【I#002】『NISA/つみたてNISA』について【基礎知識と投資方法】


 【I#002】『NISA/つみたてNISA入門』について、先日本文の一部を公開しましたが、昨日の仮想通貨の相場を見ていたところ、はやめに【基礎知識と投資方法】の全文を公開した方が良い気がしたので、noteに投稿します。
 普段の仕事や家事・育児その他の活動で時間が取れない人におすすめの投資は「長期・分散・投資」が実現しやすい〝NISA/つみたてNISA〟関係だと考えています。

 〝購入数量を一定〟にした上で、全期間の〝購入時平均価格〟から最終的に値上がりする、という場合ですが毎月定額の積み立てはそれだけで「購入時からの価格低下リスク」を低減させる可能性が高いものです。

 分かりやすくまとめられているかどうか自信はありませんし、もしかしたら文章の中には誤っている部分があるかもしれませんが、このような文章でも一度目を通しておくことをおすすめします。

 〈追加・修正した場合は常にTwitterにて修正部分と修正箇所を投稿するようにします。〉

 『NISA/つみたてNISA』について

《目次》

第0章 はじめに

第1章 少額投資非課税制度、NISAとは?
 第1節 「NISA」とはそもそも何か
 第2節 NISA制度が生まれた背景
  第1項 実はお金の価値は減り続けている
  第2項 NISAを活用しよう!インフレ下でのNISA投資の必要性

第2章 NISAの基礎知識
 第1節 NISAの「キホン」
  第1項 NISAの利用は、一人につき1口座
  第2項 NISAには投資金額の上限額と非課税期間が設定されている
  第3項 NISAには3種類のタイプが存在する
 第2節 3つの「NISA口座」について
  第1項 一般NISA
  第2項 つみたてNISA
  第3項 ジュニアNISA
 第3節 これを覚えたら大丈夫!NISAの基礎用語
  第1項 投資信託
  第2項 累積投資契約
  第3項 ロールオーバー
  第4項 ETF
  第5項 REIT
  第6項 公募投資信託
  第7項 整理銘柄と監理銘柄

第3章 NISAの始め方
 第1節 口座開設の手続き
 第2節 おすすめの金融機関
△この部分は後ほど追記します。

第4章 NISA投資のメリットとデメリット
 第1節 NISAのメリット
  第1項 少額資金でも投資を始められる
  第2項 非課税期間中は投資による利益が非課税となる
  第3項 ドルコスト平均法に基づいた投資法が活用できる
 第2節 NISAのデメリット
  第1項 一般NISAかつみたてNISAのどちらかしか開設できない
  第2項 損失を出した時に税制上の控除を受けられない

第5章 NISA制度はこう変わる!2024年からのNISAについて
 第1節 2024年からの一般NISA
  第1項 新NISAの「非課税投資枠」
  第2項 新NISAの「非課税期間」
  第3項 新NISAの「口座開設可能期間」
 第2節 2024年からのつみたてNISA
 第3節 ジュニアNISAについて

第6章 総括



【以下本文です】

第0章 はじめに
 
 本書は、将来の資産形成に興味のある人にとっては絶対に読んでほしい内容になっています。
この投稿で取扱うテーマは「NISA(ニーサ)」です。
〝NISA〟は「未来の資産形成」に非常に適した制度なのですが、その詳細については知らない人もまだまだ多いような印象です。

 「NISA」を使って投資をすると、たくさんの経済的な恩恵を受けることができます。
 本書を読むことで、NISA制度について理解し、それぞれの大切な資産を守り、増やしていく方法を学ぶことができる内容になっています。
 「老後資金」「資産形成」「投資」に興味がある方は、この機会に「NISA」について理解を深め、この制度を有効活用していってほしいと思っています。


第1章 少額投資非課税制度、NISAとは?

 第1節「NISA」とはそもそも何か

〝NISA〟は、もともとイギリス発祥の制度です。

 「ISA(Individual Saving Account)」という英国の個人貯蓄口座をモデルとして、日本版のISAが作られました。
 日本版の制度なので、ISAに日本(Nippon)の「N」がついて、〝NISA〟という名称が付きました。

 NISAはニーサと呼ばれ、正式名称は「Nippon Individual Saving Account」というものです。

 日本の税制において、株式や投資信託などの金融商品を購入し、これらを売却して得た利益や配当金に対しては、約20%(正確には合計で20.315%)の税金がかかることになっています。

 「20.315%」の税金の内訳を確認してみましょう。

 通常の資産運用で「利益」に対して課税される税率は、「20.315%」で、「所得税(復興特別消費税を含む)」が15.315%、「住民税」が5%で、合計20.315%の課税がされています。
 NISAは「NISA口座」内で、毎年一定の金額の範囲内で購入した〝株式・投資信託〟などの金融商品から得られる利益が非課税になる、非常にお得な制度なのです。

 「NISA口座」では、金融商品を売却して得られた利益が非課税対象になりますし、金融商品を保有していると受け取ることができる配当金・分配金にかかる税金も非課税になります。
「NISA」とは「投資で得た利益がすべて非課税になる制度」と覚えておきましょう。

 第2節 NISA制度が生まれた背景

①実はお金の価値は減り続けている

 日本政府がNISA制度を作り、投資から得られる利益を「非課税」にすることで個人に向けて投資を促していることには「インフレ」が大きく関わっています。
 そもそもインフレとは、物や製品・サービスの価格である「物価」が持続的に上がっていくことで、お金の価値の視点から見ると、お金の価値が下がっていくことです。
 一般的に、経済成長している社会では、製品やサービスへの需要が供給を上回り、物価が上昇します。
 経済成長している社会では、新たに製品を購入したい、サービスを利用したい思う機会が増えていきます。

