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短編小説「あの世と僕の関係」

あぁ今日も仕事に行かなくてはいけない。毎日同じ事の繰り返し。最初は楽しかった。色んな知らない事があるから色々と挑戦出来た。でも今はどうだ?もう何年もこの仕事を続けて全て分かるようになってしまった。
ん?なら仕事変えればいいじゃん。
そう思って僕は仕事を探す旅に出た。この話はその一部である。

電車に乗りガタンゴトンと揺られる。外の景色には田舎と山が見える。
とうとう俺の実家に帰ることになるとは…
現在地は大分県のとある町。
「んー帰ったのっていつぐらいだろう?」
俺は駅から降り改めて故郷を実感していた。
「でもなぁ…ここから俺の実家遠いんだよな…めっちゃ坂道あるし…」
困っていると目の前にタクシーが止まった。
「そこの君困っているようだね。そしてその顔家が遠いって顔してるね。どうだい乗っていくかい?」
親切なタクシー運転手が声をかけてくれた。
「いやぁそんなお金もってないので…」
俺にはあまりお金の余裕が無かった。
「んーじゃあ500円で連れてってあげるよ。ワンコイン方式な。」
タクシー運転手…どれだけ親切なんだ…
「ホントですか?ありがたいです。」
俺は礼をしてタクシーに乗り込んだ。
「言っとくけどこの事は会社には内緒で頼む。」
運転手が申し訳なさそうに言う。
「分かりましたよ。」
ホッとした顔で運転手が聞く。
「じゃあどこまで行きます?」
「結構遠いんですよ。曲がる時は言いますね。」
「分かりました。」
色んな車が横を通る。そんな時運転手が聞いた。
「今日はなんで故郷に帰ってきたのかい?なんか訳があるだろ?聞かせてみ?」
俺は戸惑いながらも運転手が聞いてくれるならと話し出した。
「俺…実は仕事をやめまして…仕事探す前に実家に寄ろうかなと。」
タクシーの中が静かになる。そして少し時間をおいたら運転手話しだす。
「こりゃ君それだけじゃぁないだろ?他にも1つあるだろ。長くなってもいいから聞かせてみ?」
「はは…バレました?」
そう。俺にはもう一つやるべき事がある。
「じゃあそのやるべき事をするところまで連れてってください。運転手なら分かるでしょう。」
「おう。任せろ!」
「でもそこまでも長いな…運転手さん俺の話聞くかい?」
「おっ!お客さんの話か…面白そうだ。話して話して!」
「そんなに楽しい話ではないんですけどね…」

まだその時は中学二年でした。
あまり人と関わりを持つのが嫌で、学校でもあまり人と話さない。そんな性格でした。
でもそんな時に1人だけ何故かすごく話しかける一人の女子が居て、その人の名前は…
言わないでおきましょう。彼女に迷惑です。
その人とですね。色んなことをして親しくなりました。体育大会なり、修学旅行だったり、今までどうでもよかった行事が楽しくなった。
そして中学二年の最後の日。クラスが別になるかもという気持ちで迎えた。
彼女は悲しそうにクラスのみんなと泣いていた。でも俺は泣けなかった。
そして中学3年。幸いにも彼女とは同じクラスになれました。
またあの時の楽しさが蘇るんだな。そう思っていました。でもそんな簡単じゃなかったです。
“いじめ”。俺のクラスで起きたんです。
しかも俺と親しくしていた彼女に。彼女はいつも何があっても笑って誤魔化していた。
なんでだよ。なんで誤魔化してるんだよ。助けを求めたら助けが来るのに。
もちろん担任の先生に言いました。いじめが起きていると。でも先生はそれになんの興味も示さず知らんぷりをした。
あぁ世界はこんな醜いものだったんだな。そう思った。
そして中学3年最後。つまり卒業の日。彼女は卒業式に出席しなかった。
それだけで決めつけるのはおかしいけどいつも行事に参加していた彼女が参加しないのはおかしい。
もしかしたら…もしかしたら……と思い俺は中学校の屋上に急いで行きました。
そしたらそこに居たんですよ。彼女といじめっ子が。
もうなんかイラついたので俺はいじめっ子に反撃みたいなことをしました。
でも相手は力の強い男子俺は力のない男子。負けるに決まってる。
そうして中学生活は終わった。
彼女はどうなったか…俺にも分からなかった。
半年前までは…彼女は……

最後の締めを言いそうになった時運転手が言った。
「着きましたよ。お客さん。話的にここだと思いました。」
「ありがとうございます。はいこれ。500円です。」
「いやぁ要らないよ。あんな話をされたら申し訳なくてね。あ!会社には内緒ね。」
「……ありがとうございます。」
「では達者でね。」
そう言ってタクシーはその場を去っていった。
さて彼女はどうしているかと言っていたね。
俺の目の前には何があると思う?
彼女のお墓だ。
俺は彼女の分も生きなくてはいけない気がしていた。
そうしてお墓の参りが終わって俺は最後にいつも言う。
「……好きだったよ。」
彼女のお墓からはいつも去る時には俺の背中が写っていた。

~完~
*この物語はフィクションです。

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