[基礎知識]マーケットにおけるダウ理論について[2023年10月11日]

こんばんは。本日の夕食はカレーうどんを食べました。

一昨日投稿した「進捗_トレード手法に関して_2023年10月9日」の記事の中に記載した『ダウ理論』について纏めます。

◆『ダウ理論』とは


まず『ダウ理論』とは、米国のジャーナリスト・証券アナリストのチャールズ・ダウ(Charles Henry Dow , 1851年~1902年)らが考案し構築した、「ダウ工業株平均」と「鉄道株平均」の価格変動から株式市場の動向を評価・予測しようとする理論体系です。

考案された当初の『ダウ理論』の内容は、「工業」と「鉄道」という2つの市場において、株価の平均値がともに高値を更新した時、市場参加者は「もっと平均株価は上昇するだろう」と見込み、それとは逆に、平均株価が両方とも安値を更新したときには「株価の上昇の見込みは弱く、下落していくだろう」と判断される、というものです。

『ダウ理論』は、チャールズ・ダウ氏が「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」で論じた内容を、没後複数の人たちが研究を続け、理論体系として完成させたという経緯があります。

チャールズ・ダウ氏が逝去した後、まずS・A・ネルソン氏が『The ABC of Stock Speculation』でその理論を体系化しました。
その理論をW・ハミルトン氏が『The Stock Market Barometer』で紹介し、
ロバート・リー氏が『The Dow Theory』でさらに発展させた内容を発表した、という流れがあります。

株式市場(株価指数)の領域におけるテクニカル分析のオリジンとされる『ダウ理論(The Dow Theory)』ですが、他の金融商品のマーケットにおいてもその理論の有効性が確認され、現在でも多くの市場参加者が信頼を寄せる理論です。

その詳細を確認してみましょう。

◆『ダウ理論』6つの基本原則

株式市場の相場分析から生まれた『ダウ理論』ですが、その理論は6つの原則から成り立っています。
どの原則も、市場で取引される金融商品や指数の特徴を表しており、金融市場における価格変動の動向の普遍的な性質を詳らかにするものです。

『ダウ理論』の個々の原則を確認していきます。

◇原則①:「平均株価はすべての事象を織り込む」

まず第一の原則ですが、「金融商品の価格の平均値は、その市場に関係するすべての事象の影響を反映する」というものです。

金融市場に影響を及ぼすのは各国政府が発表する経済統計に代表されるような経済的・政治的なニュース、そして個々の経済主体の行動・判断、また人災や事故、予測不能な自然災害の結果ですが、原則①については、上記の影響すべてが最終的に金融商品の平均価格となって表示されている、という内容だと解釈しています。

市場に影響を与える数多の変動要因を個々に分析するのはほぼ不可能といってもよく、市場参加者の相場分析手法として代表的な手法の二つ「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」において、表示される平均価格の集積となるチャートを用いる「テクニカル分析」は、この第一の原則を分析・予測の基礎および根拠としています。

◇原則②:「トレンドには3種類ある」

チャートで表示される金融商品の相場には、価格変動の傾向が存在しています。
それが「トレンド」というもので、トレンドは2種類存在しており、「上昇トレンド」と「下落トレンド」です。

第二の原則「トレンドには3種類ある」というのは、この2種類のトレンドが3つに分類される、ということです。
この原則は、「期間ごとにトレンドの循環が存在する」、という内容です。
トレンドの種類は、以下の3つとなっています。

①長期トレンド(Primary Cycle)
②中期トレンド(Secondary Cycle)
③短期トレンド(Minor Cycle)


①の「長期トレンド」は、長い期間において継続します。1年間から数年間継続することが多いという内容です。

②の「中期トレンド」は、長期トレンドに対して、逆行する調整局面の中の売買注文の傾向を表します。期間は長期トレンドよりは短く、3週間~3か月間継続する、という見方が示されています。