 その場合、「欲しい」と思った時にその対象の製品・サービスが十分な数が提供されず(=需要が供給を上回っている状態)製品・サービスの希少価値が増加します。

 そうなると、相対的にお金の価値が下がり、以前と同じ製品やサービスを利用しようとしても、より多くのお金が必要になります。
これが「物価が上がっていく」という状態です。

物価が上がれば上がるほど、お金の価値は下がっていきます。
ここで、最近の日本の物価上昇率(インフレ率)を見てみましょう。

括弧内は、前年のインフレ率とその年のインフレ率の差です。
2014年=2.76%
2015年=0.79%(▲1.97%)
2016年=▲0.11%(▲0.68%)
2017年=0.47%(+0.36%)
2018年=1.20%(+0.73%)

上記のように推移しています。

  この数値を見てみると、物価上昇率がマイナスになっているのは2016年のみ、他の年については毎年物価が上昇しています。

このデータから分かることは、日本では「ほぼ毎年お金の価値が減少を続けている」ということなのです。
ここで、資産の管理方法に視点を移して考えてみましょう。

 多くの人にとって、資産と聞くと「貯金」と連想する人が多いのではないでしょうか。
 実は「インフレ」と「貯金」は大きく関わっており、私たちの将来の生活を脅かすものになるかもしれないのです。

 例えば、毎月3万円を将来の生活資金や子どもの養育費のために貯金している人がいるとしましょう。

 毎月3万円の貯金を1年間続けると、36万円の貯蓄になります。
この貯金を5年間続けたとすると、約200万円の資金が銀行の口座に残ることになります。

 銀行にお金を預けておくと、預けた金額や預金の種類に応じて「金利」が支払われます。
それでは、現在の日本では銀行にお金を預けておくとどれくらいの金利が貰えることになっているのでしょうか?

 2021年8月4日に〝日本銀行金融機構局〟が発表している「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について」というファイルを見てみます。

 「定期預金」については、金額が「300万円未満」で、預入期間が「5年」までの金利は、「年利0.003%」となっています。

 それに対して、「普通預金」は「年利0.001%」となっています。
 この年利の数字は、今の日本では「銀行に貯金をしておくと年間で0.001~0.003%お金が増える」ということです。

  先ほど、インフレとは、「お金の価値が下がること」だと説明しました。
 今後、日本のインフレ率が毎年「1%」で推移していく場合を考えてみましょう。

 インフレ率が1%ということは、毎年物価が1%ずつ上がっていくということで、それはお金の実質的な価値が毎年1%ずつ下がっていくといいかえることができます。

 先ほど、毎月3万円の貯蓄の例を考えましたが、5年間で200万円貯めた貯金も、もし「タンス預金」をしていた場合は、インフレ下ではどんどん価値が下がっていきます。

 具体的には、1年で18,000円、3年で53,462円、5年で88,217円もお金の価値が目減りしていってしまうということです。

  では、この200万円を銀行の定期預金に預けておいた場合はどうでしょうか?
 現在の定期預金の該当金利は「0.003%」でした。この金利が毎年口座残高に応じて振り込まれるので、1年で5,400円、3年で16,248円、5年で27,162円、お金が増えていくことになります。

  銀行の定期預金へ預けた180万円は、表面上の数字を見ると少しずつ、確実に増えていっているように感じます。
 しかし、インフレ下では、預金金利でお金が増える以上のスピードで「お金の実質的な価値」が下がり続けているのです。

  ここで、日本の中央銀行であり、経済・貨幣の動向を取りまとめている「日本銀行」のインフレ率に関する発表を見てみましょう。

 日本銀行は、毎年2%の物価上昇率を目標として掲げ、金融政策を実施しています。
この2%の数字に込められた意味は複雑なのですが、物価が上昇している=経済が成長している、という意味合いが最も大きいです。

 経済成長を目指す日本政府と日本銀行が、その目的のための結果として「物価上昇率2%」を目指しているのです。

 先ほど、物価が「1%」上昇した場合、お金の価値がどれくらい下がるかを試算しました。

 実際は物価上昇率が2%を連続して記録する可能性は少ないと予想しているのですが、それでも2014年~2018年の5年間で物価上昇率がプラスになった年は4年もあります。

 その4年間は「お金の実質的な価値」が減少していたことは事実です。
 このように、日本が経済成長をし続けるということは継続してインフレが起きやすいということであり、保有している資産がインフレの影響を受けやすいということになります。

 それでは、日本の国民は目減りすることが明らかな現金という資産をどう扱ったらいいのでしょうか?
 その答えが「NISA」にあるのです。

②NISAを活用しよう!インフレ下でのNISA投資の必要性

 NISAという制度が設置された背景には、上記のインフレが家計に与える影響を緩和しようとする意図があります。

 NISAという制度には大きく2つの目的があります。

 1つ目は、投資によって得られた利益に対して、20.315%の課税がなくなる非課税措置を通して、一般の個人にNISA口座を通した資産形成の機会を提供することです。

 2つ目は、多くの人が資産形成しようとすることに伴い、家計から企業へ株式等の購入を通して供給を促すことで、企業の成長をサポートすることです。

 2013年6月6日に、NISA推進・連絡協議会は「NISAの勧誘及び販売時における留意事項について」という文書でNISAの目的を説明しています。

 この文書によると、NISAの導入趣旨が「国民各層が、自助努力に基づく中長期の資産形成による成功体験を積み上げること」を目的としていると記載があります。

 また、「資産形成に掛る習慣の定着、ひいては『貯蓄から投資へ』の流れを確実なものにする」こともNISA制度の浸透の目的になってます。

 ここで『貯蓄から投資へ』という言葉が出てきましたが、日本では個人の金融資産の種類として、「現金・預金」の比率が非常に高いことが長年問題視されてきました。

  2016年9月末の「日本銀行の資金循環統計」によると、日本人の個人金融資産の総額は1,752兆円と発表されており、その比率は「現金・預金」が52.3%となっています。

