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無知なまじない師
夜空を眺めても星座については一切知ろうとしないまじない師と呼ばれた男がいた。男のために友人は詳しい人物を紹介しようともしたが、けっして彼らと交わろうとはしなかった。
「どうしてだい?新しい話でも生み出そうってか?」
「そうかもしれない。知ることで子供が社会に適応するのなら、ぼくは何も知らないままでいたい。こと星に関しては」
ときどき、男は近所の子供たちに自作の話を聞かせてやった。今日は巡り合わせがいいから、風呂を沸かす人がいるだとか、気のみを頬張る小鳥が見えるとか。
子供たちはそれを喜んだが、その後、古くから語り継がれてきた話を親が持ち出すと、よく分からないだとか怖いと言って親たちを困らせてしまうのだった。
じきに親たちは男と子供を会わせなくなった。男はそれを少し寂しく思ったが、自らが生み出したものがたりたちが、夜になればなぐさめて決して孤独にはしなかった。
ご清覧ありがとうございました。
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