は200カ国中158位という低さです。北欧のスウェーデンは、若者の選挙・政治参加意識が高いことで知られています。それは政治や選挙に関する基礎教育が充実していて、小学校の社会科の教科書には次のように書かれているそうです。

「投票は自主的なものです。そして、それは独裁政の国に住む人が持っていない民主政の権利です。」

「人々はある政党の主張の全てに賛成できなくても、彼らが最も重要であると思う問題についてよい意見を持っているとすれば、その政党に投票します。」(引用:「スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む 日本の大学生は何を感じたのか」)

 スウェーデンの子どもたちは、小学生のときから選挙や政党政治の利点・欠点を学び、選挙を「自分の意見を表明できる機会」としてとらえていると言われています。ところが日本ではどうでしょう。例えば国政選挙の投票日に、

「選挙に行っても世の中が変わる感じがしない」

「ろくな候補者がいないから、投票に行く気がしない」

などといって選挙に行かない人がけっこういますが、「選挙に行かない」というのも一つの意思表示には違いありませんが、選挙に行かないことの意味がよくわかっていないと思います。

「白票や棄権は、現在の政治を信任することと同じ」になるのです。

 ですから今の政治を今より少しでもよくしたければ、選挙に行くべきだと私は思います。日本のマスコミは「棄権が増えるのは、政治不信が増しているからだといった論調ですが、はたしてそうでしょうか。

 イギリスの選挙の仕方は、

1 選挙の前に必ず事前予想が発表される

2 その予想通りで満足なら3つ取るべき行動がある。①投票に行って名前を書く②白票を出す③棄権する この3つの方法のどれを取ってみても結果は同じことになる。

3 事前予想に不満なら、行動はただ一つ。投票に行って予想と違う人の名前を書く。

 このようにシンプルに選挙の本質をとらえて、行動しているといわれています。「ろくな候補者がいないから投票に行く気がしない」と考えてしまうのは、前提(候補者は立派な人でなくてはならない)が間違っていると思います。選挙はよりよい人を選ぶためのものではありません。ウインストンチャーチルは次のようなことを言っています。

 「自分を含めて選挙に立候補するのは、目立ちたがり屋やお金儲けをしたい人などろくでもない人ばかりである」

 「選挙というのは、こういった信用のおけない人たちの中から、相対的にマシな人を選ぶ忍耐のことである」

 「したがって、民主政は最低の政治形態である。ただし、これまで試されてきた王政や貴族政など過去の政治制度を除けば」

 これらのチャーチルの言葉を借りるならば、国民がすべきことは忍耐を強いられながらも「100%満足できないけれど、他の候補者に比べれば多少はマシ」な候補者を選ぶことです。これらのことがわかっていれば、「よい候補者がいない」からといって、白票を投じたり、棄権したりするといった行動はできなくなると思います。

 最後に低い投票率が起こす最大の問題点を明らかにします。日本だけでなくどのような社会でも、政府からお金(補助金など)をもらっている人(既得権益者)が全体の20%ぐらいはいると言われています。ふつうそれらの人々は後援会を作って政権与党に必ず一票を入れます。なぜならそれが既得権益を守ることにつながるからです。我が国のように投票率が50%だと圧倒的に政権与党が有利になることは簡単な計算で誰でもわかることです。

 単純な数字に置き換えて考えてみます。有権者全体が100人だとすると、既得権益者は全体の20%ですから20人になります。でも投票率は50%だとすると、100人のうち50人しか投票に行かないわけですから、投票に行く50人のうちの20人となると、投票の40%を戦う前からすでに押さえてしまうことになります。あと「5票」で投票する人数の過半数に達してしまうことになります。これに対して新人はまるまる「25票」とらなくては勝てません。実に5倍の差があるわけです。我が国は世襲議員が5割を超えています。G7の国の中で世襲議員が1割超える国は日本だけです。もちろん世襲議員の中でも優秀な人はいると思いますが、既得権益者の後援会に押された世襲議員が現状の改革を行なえるはずがありません。

だから投票率が低いということはいつまでたっても日本の社会が「改革できない社会」のままになってしまうことを意味しています。

 仮に日本の投票率が先進国並みに80%に上がったとして考えてみましょう。そうなると政権与党の候補者はあと20票上積みしなくてはいけなくなります。新人は40票とらなくてはいけませんが、2人の差は5倍から2倍に縮まります。5倍と2倍では、全然違いますね。これなら新人だってもしかすると勝てるかもと頑張れますね。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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