 それに対して2000年のデータを見てみると、個人金融資産の総額は1,409兆円で、「現金・預金」の比率は53.9%となっています。 
 この間の16年間で、個人金融資産は343兆円も増えました。

 それにも関わらず、現金・預金が総資産額に占める比率がほとんど変わっていないのです。

 ちょうど2000年から「貯蓄から投資へ」というスローガンの下、個人の投資活動を促すような施策が実施されてきたのに、それがほとんど結果に繋がらなかったのです。

  NISAの主な投資先の1つである投資信託の平均利回りは、年間で3.5%です。

 仮に個人が持てる資産をすべて投資信託で運用し、平均通りの3.5%の利回りで運用できた場合、インフレ率が2%でもその影響を受けず、資産価値の目減りを防ぐことができます。
 このように「貯蓄から投資へ」という言葉には個人の資産を守ろうとする意味が込められているのです。
 日本で16年間もの間、個人金融資産に占める「現金・預金」の割合が変わらなかった原因の1つは、「投資は怖いもの」,「投資はギャンブル」と思っている人が多いことです。

  お金をたくさん稼ごうとする投資には、確かにリスクがつきものです。

 大きな利益を得ようとすれば、投資先の金融商品が値上がりするのか値下がりするのか明確に判断できない時にも、リスクをとって金融商品を購入する必要に迫られる時もあるでしょう。

 しかし「資産を守る」という視点から投資をする、という見方をしてみるとどうでしょうか。

 最も安全だと思っていた「銀行預金」という手段は、実はインフレの影響を最も受けやすいものであり、資産を守ろうとする行動が実は資産価値の減少に繋がっていたのです。

 お金は誰にとっても大切なものですし、長年コツコツ貯めてきた貯蓄となれば大切にしたいという気持ちはどんな人にも共通しているものでしょう。

 ただ「本当に資産を大切にしたい」と思うのであれば、正しく投資をする、という視点を持つことが大切です。

 投資の世界にはお金が増える確率が非常に高いとされる〝投資の3原則〟というものがあります。

 それは「長期・積立・分散」です。
 テレビCMなどでこの言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

 この投資の原則を最大限活用して投資をするこができる制度、それが「NISA」なのです。

 〝投資の3原則〟という言葉を見て、難しそうだな、と身構える方もいるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。

 「長期」というのは、金融商品の値下がりするリスクに対処する方法です。
 短い期間で投資をするより、長い期間の投資をした方が、値上がりする可能性が高いのです。

 「積立」は、運用資金を一定の期間で増やしていく方法です。 
 毎月運用金額をコツコツ積み立てて投資をすることで、保有する金融商品の金額を少しずつ増やし、資産が増える可能性を高めていきます。

 「分散」は、複数の金融商品へ投資する、という意味です。
1つの金融商品に全ての資金を投入してしまうと、投資している人の資産は、その金融商品の相場の影響だけを大きく受けてしまいます。

 今後、値上がりしていきそうな複数の金融商品に対して投資をすることで、平均的な資産額の増加を狙うのが「分散」なのです。
 NISAには種類があり、投資スタイルに合わせてこの投資の原則の長所を取り合わせて投資ができます。
 投資の原則のうち、投資を経験したことがない、という人がNISAを利用する場合「分散」は金融のプロにお任せすることができるので、安心してください。
 また、すでに何らかの投資をしている人、過去にしていた人にもピッタリの制度が用意されています。

  「NISAの勧誘及び販売時における留意事項について」では、NISAを利用してほしい人たちについての記載があります。

それはどのような人かというと「以前に投資を行っていたが中断している人」または「投資経験が浅い人」そして「投資経験がない人」です。

 NISAを活用した投資には多くのメリットがあります。
 NISA制度についての理解を深めることで「正しく・楽しく・お得に」お金を増やす方法を学んでいきましょう。


第2章 NISAの基礎知識

  第1節 NISAの「キホン」

 「NISA制度」に共通する特徴が3点あります。
 3点のポイントは、NISA制度の基礎を理解する上で必須のものなので、しっかりと覚えておきましょう。

 ①NISAの利用は、一人につき1口座

  NISA制度を利用するには、まず「NISA口座」を作成する必要があります。
 このNISA口座は作成できる数が決められており、一人につき1口座しか作成することができません。

 これは、すべての金融機関を通して作成できる口座の数なので、金融機関を変えて、複数のNISA口座を作り、非課税投資枠のメリットを数倍にすることなどはできません。

 また、NISAの種類については後述しますが「一般NISA」「つみたてNISA」の口座を両方作って、投資をすることも不可能です。
 NISAを利用する場合は「一人1口座」ということと「一般NISAとつみたてNISAどちらかしか利用できない」という点がチェックポイントです。

②NISAには投資金額の上限額と非課税期間が設定されている

  複数の種類があるNISA制度ですが、それぞれに異なる特徴があります。

 その違いは主に「非課税投資枠」の金額と「非課税となる期間」の2点です。

 1年間で、どれくらいの金額を投資できるのかによって、投資で得られると予想できる見込みの利益額も変わってきます。

 また、投資で得られた利益が非課税になる期間がNISAの種類によって違うので、利用するNISAの種類によって、投資の目的が変わってくることになります。

 NISAを利用する目的は共通して「資金を増やすこと」「資産形成」なのですが、非課税となる期間の長さによって、投資対象となる金融商品も変わってくるのです。

 NISA制度では、利用するNISA口座の種類ごとに「1年間で投資できる上限額」「投資によって得られた利益が非課税になる期間」が決められていることに注意が必要です。

