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#70 幸せ感が多い人生と幸せ感が少ない人生を分けるただ一つの違い

 パナソニックの創始者、松下幸之助さんは社員を採用する際の面談で、必ず一つの質問をしたそうです。

「あなたのこれまでの人生はついていましたか?」

 みなさんだったら、どのようにお答えしますか。
 「ついてなかった。」と答えた人が、どんなに一流の大学を出ている人でも、松下さんは採用しなかったと言われています。それは「ついていなかった。」の答えに凝縮されたその人の生き癖を松下さんは一瞬にして垣間見たからだと言われています。その答えには、その人が人生の中で出会ってきた「人への感謝の思い」がない。自分の「人生に対する謙虚さ」がない。自分が周りの「人に支えられて生きてきたという自覚」がないから、「ついてなかった。」となると考えたと言われています。人生山あり谷ありですから、どん底やつらい経験をしたことのある人もいるかと思いますが、だからついていなかったではなく、そこから周りの人々の支えがあったから、今の自分があることに気づいていれば、「ついてなかった」といった不満を表す答えにはならないといった洞察から考えていたのです。
 

 関西地方のある有名な進学塾で、連絡のつく塾の卒業生のその後の人生について調査しました。その塾の教え子は1万人くらいいて、みんな学歴は東大、京大卒などのすごく高い人たちばかりです。しかし、予想以上に「今どん底の人生を歩んでいる」と思っている教え子が多かったのです。彼らに、

「どんな気持ちで生きているのか」

「仕事とは何なのか」

「お金とは何なのか」など、いろんなことを聞きました。

 こうして出てきた答えを整理したときに、たった一つの違いが人生を分けるということに確信を持つようになったそうです。
「自分は不幸だ」とか「ついていない」と認識している教え子たちはみんな、自分の喜びが最優先の人生を生きていたのです。
「いいものが食いたい」
「いい服が着たい」
「いい家に住みたい」
「いい車に乗りたい」
「愛されたい」
「認められたい」
「昇進したい」などなど。
 不幸な人生を歩んでいた教え子たちは、素晴らしい学歴の持ち主でしたがみんな自分のことしか考えていなかったのです。ここで誤解してはいけないのは、自分のことを考えるのは人間として生きていく限り、アイデンティティや「自我」は当然存在するわけですから、それを否定しているわけではなく、「自分のことを最優先してしまう」価値観のことを指しているのです。
これに対して幸せ感溢れる人生を歩んでいる教え子は全員が、他人の喜びを我が喜びとする価値観を持っていたのです。身に付けた力で他人を幸せにできたとき、人は初めて幸せになれます。一方、身に付けた力を自分の欲望のためだけに使ったとき、人生は音を立てて崩れていくものです。
 学歴は無力です。役に立ちません。でも勉強は大事です。勉強ほど大事なものはありません。なぜなら、人を喜ばせるには、相手ができないことをやってあげるのが一番だからです。相手ができないことをやるためには、高い技術力や能力が求められます。高い技術力や能力を身に付けるためには、勉強や努力をするしかないのです。だから、いまだかつて幸せな人生を歩んだ人の中に、努力家でも勉強家でもなかった人は1人も見つけられていません。でも、たとえ勉強家や努力家であっても、幸せ感の少ない人生を歩んでいる人は星の数ほどいるのです。
 この違いはたった一つ、他人の喜びを我が喜びとできるかどうかです。そう考えると人に喜びを与える人生こそ、幸せな人生なのかもしれません。人間は誰でも自分がかわいいといったエゴを持っていますが、人間が一番力を発揮できるのは、誰かのために役に立つ何かをする時だと言われています。その時は自分でも信じられないくらいの底力が湧いてくるとも言われています。その力こそが幸せ感と表裏一体なのだと思います。

 ところで、いきなり保護者に面談の中で「先生、今幸せですか?」と訊ねられたら、どう答えますか。

 教育の目的は子どもたちを現在から未来に向けて幸せにするために行っているものであるはずです。その肝心の先生が幸せになる方法を知らなければ、子どもたちが幸せになれるように指導できるはずがありません。
 自分の教え子たちが将来幸せな人生を歩めるように指導するにはどうしたらいいのか。この大きな教育課題といつも向き合って教育実践をしていると、適当にお茶を濁した指導はできなくなってくるものです。また子どもや保護者と摩擦が多少起きようとも、指導すべきことはその時指導しておかなくてはいけないといった厳しくも崇高な自覚に立って指導ができるのだと思います。
 また「人に喜びを与える人生」を子どもたちが送っていけるようにするには、子どもたちの心の中に自己有用感を育てていくことだと思います。自分が誰かのために役立っているといった実感です。今さかんに叫ばれているキャリア教育を実践するその先には、子どもたちが幸福感のある人生を送れることにまちがいなくつながっていると思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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