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#72 ナイチンゲールが偉大なワケ

 ナイチンゲール、この人の名前は誰もが知っています。

 クリミア戦争に従軍して、敵味方の分け隔てなく傷病兵を自分が引き連れてきた女性看護師らとともに手当てした「クリミアの天使」としてあまりにも有名な人ですが、彼女が「敵味方の分け隔てなく傷病兵を看護したこと」に勝るとも劣らない業績を数学者(統計学者)として残している事実はあまり知られていません。

看護と数学? いったいどういう関係があったのでしょう。

 ナイチンゲールはロシアとオスマン帝国の間で起きたクリミア戦争に派遣されたとき、重症を負ったわけではないのに、死ぬ兵士があまりにも多いことに気づきました。戦争映画の影響で私たちは戦場に赴く兵士は、鉄砲で撃たれたり、爆弾によって戦死すると思いがちですが、実際には、その30倍もの兵士が『きちんと看病されないこと』で死んでいたと言われています。野戦病院の床や壁は腐り、ゴキブリが這い回って悪臭が立ち込める状態で、医療物資や薬品も足りなかったのです。その不衛生な環境で、抵抗力の弱った傷病兵たちは感染症にかかって、ばたばたと死んでいたのです。

 ナイチンゲールがすごいのは、そのことに気づいた後で、兵士たちを看護するだけでなく、彼らの死因をきちんとした統計データにとり、一目でわかるグラフにしたことにあります。その当時は、棒グラフも円グラフも普及していません。ナイチンゲールは独自に「コウモリの翼」と呼ばれる円グラフを作り、兵士たちの死因の統計を1000ページ近くにもなる報告書にまとめ、イギリス女王が直轄する委員会に提出したのでした。

 ナイチンゲールがこの時に明らかにした、客観的なデータにもとづく医療施設の衛生環境の改善がなければ、現代の世界中の病院における死亡率も大きく変わっていたかもしれません。

 ナイチンゲールは裕福な家庭に生まれたことから、幼少の時から最高の教育環境を与えられ、語学や文学、そして数学や統計学を学んでいました。彼女がやり遂げた人類史に残る大きな「仕事」は、彼女が看護師になるずっと以前に学んだ「数学」と「統計学」によって達成されたと言っても過言ではないのです。

 多くの人々の役に立つ、新しいことを発見するポイントを、私たちはナイチンゲールから学ぶことができると思います。それは『思い込みではなく、誰もが納得するデータを集めること』だといえます。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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