 ③NISAには3種類のタイプが存在する

ここまでは、主に制度としてのNISAについて確認してきましたが、ここからは個別のNISA口座の詳細を説明していきます。

 NISAにはタイプがあり、3種類の「NISA口座」が存在しています。
その中には、最近非常によく見かけるようになった「つみたてNISA」も存在しています。

 「NISA」「つみたてNISA」は、似ているようで実は全くの別物なのです。
 3種類のNISAとは「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」です。

3つの「NISA口座」にはそれぞれどんな特徴があるのか、次節で1つずつ確認していきましょう。

 ここからは制度としての「NISA」と、口座の種類としての「NISA」の説明をしていきます。

 本書ではこの2つを区別するために、「NISA」を「一般NISA」と表記しています。

 また、国が設けた制度としての「NISA」については、「投資のために開設する口座としての各種NISA」と区別するために「NISA制度」と表記しています。

 

 第2節. 3つの「NISA口座」について

①一般NISA

一般NISAは、個人投資家のための税制優遇制度です。

 2014年1月にスタートしました。
一般NISAで設定されている毎年の非課税投資枠の金額は「120万円」です。

 非課税投資枠とは、「投資で得た利益が非課税になる」投資金額の上限のことです。

 一般NISAでは、非課税投資枠が120万円と設定されています。一般NISAを使って投資をする時、その「原資(元本)」が120万円までであれば、利益が非課税になるのです。

 さらにいいかえると、「一般NISA」を使って、年間「120万円」までの投資であれば、税金がかからない、ということなのです。

 非課税投資枠(税金がかからない投資金額の上限)の対象は、投資をすることで得た株式や投資信託などの売却益・配当・譲渡益です。
また「非課税投資枠」に加えて「非課税期間」も設定されています。
これは、投資から得た利益が非課税になる期間が決められている、ということなのです。

 「非課税投資期間」は、一般NISAの場合では「5年」と決められています。
 5年間は「一般NISA」口座で投資をして得られた利益がすべて非課税になりますが、

 5年を過ぎると、その口座で運用している資金で得られた利益には課税されます。

  「一般NISA」の特徴として、投資先の金融商品の選択の自由度が高いことが挙げられます。

 投資できる金融商品は「上場株式」「国内上場ETF」「国内上場REIT」「国内公募株式投資信託」などがあります。

 投資できる商品の幅が広いことから「一般NISA」は投資の経験がある人におすすめの制度です。

 どのような人が一般NISAを利用すべきなのでしょうか?

 それは、株式投資をしたいと考えている人や、幅広い金融商品から自分で商品を選択して投資をしたい人、また、市場の状況に応じて自分の判断したタイミングで投資したい人です。

 「NISA制度」の中では、1年間で運用できる金額が「120万円」と大きく、非課税投資枠のメリットを最大限に生かすことができるのも、「一般NISA」の特徴といえるでしょう。

②つみたてNISA

 つみたてNISAは、「NISA制度」がスタートした2014年の4年後、2018年1月からスタートしました。

 「つみたてNISA」の特徴は、少額からの長期・積立・分散投資を支援する制度となっている点です。

 「一般NISA」に比べて、非課税枠・非課税期間・投資できる商品に違いがあります。

 まず「非課税枠」ですが、一般NISAが毎年の非課税投資枠を「120万円」と設定されていたのに対して、つみたてNISAの非課税投資は「40万円」です。

 これは、一般NISAでは1年で最大120万円分の金額を投資できるのに対し、つみたてNISAでは1年で40万円を投資することができる、ということです。

次に「非課税期間」ですが、一般NISAが5年間だったのに対して、つみたてNISAはなんと「20年間」もの非課税期間が設定されています。

 これは「つみたてNISA」が、中長期の資産の積み立てでお金を増やすことを目的にしている制度だからです。

 投資できる金融商品についても「一般NISA」と違いがあります。

 一般NISAでは、国内の上場株式や上場ETF、REITなど、幅広い金融商品から自分で投資する商品を選択することができました。
 つみたてNISAでは、そのような商品の選択をすることはできず、金融機関が厳選した投資信託から商品を選ぶことになります。
 NISAと比較して選択の自由度はないのですが、投資商品を細かく選定する必要がないため、投資先で悩むことがない、というメリットがあるのです。

また、投資先は金融機関が厳選した投資信託のため、利益が得られる可能性が非常に高いです。

 投資信託は複数の金融商品を組み合わせて「資産ポートフォリオ」というものを組んでおり、金融商品が値下がりするリスクを分散させているため、利益が得られる確率が高いのです。

 こうした特徴から、「つみたてNISA」は、投資初心者の人におすすめの制度です。

 投資をするのは初めてだけど、商品選びで迷いたくない人、毎月コツコツ一定の金額を積み立てて、資産形成したい人、中長期の積み立てで試算を増やしたい人が対象です。

 投資する商品は金融機関が厳選した投資信託になりますが、この投資信託を構成している商品はプロの投資家が投資先に選んでいる金融商品でもあります。

 「つみたてNISA」を始めることで、毎月資産形成をしながらも、投資や金融商品について学びたい、と考えている人にとってもおすすめの制度なのです。

③ジュニアNISA

 「NISA」という言葉は投資の世界の言葉で、どちらかというと大人向け、というイメージを感じる方がほとんどだと思います。

そのイメージ通り、一般NISAもつみたてNISAも、対象年齢は20歳以上で、未成年の人はこれらの口座を開設することができません。

ただ、「子ども向け」のNISAも存在しているのです。

それが「ジュニアNISA」と呼ばれるもので、未成年者を対象とした少額投資非課税制度です。

「ジュニアNISA」は2016年からスタートし、口座開設ができるのは0歳から19歳までの未成年者です。

ジュニアNISAは、子どもの将来に向けた資産形成をサポートするために導入された制度です。

証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で、「ジュニアNISA口座」を開設すると上場株式、ETF、REIT、公募株式投資信託を購入し、投資を始めることができます。

