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#40 創作 その後のウサギとカメ

 カメに負けたウサギは、くやしくてくやしくてがまんができませんでした。そこで、もう一度勝負をしようとカメに申し込んでみました。

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 すると、カメはあっさりウサギの挑戦を受け入れてしまいました。
 次の日、また競走が行われました。広場には、たくさんの動物たちが集まっています。競走が始まりました。今度はウサギは最後まで油断しなかったので、あっという間にゴールしてしまいました。動物たちはゴールしたウサギに拍手を送りました。

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 ところがウサギは、「これがおれさまの実力さ。みんなよくわかっただろ。」といばりはじめました。
 その後、ずい分たってからやっとカメの姿が見えてきました。「のろまのカメさんがやっと帰ってきたぞ。」みんなカメをばかにして笑い出しました。
 しかし、カメはもう勝負がついているのに一生懸命走っています。
 その様子を見て、犬がひと言こうつぶやきました。
「なぜカメさんはもう一度ウサギさんと走ることを受け入れたんだろう。…」
「そうだよな。今度はウサギさんだって油断するはずないし、そうなればカメさんが勝つみこみはない。そんなことは走る前からカメさんにだってわかっていたはずだ。」キツネが言いました。
「じゃあなぜ負けるとわかっている勝負をカメさんは受け入れたんだろう。」
クマがつぶやきました。
「それはきっと、カメさんははじめから勝つことなんて考えていなかったんじゃあないかな。」
「自分のベストをつくすことだけを考えているんじゃあないかしら。」
「そうだ。きっとそうだ。」
「それと、カメさんは一回勝っているから今度はウサギさんに花を持たせようとしたのかもしれない。」

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 ゴールに近づいてくるカメの姿に動物たちは何だか近よりがたい気高さを感じていました。
「カメさん、ゴールはもうすぐだ。がんばれ!」さっきまでばかにしていた動物たちがいっせいにカメ向かって声援を送り出したのです。

 カメはゴールすると、その場に倒れこんでしまいました。でも、動物たちからは、ウサギがゴールした時とは比べものにならないくらいの大きな拍手がしばらく続いていました。
 それを木のかげから見ていたウサギが、「今回もカメにしてやられたな。」とひと言つぶやいて森の奥へ帰っていきました。

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 以上が私が担任をしていた時に創作したお話です。運動会の前に道徳の時間で扱いました。これは1984年ロサンゼルスオリンピックの第1回女子マラソンで「見事な最下位」でゴールしたアンデルセン選手をヒントにして創ったものです。私は子どもたちにいろいろなことを感じてほしいと考えてこの話を創りました。実際のアンデルセン選手のゴールの映像がこちらです。↓

 私はこのロサンゼルス大会の史上初の女子マラソンで金メダルを取った選手の名前は覚えていませんが、最下位だったアンデルセン選手の名とフラフラになりながらも完走した姿だけは今も色褪せることなくハッキリ覚えています。当時はまだ「熱中症」という言葉はなかったと思いますが、今だったらおそらくストップさせられてしまっていたかもしれません。でも、映像を見ていただければわかるように役員が何度もアンデルセン選手に近づいていますが、それを彼女は拒んでいます。彼女は自分の意思で競技を続けてゴールしたのです。役員の人も彼女の意思を尊重した判断は凄いと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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