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#2 本当の豊かさとは

 アニマルプラネットというチャンネルで放送していた特集を見ていてハッとさせられたことがありました。コンゴの奥地に生息している野生のチンパンジーの群れの中に、食べきれないほどの餌をしばらくの間、人間が意図的に置き続けたのです。

    すると、チンパンジーはどうなったと思いますか。

 これまでにたまにケンカはあっても群れの中で助け合ってお互い仲良くくらし合っていたチンパンジーの間で、殺し合いが始まったのです。物質的に豊かになり、餌を得るために協力する必要がなくなったチンパンジーの社会は、食べ物の心配がなくなり、物が豊かになったのと引き換えに崩壊してしまったのです。生活することが自己完結できるようになると、他者は必要なくなるどころか、信用できない「敵」となり、コミュニケーションがとれなくなってしまったのです。
 この番組を見て、チンパンジーたちが見事に精神的に貧しくなるのを目の当たりにして、これはチンパンジーだけの問題ではなく、隣りに住んでいる人がだれかわからない、隣りの人と助け合わなくても生きていける現代社会を生きる私たちに突きつけられた問題でもあると私は強く実感しました。
 目覚ましい通信手段の発達で、私たちの生活は激変してきています。ネットで注文すれば自宅に居ながらにしてほしい物を受け取れる時代になりました。わざわざ銀行まで行かなくてもお金を送金したりできるようになってきました。もっと進めば、一部離島で行われているテレビ診療のようにわざわざ病院まで足を運んで待合室で長い時間待たされずに自宅で診察できて、ネットで薬局から薬が宅配便で届くような時代がそう遠くないかもしれません。自分一人でも生活が完結する一見便利な時代に世の中は向かっているのかもしれません。しかし、自分一人でも生活が成り立つようになるということは、人とコミュニケーションをとらなくても生活できることであり、次第に意識するしないにかかわらず、自分が今こうして生活できること、今生きていることが、社会という大きな枠組みの中で間接的に多くの人々に支えられて生きているという社会人として生きていく上で最も大切で謙虚な自覚を忘れてしまい、自分一人で生きているような錯覚を起こしてしまうことになりかねません。
 ものが豊かになり、これから未来に向かって今以上にらくでしかも便利な世の中になっていくことは、だれもが容易に想像できることです。物があふれて便利になると、人とのコミュニケーションをとる必要性がなくなり、心が貧しくなってしまうことは仕方のないことなのでしょうか。私はそう思いたくありません。物が豊かになり、便利になったとしても、心を豊かにしていく唯一の方法があると思います。それがまさしく「教育」であると私は確信しています。

 物事の成り立ちやその意味、人の思いなどを一歩深いところで理解していくこと。そのために頭の中で理解するのではなく、多くの体験や経験を通して体や心に刻み込んだ深い学びを伴った理解を子どものうちにたくさんしていくことが大切だと私は思います。

 まずはご近所の人と明るいあいさつを心がけたいと思います。


 最後までお読みいただきありがとうございました。

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