ジュニアNISAは、一般NISAと同じく、非課税期間が「5年」と設定されています。

 一般NISAとジュニアNISAが多くの部分で共通しています。

 また、非課税投資枠は年間「80万円」と、つみたてNISAの2倍の金額となっています。

 非課税期間の5年と合わせると、総額で400万円の金額を投資しても利益が非課税になるのです。

 ジュニアNISAの対象は未成年者なのですが、口座管理や運用は、原則としてその未成年者は行うことができません。

 口座名義は未成年者になりますが、実際の口座管理・運用は親などの親権者にあたる者が行います。

 お子さんの両親や祖父母が、本人の将来の資産形成のために投資をする、というのがジュニアNISAの主な用途です。

 また、口座名義人である未成年者本人が金融商品を選択し売買をしたい場合には、親権者にあたる者の同意が必要になる点にも注意が必要です。

 お子さん自身の将来的な資産形成という目的に加えて、お子さんが「投資マインド」を身につけるために、保護者と相談しながら金融商品を選ぶ、という利用方法もあります。

 ジュニアNISAの特徴として、原則として子どもが18歳になるまでは、口座からの資金の払い出しを行うことができないことが挙げられます。

 払い出しが可能になるのは、3月31日時点で18歳になっている年の1月1日以降です。

 それまでに途中で払い出してしまうと、非課税で受け取ることができていた過去の利益に課税されることになってしまいます。

 ただしこの規則には例外が設けられており、災害等でやむを得ない場合は、税務署の確認を受けた後に非課税で払い出すことが認められますので、念のため覚えておきましょう。

 ジュニアNISAは、未成年者の名義で作るNISA口座を使用するため、一人1口座の原則の例外となっています。

 つまり、ジュニアNISA口座を開設した保護者の方は、個別の名義で一般NISAやつみたてNISAを利用することができます。

 1人で複数のNISA口座を開設して投資をすることはできませんが、お子さんがいる人はこうした例外もうまく活用して、年間の非課税投資枠を最大限活用するのも1つの手段です。

 第3節 これを覚えたら大丈夫!NISAの基礎用語

①投資信託

 投資信託とは、多くの投資家から資金を集め、ファンドマネージャーに代表される運用のプロフェッショナルが、株式や債券などに投資をする仕組みのことです。

 運用によって利益が生じれば、その利益は投資者の出資額に応じて投資家に分配されます。

 投資信託のメリットとして、少額から始められることが挙げられます。

 投資信託の投資先は複数銘柄で構成されるため、「投資の原則」の分散を活かした投資が可能になり、低いリスクで資産を運用することができます。

 投資信託の運用成績は市場環境の変化などにより変動するため、運用によって出た損益は投資額に応じて投資信託の投資家に帰属することになる点に注意が必要です。

②累積投資契約

 「累積投資契約」は、つみたてNISAに関わる用語です。

つみたてNISAは「非課税累積投資契約に係る非課税措置」という正式名称の制度であり「累積投資」という仕組みを利用しています。

 〝累積投資契約〟とは、一定額の上場株式投資信託の受益権(利益を受け取る権利)につき、定期的に投資を継続して、口座開設している金融機関に金融商品の買い付けなどの委託をする契約です。

つみたてNISAは「非課税」の累積投資契約です。

この契約は、「口座開設者が金融機関と締結した累積投資契約によって取得した金融商品の受益権の口座振替簿への記載等に係る契約」です。

 つみたてNISAをする場合は、口座開設者と金融機関が「累積投資契約」を結びます。

 この累積投資契約に基づいて、契約先の金融機関は金融商品の購入を口座開設者の代理で行うことになります。

 そして、購入した金融商品から得られた利益を非課税とするために、個別の計算がされるように「累積投資契約」に特別な約束が追加されています。

 つまり、つみたてNISAを分解すると「利益が非課税になる特別な約束」「累積投資契約」の2つから成り立っている、ということなのです。

 つみたてNISAの口座を開設する時にはこういった専門用語も出てきますので、あらかじめ確認しておくと契約内容がスムーズに理解できるでしょう。

 ③ロールオーバー

 一般NISAでは、購入した金融商品から得られた利益が5年間非課税となります。

 この5年間の非課税期間が終了した後に、NISA非課税投資枠で保有している金融商品を「翌年のNISA非課税投資枠へ移す」ことで、再度5年間非課税で運用することができます。

 非課税期間が終了した金融商品を、翌年のNISA非課税投資枠へ移す手続きを「ロールオーバー」と呼びます。

 この手続きをすればさらに5年間、投資信託や株式を引き続き保有することができ、運用によって得られた利益が非課税になるメリットを継続して受けることができます。

 非課税期間満了後の金融商品については、ロールオーバー、特定口座や一般口座などの課税口座へ移管、売却、この3つが選択可能です。

 ロールオーバーが可能な金額に上限はなく、金融商品の評価額が運用益を含めると120万円を超過している場合でも、全額を再度翌年のNISA口座に移すことが可能な点がメリットです。

 しかし、120万円を超える金額をロールオーバーすると、既に翌年の非課税枠を使い切っていることになるので新規の金融商品の買付は不可能になります。

 また、120万円未満の金額の金融商品をロールオーバーした場合には、120万円の非課税投資枠における範囲内で、差額分の新規付をすることができる点も確認しておきましょう。

④ETF

 ETFとは〝Exchange Traded Funds〟の略で、上場投資信託と呼ばれています。

 日経平均株価東証株価指数(TOPIX)などの特定の指数の動きに連動するような運用成果を目指し、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。

