ひとりの少女と出会えた話。
絵を描きたいというモチベーションが風景からだと改めて認識したのは、絵描きのお友達から「をりさんは後から人を足すんですね!」とメッセージをいただいたときでした。
今年の3月に「♡町花7丁目2番地交差点」という水彩画を描きました。その制作過程の投稿を見ていたお友達がメッセージを送ってくれたのです。
「お散歩や旅先で気になった風景とかたくさん撮っていて、それを元に考えていく感じです」とお返事したら、「そっか!それで風景から印象に残るわけですね。お写真に絵で人を描き込むような感じですね」と。
「葉っぱの下に小人がいたら可愛いなとか、この街にオリキャラがいたら面白いなとか、あの窓辺に猫がいたらいいなとか、風景からですね」とお返事しました。
続きの会話の流れで、そのお友達が話してくれたあることから、とても深い気づきを得ることができました。わたしの絵を描くモチベーションは風景がありきで、そこに人物や小動物、架空の街を空想しているということは認識していましたが、「モチベーションを得る風景は、『わたし自身が』実際に見て感じた風景である」ということに改めて気付かせてもらえたのです。
・・・その、絵描きのお友達は、あるひとりの少女です。
その少女との出会いは1年半ほど前だったと思います。ひそやかに交流をさせていただきました。実際にお会いしたことはありませんが、わたしはその少女と少女が描き出す作品がとても好きなのです。
前述した「♡町花7丁目2番地交差点」という水彩作品は、よく散歩する何気ない交差点をモデルにして再構成した住宅街の風景画なのですが、当初は人物を描き込む予定がありませんでした。
描いていた時期が3月で卒業や入学、進学シーズンだったこともあり、ふと学生さんを描き入れたくなりました。普段、特定の人物を想像して絵にしたいと思うことはなく、ファンタジー寄りのオリジナルキャラクターや小動物を風景に描き入れることを好みますが、このときは、その少女に「♡街」で過ごしてみてほしいと思いました。
学校帰りなのか、登校前なのか、授業を抜け出してどこかに行くのか・・・。その絵描きの少女の幼馴染さんとふたり、並んで歩いている様子をイメージしながら絵に描き込みました。
髪型や制服などはわたしの創作であり、このことについて、その少女に伝えていないので、気づいていなかったと思いますが、まさにこの絵を描いているときに少女からメッセージをもらい、不思議であたたかい、やさしいつながりを感じたのです。
「♡町花7丁目2番地交差点」は、あるひとりの少女との思い出が詰まったわたしの宝物となりました。いつか、何年か先、何十年か先に、その少女に会えるときが来るように思います。そのときには、このことを伝えられたらいいなと思っています。
・・・いえ、もしかしたら、わたしが気づいていないだけで、少女はすでにこの文章を読み、「をりさん、そうだったんですね!」と笑っているのかもしれません。