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「藍色がほしい」
粘性を持つ海に向かって彼女はつぶやく。足の親指を浸しては、まとわりついてくる塩水を面白がった。

「藍色を何に使うの?」
「お母さんがきれいって言っていたから。ただそれだけ」

彼は彼女の頬にふれ、ポケットに藍色があったならとすこし悔やんだ。

「海の色からもらってはいけないの?」
「海は命を持ちすぎている。そんなひどいことはできないの」

彼女は沈みながら海に立つ。
彼はそこで藍色を渡せたらと願うも、空は藍をかすそぶりすらしなかった。


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