 ETFは、市場急落時に売買シェアが上昇することで、資金が流入する銘柄として注目されました。

 市場価格の上昇・下落でパフォーマンスが容易に把握することが可能で、運用の透明性が高いという特徴があります。

⑤REIT

REIT(リート)は、一般的に「不動産投資信託」と呼ばれています。

 投資社から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られた賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に配当する商品です。
 REITに投資をする人は、間接的に様々な不動産のオーナーになっており、不動産のプロによる運用の成果を受け取ることができるのです。
 REITには、安定的な配当が期待できる、流動性が高く換金性に優れている、という特徴があります。

  またREITの運用は不動産運用のプロが行うので、専門家の知識を生かした分散投資が行われている点にも注目すべきでしょう。
 REITを通した不動産投資は、住居向け不動産だけでなく、オフィスやホテル・倉庫など多様な物件に投資可能です。
 物件数だけでなく、物件の種類でも分散投資が可能な点がREITの優れている点といえます。

 ⑥公募投資信託

 公募投資信託とは、不特定かつ多数(50人以上)の投資家を対象とし、幅広く投資家を募集する投資信託のことです。

 以前は日本の投資信託は公募投資信託のみだったのですが、1998年の証券投資信託法(現在の投資信託及び投資法人に関する法律)の改正により、私募投資信託制度が導入されました。

 公募投資信託は、金融機関を通して多くの投資家から募集する投資信託なので、投資家は少額から出資することが可能です。

 公募株式投資信託はNISAの投資先の1つになっています。

⑦整理銘柄と監理銘柄

 整理銘柄と監理銘柄は、株式投資の言葉、ともに、「上場廃止」に関連する用語です。

 整理銘柄は、証券取引所へ上場している株式会社が、上場廃止基準に該当する、もしくは株式発行者からの上場廃止申請があり、上場廃止が決定した株式のことをいいます。

 監理銘柄は、証券取引所が上場廃止基準に該当する可能性がある株式の銘柄を、一定期間「監理銘柄」と指定します。

 上場廃止となった株式は著しく流通性が低下し、上場銘柄のように速やかに売買することができなくなります。

 投資家がそういった株式に資金を投入し、結果上場廃止となった場合に資金を現金化することができなくなるという事態を避けるために設けられている名称です。

 もし整理銘柄、監理銘柄と名付けられた株式を見た時は、なるべく購入をさけることがベストな選択です。

 

第3章 NISAの始め方

  第1節 口座開設の手続き

 NISA口座はどこで作ることができるのでしょうか?

 銀行や証券会社でNISA口座を作ることができることは、知っている人が多いと思います。

 上記に加えて、郵便局やネット銀行、ネット証券会社でもNISA口座を作ることができます。

 特に、ネット証券会社は手続きをオンライン上で行うことが多いため、口座開設の手続きも比較的早く、スムーズに口座開設したい人にはおすすめです。

 

 NISA口座の開設は、3ステップで行います。

まずは、NISA口座を開設する金融機関で「総合取引口座」の開設をします。

 次に、NISA口座を開設します。

 最後に、税務署への申請と確認が終わり次第、口座開設の手続きは終了です。

 税務署への手続きは金融機関が代理で行ってくれるため、心配は無用です。

  口座開設時に必要なものがあります。

 それは「マイナンバーカード」または「マイナンバー通知カード」と、「顔写真付き証明書」です。

 現住所や現在の氏名が記載されていないものは使えない点に注意が必要です。

 また、パスポートを使用する場合は、2020年2月4日以降に申請したパスポートは所持人記入欄がないため、使用不可という点にも気をつけましょう。

 提出書類については金融機関によって異なるため、ホームページのチェックや担当者への確認をしっかりと行い、手続きがスムーズに終わるように準備しておきましょう。

 第2節 おすすめの金融機関 

 NISAの口座を開設する大まかな手順を前節で確認しました。

 それでは、どの金融機関でNISA口座を開設したら良いのでしょうか?

 世の中にはたくさんの金融機関があり、普段から銀行の営業さんとお付き合いがある人もいると思います。

 NISA口座を開設する時の基準として「IPOの取扱いが可能か」「取扱っている金融商品の数」の2点に焦点を当て、以下の金融機関を選びました。

 「IPO」とは株式投資の用語で「未上場企業が、株式を証券取引所に上場し、株式を証券取引所を通して売買できるようにする」ことです。

 IPOは「新規公開株式」「新規上場株式」とも呼ばれ、上場時の公開価格で予約を受け付けています。

 このIPOは非常に人気があり、予約を申し込んでも抽選になる場合がほとんどです。

 IPOは上場後に値上がりする確率が高いため、投資家の間でも人気があります。

 また、取扱っている商品数の多さも重要です。

 選べる金融商品数が多ければ選択肢と可能性が広がります。

 複数の金融商品を比較して、適切なタイミングで金融商品を購入したり、組み合わせて保有するということも可能です。

 その選択の幅を広げるために、「取扱い金融商品数」も重視すべきでしょう。

 身近な銀行や信用金庫などでNISA口座を開設しようとしている人も、その金融機関の特徴を確認し、納得した上で口座開設をしましょう。

[第3章第2節は以下省略します・]


