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ジブリ最新作は、宮崎駿流「黙示文学」である〜ジブリ作品を見て育ったキリスト者が、映画「君たちはどう生きるか」を見た直後に記事を書いてみた〜

宮崎駿監督最新作「君たちはどう生きるか」が、いよいよ2023年7月14日に公開された。前作から10年、引退撤回をしてまで完成させた長編映画は、事前の宣伝や予告が一切ないという異例の方針をとり、ジブリファンのみならず、多くの人達をざわつかせていた。

今年41歳を迎えた筆者は、言わずと知れたジブリっ子。ラピュタやトトロなどは、絵を見ただけでセリフが浮かんでくる。そんな筆者が映画鑑賞、直後に感じた率直な感想を書いてみた。ネタバレにならないように細心を払いたいと思うが、一部、内容に触れる箇所があることをご了解いただきたい。

本作は、吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」から着想を得ているということもあり、前作「風立ちぬ」と同様、リアリティ色の強い作品かと思いきや、「天空の城ラピュタ」や「千と千尋の神隠し」のようなファンタジー色の強い作品である。
が、そんなことはさておき、本作はとにかく物語が「わかりにくい」のが特徴である。ここ最近の宮崎作品はとかく説明不足で、鑑賞者の理解に委ねる部分が多い傾向にあったが、本作品はその傾向が大変顕著である。ネット上でも「これは傑作だ!」と評価する人が居る一方で、「がっかりした」などと評価が二分しているようであるが、きっとそれもこの「わかりにくさ」が理由なのだと思う。

一方、そんな「わかりにくさ」について筆者は、なんとなくの既視感を覚えた。そうそれは、キリスト教の黙示文学に触れた時の「全然分かんない!」の感覚に非常に似ていたのだ。黙示文学とは、神や天使などの超自然的な存在からの直接のメッセージやビジョンを伝えるための宗教的な文学の一種であると言われ、聖書の中で最も分かりにくい書の一つと言われる「ヨハネの黙示録」が代表的なものとして挙げられる。

「ヨハネの黙示録」では、人間が直接知ることのできない世界の始まりや終末、神の意志といったものを、たとえ話を使って説明するのだが、これが超絶よく分からない。よく分からなすぎて、今でもその解釈について、様々な議論が巻き起こっているのだが…、ネタバレになるので、詳細の説明は避けたいと思うが、実は、この「人間が直接知ることのできない世界の始まりや終末、神の意志」こそが、どうやら本作品で描きたかったそのものなんじゃないか!?と筆者は理解した。それを映画というたとえ話を用いて表現した宮崎監督が、その上で「君たちはどう生きるか」を我々に問いかけているのではないか、そんな推察もしたくなってしまう。

まぁ、このように、内容の難解さばかりに目が行きがちになり、様々な議論や考察をもたらしている本作だが、ところどころに、宮崎作品の過去作品をオマージュしたような場面や描写が見られ、ジブリファンとしては、それを探すだけでも楽しい。

信じられないような暑さが続く今夏、一時の涼を求めつつ、是非、話題作を鑑賞いただきたい。

(text しづかまさのり)

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