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イスラムは女性の運転を禁止してるのか?

前回のコラムでは日本国内でもムスリム女性がヒジャーブを被ったまま運転免許の証明写真の撮影が可能になったことを紹介した。

このコラムを読んだ人の中には「そもそもイスラムでは女性の運転が禁止されていなかったけ?」という疑問を持った人も少なくないはずだ。今回はその疑問に答えていきたいと思う。

事実、2018年6月までサウジアラビアでは女性が車の運転をすることは禁じられていた。

 車の運転が解禁された際、多くのマスコミでは「イスラムの厳しい戒律によって車の運転は禁止」と説明されていた。しかしながら、イスラムが誕生した1400年前に車は発明されていない。そのためコーランに「女性の運転は認められない」という記述があるはずもなく、預言者ムハンマドが「女性は車を運転してはならない」と言っているわけもないのだ。


そんな状態で、どう解釈して「運転禁止」という結論が導き出されていたのだろうか?

 女性が車を運転してはいけない理由について、イスラム法学者のルハイダンは「女性が車を運転すると卵巣や骨盤に悪影響を与え、生まれてくる子どもにさまざまな病気を引き起こす」と説明している。他にも「開放的になり、売春や同性愛が増えて、離婚率が上がるから」「強姦、姦淫、非嫡出子、薬物乱用、売春の発生率は女性が運転しない国に比べて、女性が運転する国の方が高いから」といったような説明をサウジアラビア国内で権威のあるイスラム法学者が本気で行なっているのだ。

言うまでもなく、これらの理由はコーランに準拠したものではなく、イスラムとは何も関係がない。それどころか「意味不明なロジック」と表現しても差し支えないだろう。

 上述の事例に限らず、近年ムスリム女性が自由を獲得する運動は活発化している。これらをマスコミが報じる際には「厳格な宗教からの脱却」という表現が多用されるが、実際は「宗教」ではなく「文化・政治的な影響力からの脱却」のように私は思っている。

次回はこのような「厳格な宗教からの脱却の誤用例」について紹介していきたいと思う。

Text by Naeer

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