第4章 NISA投資のメリットとデメリット

  第1節 NISAのメリット

 ①少額資金でも投資を始められる

 投資をする対象の金融商品や、NISA口座を開設した金融機関によって異なる点もありますが、自分で決めた金額を投資することができるのがNISAのメリットです。

 特につみたてNISAの場合は、毎月1,000円~数万円という金額からでも長期的な資産形成のために投資をすることが可能です。

 毎月コツコツ貯金をしてきた人にとっては、つみたてNISAはピッタリの制度といえるでしょう。

 ②非課税期間中は投資による利益が非課税となる

  一般NISAでは5年間、つみたてNISAでは20年間もの間、投資で得られた運用益・分配金が非課税です。

 本来であれば20.315%の税率がかかり、利益が出た場合でもその金額の約5分の1が課税され、手元に残る利益は5分の4になります。

 税金分も投資に回すことができることを考慮すると、NISAは非常に投資効率の良い手段だといえます。

 ③ドルコスト平均法に基づいた投資法が活用できる

 特につみたてNISAに当てはまることですが、毎月一定額の金額を積み立て、金融商品を購入することで、平均買付単価を抑えることができます。

 どんな金融商品も、日々価格が変動しています。

 価格が変動する金融商品を常に一定の金額で、かつ時間を分散して定期的に買い続ける手法があります。

 毎月一定の金額で金融商品を購入することで、価格が高い時、低い時でも選んだ金融商品を購入することになります。

 例として、ある金融商品を毎月1万円ずつ購入する投資をする場合を考えてみましょう。

 投資を始めた初月、その金融商品は5,000円だったとします。

 毎月1万円分を購入するので、初月の購入数は「2」となります。

 その次の月、金融商品が値上がりし、「2万円」になったとしましょう。
この時の購入口数は、「0.5」となります。

そしてその翌月、金融商品の価格は「1万円」となりました。
この時の購入数は「1」となります。

3ヵ月目の運用実績を見てみると、投資した金額は「3万円」に対し、金融商品の保有数は「3.5」、その価格は35,000円となり、見事に資産を増やすことに成功しています。

 このように、毎月一定の金額の金融商品を購入する手法は、高値時の購入数を減らし、安値時の購入数を増やす効果があります。

 金融商品を最も安い時に購入し、最も高い値段で売却することができれば良いのですが、将来どのように価格が変動するか、ということは誰にも予測できません。

 上記の手法では、このような「価格変動リスク」を分散することができます。

この手法を「ドルコスト平均法」といいます。

 投資は、金融商品の購入と売却のタイミングが非常に大切です。

 ドルコスト平均法に基づいて金融商品を購入し続けることで、「どの金融商品を、いつ購入すれば良いのか」について迷う必要がなくなります。

 投資初心者の人にとっては非常に続けやすい投資法なので、しっかりと覚えておきましょう。

 第2節 NISAのデメリット

 ①一般NISAかつみたてNISAのどちらかしか開設できない

 このデメリットは、NISAの原則である「一人1口座」が関わっています。

 非課税投資枠、非課税期間、投資できる商品に大きな差がある「一般NISA」「つみたてNISA」ですが、この口座はどちらか1つしか開設することができません。

「一般NISA」では、国内外の個別株式やREITに投資することができる金融機関もあるため、非常に幅広い金融商品の中から投資する商品を選ぶことができます。

 それに対して「つみたてNISA」で投資できるのは金融庁の厳しい条件をクリアした投資信託・ETFです。

 金融庁の許可がある金融商品なので安心感があり、投資信託の特徴に応じて選ぶ楽しさもあります。

 NISA制度のデメリットとしては、異なるメリットを持つ「一般NISA」「つみたてNISA」を併用できないことです。

 口座開設時には、どちらのNISAが自分にあっているのかよく考えた上で、口座の種類を選択することをおすすめします。

②損失を出した時に税制上の控除を受けられない

 一般的な投資において、資産運用をしていて損失が出てしまった場合、他の投資で出た利益と相殺することを「損益通算」といいます。

 この「損益通算」をすることで、もし損失が出てしまった場合でも課税対象となる利益額を減らせるので、利益に対してかかる税金を少なくできるメリットがあります。

 ただし、NISAにおいては非課税投資枠内での運用による利益は非課税、つまり利益がなかったものと見なされているため、損失が出ても同様になかったものと見なされます。

 NISA制度内でのみ投資をしているのであれば特に問題はないのですが、NISAの他に課税対象となる投資をしていて、NISAで損失が出てしまった場合は損益通算ができません。

 また、損失額を翌年に繰り越して課税額を減らすことを「繰越控除」といいます。

 繰越控除についても、NISA制度においてはその対象となる「損失額」がなかったことになるので、他の課税対象となる投資で、翌年以降に出た利益と相殺することは不可能です。

 NISAの損失は、「損益通算」及び「繰越控除」することができない、と覚えておきましょう。

第5章 NISA制度はこう変わる!2024年からのNISAについて

 第5章まで、現行のNISA制度について解説をしてきました。
 資産形成する上では多くのメリットがあるNISA制度ですが、令和2年度の税制改正においてNISA制度の見直しが発表され、2024年(令和6年)から新しいNISA制度が始まります。

 その背景には、NISA制度設立時の理念であった〝家計の安定的な資産形成の促進〟〝そして経済市場への成長資金の供給〟があります。

 〝一般NISA〟〝つみたてNISA〟〝ジュニアNISA〟の順に、
制度がどう変わっていくのかを確認していきましょう。

 第1節 2024年からの一般NISA

 3つのNISA制度の中で、最も変更点が多いのが一般NISAです。
一般NISAは名称自体が変更になり、新名称は「新NISA」となります。
一般NISAから新NISAへ移行する上での変更点は〝3つ〟あります。

変更となるのは
▷「非課税投資枠」
▷「非課税期間」
▷「口座開設可能期間」

上記の3点です。

①新NISAの「非課税投資枠」

 新NISAは、非課税投資枠が2階建てになることが最も大きな変更点です。
 現行の一般NISAでは、非課税投資枠は毎年120万円でした。
 新NISAでは、非課税投資枠が2階建ての構造になることから、1階部分、2階部分でそれぞれ〝異なる非課税投資枠〟が設定されています。
 まず1階部分ですが、こちらは毎年20万円の非課税投資枠が設定されています。
 1階部分は、つみたてNISAと同様の〝積立・分散投資〟に適した一定の「公募株式投資信託」などが投資対象となります。
 2階部分の非課税投資枠は、年間102万円という額が設定されています。
 2階部分での投資対象は「上場株式・公募株式投資信託」などです。