そして、③の「短期トレンド」は、①⇔②の関係と同様で、中期トレンドの短期的な調整局面における傾向です。継続期間は、数時間から3週間とされています。

金融商品の価格の変動は、原則として各参加者の成行/予約注文で発生します。
トレンドは注文が偏りやすくなる傾向のことで、市場参加者は新規注文と決済を状況判断に基づき、それぞれの意思決定の根拠とする時間足(タイムフレーム)で注文/決済を繰り返すため、3種類のトレンドが発生します。

1~4時間足での相場の傾向を中期トレンドとすると、1時間足以下の視点では調整局面を迎えている(≒中期トレンドとは逆のトレンドが短期的に発生している)ことになります。

この原則に基づくと、大きなトレンドの中の調整局面が、短期的な視点ではそのタイムフレームの中では主流の傾向になっていることも頻繁に発生するので、状況判断のために必要に応じて①→②→③の順でトレンドを確認する必要があります。

◇原則③:「長期トレンドは3段階からなる」

原則②で定義された「長期トレンド」ですが、原則③では、そのトレンドはタイミングに応じて変化する参加者に応じて3段階に分けられる、と考えます。

〇長期トレンド中の参加者の変化
第一段階:先行期(先行型の投資家による注文)
第二段階:追随期(多数の投資家による追随注文)
第三段階:利食い期(一般参加者のトレンド追随による注文)

長期トレンドが第三段階になる時には、第一段階で参入した投資家は多くの含み益を手にしており、ここで利益を確定します。

◇原則4:「平均は相互に確認されなければならない」

『ダウ理論』がその考案時に対象としていたのは「工業株平均」と「鉄道株価平均」です。
この2つの市場が方向性を揃えたとき、より強いトレンドが発生する、という意味と解釈しています。

この原則を外貨で適用し、同じ決済通貨の通貨ペアで同じトレンドが発生した時、その決済通貨の外貨市場内での強弱が分かる、というように使用しています。

単一の金融商品だけを分析するのではなく、相関性の高い複数の金融商品や指数、そして通貨ペアを分析することで、トレンド発生と継続を予測することができる、という内容だと考えています。

◇原則5:「トレンドは出来高でも確認されなければならない」

「出来高」とは、市場での金融商品および指数の注文量のことです。
注文量が増えると、市場での価格変動は激しくなります。
トレンドが発生して継続し、第一段階から第三段階へ移行していくとき、出来高も増加していきます。

「トレンド発生と継続が出来高で確認される」というよりは、「トレンドの発生に伴って出来高が増加し、より強いトレンドになる」という表現が適切かもしれません。

※観測するタイムフレームによりますが、出来高に応じてトレンドの段階をある程度予測することができる可能性があります。この点は要検証項目です。

◇原則6:「トレンドは転換の明確なシグナルが出るまで継続する」

「長期トレンドは第一段階から第三段階へ移行していく」と原則③で定義されているように、トレンドは一度発生すると継続する性質があると認識されています。

「転換の明確なシグナル」とは、一定の期間内でトレンドを形成していた注文の方向が、それとは逆の注文と注文の出来高が逆転することです。

「転換シグナル」を迎えた長期トレンドにおいて、そこで反転し、いままでとは逆のトレンドが発生、継続していく可能性が生まれます。

金融商品の価格変動は、
…→「トレンド発生」→「トレンド継続」→「トレンド転換」→…
と循環することが原則③と原則⑥から理解できると考えています。

ここで注意したいのが、長期トレンドの調整局面としての中期トレンドでは、出来高が逆転するところまでは至らず、再度長期トレンドへ回帰する、という点です。

「トレンド転換のシグナル」か、「単なる調整局面」か、という判断をできるかどうかが、トレンドの流れを見極め、適切な投資判断に繋がると考えています。

◆所感と考察

『ダウ理論』に関わらず、世間に流通している投資理論には様々なものがあります。
どの理論が信頼できるのか、といえば、多くの人に長く実践で使用されたロジックは信頼性が高いのではないか、と考えています。

そして、理論をどのように活用するか、についてですが、
原則のひとつひとつを実際の判断基準や行動に結びつけることが大切だと考えています。

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