#73 数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う
昭和の時代に比べて、人ひとりが得られる情報は500倍以上になったと言われています。それゆえに読み手一人一人にメディアリテラシーや数値に関する理解能力が問われる時代になりました。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」
どこぞで聞いたことがある言葉。この言葉の意味合いが、情報を解析することで見えてきます。ニュースを見ましたら、まずその調査がどこの誰がいつ言ったものであるか?そして調査概要がきちんとつまびらかに公開されているのかどうかも、ニュース情報の信ぴょう性判断の材料となります。
計算というエッセンスが入った瞬間から、数字は嘘をつき始める
ある方がテレビで「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」と発言して、注目を集めましたが、厳密に考えると、この言葉の前半に使われている「数字」と後半に使われている「数字」は意味が異なることがわかります。最初の「数字」とはデータ、すなわち実数です。よく生データなどと表現されますが、換言すると「計算で導き出された数値ではなく、測定で得られた数値」と言えます。(もちろん測定方法に、意図的な要素が入るケースもありますが)他方で、後半の「数字」とは、計算や解析によって導き出された数字…というか「数値」を表します。
「データ」と「情報」とでは天と地ほどの違いがあります。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」とは、「データは嘘をつかないが、嘘つきは情報を使う」と読み替えればわかりやすいのではないでしょうか。
情報には定義があります。データ・事実に、「発信者の意図」と「発信者の感情」を加えたものを「情報」というのです。
だから情報には発信者の何らかの意図といったバイアス(偏り)がかかっているのです。
○嘘をつかない数字→生データ・実数
○ウソつきが使う数字→割合・単位量あたりの大きさなど
計算された数字には、発信者の意図と感情が伴う
割合の表示は、基本的に胡散臭い。実数で考える癖をつけましょう。
特に割合の表記だけしかなく、どのような数字をもとにして計算したのかどうかが意図的に公開されていない場合、ほぼ何らかの意図(強調したい・隠したい)があることを感じた方がよいと思います。
かつて、トム・ソーヤの冒険を書いたマーク・トウェインは「私はしばしば数字に惑わされる。自分自身に当てはめる場合はなおさらだ。ディズレイリの言葉「嘘には三種類ある:嘘、まっかな嘘、そして統計」が正当性と説得力をもって通用してしまうんだ。」と言ったそうです。
「そして統計」…有名なフレーズです。
統計の抽出の仕方を工夫すれば人を騙すのは容易であるといった有名な統計ジョークを紹介します。
これほど馬鹿馬鹿しい話があるでしょうか。犯罪者は全員パンを食べたことがあるのでパンを食べる人物は危険だという話と同レベルです。ゲームに影響を受けて犯罪者になるような人間はどこかで音楽や漫画や小説やその他のささやかな表現に影響を受けて罪を犯します。もっと言えば、これを引き合いに出すのなら、スマホユーザーの大半は何らかのゲームをやっている事実も紹介すべきではないでしょうか。統計の抽出の仕方を工夫すれば人を騙す論理は容易に作れる一例でした。
●昨年に比べて○%上昇し…
●日本人の○人に1人が、今回のことについて…
●今回出た量は、東京ドーム○杯分に相当し…
こんなフレーズが出たら要注意です。嘘くさい・胡散臭いと思いながら聞いた方がいいです。これは分かりやすく伝えるという配慮ではなく、明らかに印象操作をしようとしている「発信者の意図」や「発信者の感情」がここに込められているのです。
「発信者の意図、発信者の感情が込められている」振り返ってみると、心当たりありませんか?
写真撮影で見せたくないところを意図的にフレームから外したり、美白効果で意図的にシミを消したり、成績の報告をテストの紙面ではなく、意図的に口頭で順番だけで伝えようとしたり、あいつムカつくと思って、一生懸命 意図的にデマや噂を流したり… このように流されたものを「情報」というのです。正誤などは関係ありません。誤報だって世の中たくさん存在しますし、フェイクニュースなんてその最たる例です。
しかし、一般社会では「データ操作」は認めません。「操作」ではなくそれは「改ざん」だからです。でも「情報操作」「印象操作」などは日常茶飯事に行なわれています。場合によっては「ブランディング」とか「広報戦略」などとポジティブな表現にすり替わっていることだってあります。
以下の例は、発信者の都合のよい事実だけ扱って都合の悪い事実を隠しています。
このように統計上の数字や、データを恣意的に扱うことにより、意図的にあたかも誰がみても納得できるように証明できてしまうのです。「数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつくのは簡単である」ということになります。
私たちは自分の目や耳から入ってきたものが、データなのか情報なのか峻別していかなくてはいけません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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