 1階部分と2階部分で投資対象や非課税投資枠が異なっていることには理由があります。
 まず、現行の制度で主につみたてNISAが担っていた〝家計の安定的な資産形成〟という目的を、新NISAを利用する人に対しても実現できるように変更されています。
 1階部分で投資対象になっているのはつみたてNISAと同じ投資信託なので、分散投資に適しているものです。
 つみたてNISAを利用する人だけでなく〝新NISAを利用する人も、安定的な資産形成の視点でNISA制度を利用してほしい〟という金融庁からのメッセージが読み取れます。
 2階の部分では〝経済の成長資金の供給拡大〟と〝長期保有の株主育成〟を目的として、口座を開設した人は株式や投資信託に投資することができます。
 しかし、2階部分の非課税投資枠を利用することができる人は、「1階部分の非課税投資枠を利用している人」だけなのです。

 この制度変更により、NISAを利用する人全員が「分散投資」による投資をすることになります。
 〝新NISA〟は、現行の一般NISAとつみたてNISAの長所を合わせ持つ制度になるといえるでしょう。

②新NISAの「非課税期間」

 一般NISAが新NISAになることによって、非課税投資枠が1階部分と2階部分に分離することになります。
 これによって、1階部分と2階部分に〝それぞれ異なる非課税期間に関するきまり〟が設けられることになりました。
 1階部分の非課税期間は、最長5年間です。
注意しなければならないのがこの5年間が終了した後のことで、1階部分での投資については、非課税期間終了後、つみたてNISAへ移行が可能になります。
 2階部分は現行の一般NISAと同様に、5年間で非課税期間が終了します。
 新NISAは非課税期間が終わると同時に、つみたてNISAへの移管と継続が可能になっている点が一番の特徴といえるでしょう。

③新NISAの「口座開設可能期間」

 一般NISAの口座開設期間は、2023年(令和5年)まで、と決められていました。
 しかし、今回の税制改正により、2024年(令和4年)から2028年(令和10年)まで口座開設が可能になりました。

 ただ、一般NISA口座を2023年までに開設すると、新NISAに移行する際にどのような影響を受けるのでしょうか。
 現行の一般NISAを利用している人は、その一般NISAの非課税期間終了後に、新NISAにロールオーバーすることができます。
 その際は、2階部分から非課税投資枠を先に消費していくことになり、ロールオーバー時点で投資金額が102万円を超える場合は、1階部分の非課税投資枠も消費してしまいます。
 1階部分と2階部分の非課税投資枠の合計額122万円を超える金額をロールオーバーする場合は、全額を新NISAの2階部分に入れることができる点を覚えておきましょう。
 一般NISAから新NISAへの〝ロールオーバー〟が可能で、清算する必要がない点はメリットといえます。
 ただし、実際に新NISA制度が始まる2024年まで時間があるので、その間に変更がある可能性も大きいです。
 各変更点について、「金融庁からの発表やニュース」、新聞をこまめにチェックしておくことをおすすめします。

 第2節 2024年からのつみたてNISA

 つみたてNISAの変更点はシンプルで、「口座開設可能期間」が現行の制度では2037年までと決められていたのに対し、5年間延長の2042年まで口座開設可能になりました。
 つみたてNISA自体の変更点は多くないのですが、新NISAに関連して留意しておきたい事項があります。
 新NISAの1階部分の〝非課税投資枠を用いた投資〟が、〝非課税期間終了後につみたてNISAに移行できるようになった〟ことです。
 また、新NISAからの移行を考慮すると、新NISAの一階部分で保有していた金融商品については、つみたてNISAと合わせて25年間も非課税で保有することができます。
 さらに長期で投資できることになるので、〝長期投資のメリット〟を最大限生かせそうですね。

 第3節 ジュニアNISAについて

 利用実績があまり伸びなかったジュニアNISAは、2023年で制度が終了となることが決まりました。
 しかし、2023年を持ってただちにジュニアNISA制度がなくなり、口座を清算しなければならないということではありません。
 2023年までにジュニアNISA口座を使って投資していた人は、口座名義人の未成年者が成年を迎えるまでは引き続き金融商品を「非課税」で保有することができます。
 また、現行の制度では口座名義人の未成年者が18歳になるまでは払い出し制限がかかっていましたが、2024年以降はその制限が無くなることが予定されています。

第6章 おわりに

 NISA制度が作られた背景から、それぞれのNISA口座の特徴、NISA投資のメリットとデメリットを確認してきました。

 投資経験がある人にとっておすすめなのは、一般NISAです。

 選べる金融商品にも幅があり、非課税投資枠にも余裕があるので、資金があれば利益を狙う投資をすることも可能です。

 投資経験がまだ1~2年以内の人にとっては、つみたてNISAが最もおすすめです。

 つみたてNISAであれば「長期・積立・分散」通りの投資をすることができるので、毎月コツコツ積み立てることが得意な人に適した投資ができます。

 また、2024年にはNISA制度の見直しと延長も決定されており、NISAを活用した投資はさらに注目を浴びること間違いなしです。

  本書を読んでNISAに興味を持った人は、ぜひNISAを利用して投資を始めてみましょう。
自分で築き上げた資産を増やすのも、守るのも自分自身です。

 お得なNISA制度を活用し、「貯蓄から投資へ」資産の管理方法を変えていくことで、変化していく経済状況の中でも資産を守り、増やしていく方法をぜひ身につけていきましょう!

 

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