日本で培われた「ハロウィン文化」〜渋谷の厳戒態勢に思いを馳せながら
本日10月31日は、ハロウィンである。元々は古代アイルランドのケルト人の収穫の祭りだったものが、キリスト教の「諸聖人の日(All Hallows' Day)」という11月1日の祝日に併せて、その前夜を祝う祭りとして現在に伝わっている。ケルト文化においてハロウィンは、日本のお盆と同じく、先祖の霊が家族に会いに現世に戻ってくる日と考えられており、子どもたちが仮装して近所を回ってお菓子をもらったり、大人達も家族や友人を招いてパーティをひらくなど、家庭間のごくごく小規模なイベントとして行われることが一般的である。
一方、日本においてはというと、2010年代あたりから、特に若者を中心に街頭での仮装やパーティーが流行し始め、特に渋谷や新宿、六本木などの都市部では大規模な集まりが見られるようになった。SNSの普及が進み、人々がハロウィンの仮装やイベントの様子をインターネット上に共有することが増えたことにより、ハロウィンのムードや情報が瞬時に拡散され、盛り上がりを加速させる要因にもなったとも言われている。が、こうした盛り上がりの一部が暴徒化、騒音や公共の場での飲酒、乱闘などのトラブルを起こすなど、多くの迷惑行為が問題となっている。また、祝賀活動による大量のゴミ問題や交通渋滞の問題など、多くの課題が山積し、2023年、ついに渋谷区では、「ハロウィーン目的で渋谷駅周辺に来ないで」と記者会見で呼びかける事態に至った。
こうした呼びかけや、警察による厳戒態勢もあり、ハロウィン直前となる10月28日土曜日や29日日曜日は、仮装する人や目立った混乱もなかったようだ。
商業的な背景が強く、その起源や文化を理解せずに、「単なるファッションや流行として浸透している」といった批判もある日本のハロウィン。とは言え個人的には、宗教的な背景とは区別し、人と人とが集う機会として新しい文化を受け入れそれを楽しめる日本人の特性というべき部分は、好意的に捉えている。しかし、それが行き過ぎて、社会問題に繋がってしまう部分についてはいただけない。その意味では、ある程度、ハロウィンの背後にある歴史や文化も知ってもらい、その意味を理解することは必要なのかもしれない。渋谷がいつか、誰もにとって豊かなカタチでハロウィンを楽しめる場所になることを願ってやまない。
(text しづかまさのり)
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