シャボンの国にて
足元を確かめながら歩かなければいけないのだけど、どうにもぼくはそれが苦手だった。好きなものを好きなだけ、そんな言葉を誰が言ったのか。間に受けたやつも大概だけど、相手が冗談の通じないやつだって、言ったやつも考えなかったのか。
「ここ、危ないよ。大人になっちゃうの」
「落ちちゃうって?」
「あのね、ママが言ってたの。大人になると、太ると落ちちゃうって。あなたは女の子だからまだいいけれど、気をつけなくちゃいけないって」
そういうことなら、三十路を迎えてもぼくはまだ子供なんだろう。
「ということは、おじちゃんはまだ子供かあ」
「そうなの?」
「そうかもしれない。ね、おじちゃんがもし下に降りれたら、その近くにお花でも飾ってくれるかい?」
女の子は少し考えると、首を横に振った。
「どうして?」
「だって、お花高いんだもん」
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