見出し画像

編み物一丁目一番地・Cast On 作り目のこと


日本の編み物本


日本の編み物本には、作り目の説明は1種か2種、多くて3種類ぐらいしか載ってないんですが、海外のビデオ・資料を覗いてみてください。たっくさん出てきますからっ。Cast on だけの本もあったりします。(下のは海外の本の翻訳版です。)

なぜ Cast On がそんなにたくさん必要なのか?


それは、デザイナーがその作品をどういう風に仕上げたいか、どんな方法が一番効率よくできるか等を考えた上で、いろいろ作ってきちゃったんです。上の本には211種類って書いてありますね。あ、Bind Off(伏せ目)も含めてなので、大雑把に Cast On を半分としても、100種類はあるってことになる。。本家本元の海外の編み物の世界には圧倒されます。

編み物は海外が本家本元で長い歴史があります。エジプトの遺跡から編み物の断片が出てきた、って話もあるくらいです。数千年の歴史です。その間、主に女性たちが一目一目を子どもや孫や旦那さんなんかに手編みしてきた。どれだけの人たちがどれだけの編み物を家族のために編んできたのか…。壮大すぎる歴史です。

Cast Onで気にしていること

どういう目的で出来上がった時にどんな感じになるか考えて、どれにするか決めています。機能的なことはもちろんですけど、見た感じが可愛くなるものが好きです。

私が辿ってきたCast On

*Long Tail Cast On


一番一般的な cast on です。日本では、昔はただ『作り目』でしたが、今は『一般的な作り目』や『指でかける作り目』と言った名前で紹介されています。名前が定まっていないのは、近年、欧米の編み物文化が入ってきたせいだと思います。インターネットが普及したことも一理あると思います。(ビデオは、前に書いた『編み物の道をトコトコ歩く私』の下のほうにありますので、どうぞ、ご覧ください。)

例をお見せします。

一番下の青い段がLong Tail Cast Onです

以下の作品は面白くて、始まりはたった2目のCast Onなんです。

簡単編みスリッパ
一番下の三角の始まり2目がLong Tail Cast On

Long Tail Cast Onがなぜ『一般的』と言われるのかというと、伸縮が必要ない場面にも、ゴム編みなど伸縮が必要な場面にも割りと何にでも使えるからです。

*Stretchy Cast On

靴下など作品によってはLong Tail Cast On では伸縮性が足りない、というものもあるので、伸縮性が担保された Cast On が作られてきました。"Stretchy Cast On" です。これもいろいろあるので、私が気に入っているものをご紹介します。

[ Very Stretchy Cast On ]
2目ずつできる Cast Onで、それほど難しくないです。始めにtail を測って作らなくてもいいし、目の感じも嫌いではなかったのでよく使っていました。


*その他のStretchy Cast On

(1) Provisional Cast On (暫定的な作り目)

編み始めがかなり伸びてくれないと困る場合に使います。鉤針で鎖編みをして、鎖の後ろに糸をからませながら目を作っていく方法です。後で鎖を外しながら目を始末していきます。

Provisional Cast On

上のは糸が極細のカシミアのタンクトップなんですが、後で編み始めのところを2cmほど内に折り曲げて、目の始末をします。Provisional ではなく他のCast Onを使うと、折ったところがきつくなって伸びません。腰の辺りにくるので、よく伸びてくれないと困ります。そして、このデザイナーの考えで、このデザインに『ゴム編みはいらない』と思ったらしく、『Provisional Cast On を施しなさい』とパターンの指示がありました。

上の写真は、高橋亜子さんというニッターの方の方法です。ラダーレースを使って鎖編みをしています。この作品では糸が細すぎて、ただ鎖編みをしてその後ろから目を作っていくと、輪針のチューブが糸の脆弱さに勝ってぐるぐる巻いてとても困ったのです。それで、この方法を取りました。ラダーレースに目数を書いておいたので、目を数えなくていいし、間違いがないので便利です。

(2) Backward Loop Cast On
これは、編んでいる途中にたくさん目を増やす時によく使われます。指に糸をくるっと引っ掛けるだけの簡単な方法です。伸縮してもらわないといけない場所に使います。伸縮したら困る場合は、別のCable Cast Onなどを採用します。

三角が終わった所から増し目としてBackward Loopを採用

私は英語パターンでこれを知ったので、親指を使って目を作りますが、この前久しぶりに日本の編み物本の巻末にある説明図を見ていたら、人差し指を使ってる!! 初めて知りました。。これは多分、アメリカ式かフランス式かの手の位置の違いかな、と思います。

*Channel Island Cast On


Quince & Co. のパターンの中で、Pam Allen の他にも素敵なデザイナーがいて、10年前目についたのが Ann Budd という人が編んだ帽子。この帽子の被り口に施してあるビーズが付いてるようなのが、Channel Island Cast Onです。

Ann Budd's Hat
帽子の被り口のところをご注目

これ、初めて編んだ時気に入りすぎて、違う糸でいくつも同じものを編みました。が、今残っている物が見つからない。謎です。。

Ann Buddはニット界ではかなり有名な方らしく、ニッター、デザイナー、編み物誌エディター他としても活躍されている方です。また別の機会に書きますが、Ann Buddは靴下が得意で、彼女の本で私は靴下編みを習得しました。靴下の師匠です!


*番外編:独特な日本の作り目術


日本の編み物本には、作り目する説明図に必ず棒針2本を合わせ持って作るように描いてあります。ですが、海外のTutorial(説明本やビデオなど)には、2本針でCast Onする図は見たことがありません。多分日本独特の方法なんだと思います。が、実はこれ理にかなっていて、伸縮性が必要なゴム編みを編む時、2本持っていつものLong Tail Cast On をするだけで十分な伸縮性のゴム編みができるのです。糸が針の直径1本分余分に載せられるからです。

いつも海外のTutorialだけ見てCast Onをしていた私としては、目から鱗でした。伸縮性のあるCast Onを色々試しても、十分な伸縮性が得られなくて困ったな、と思った物もありました。でも、これだったら簡単じゃん! ということで、ゴム編みの始めは、今や日本式の2本針の作り目でやっています(^^)

追記 (2024. 2.9) :2本針で作り目をしているビデオを見つけました。それが、"Russian Knitting"でした。日本の手編みは、海外からいつ頃入ったのか定かではないですが、ロシアの方からも入っているようですね。でも、あの独特なRussian Knittingをしている人、日本にいるのかなぁ。。パターンが独特でないと編めないので、戦後のアメリカ式やヨーロッパの方の方式(Western Knitting)に駆逐されてしまったのかもしれません。そして、作り目をする方法だけ残った、と。。多分ですが。

では、今日はここまで。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

** 今日の英語パターン言語はお休みです。**

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは、糸の購入に使わせていただきます。