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むかし書いた韓国コラム #176

 ここ数年、再開発の兼ね合いで老舗の飲食店が移転するケースをよく見かける。100年以上の伝統を持つ鍾路の里門ソルロンタンも再開発の波にはあらがえず、昨年近くの店舗に移転した。移転してもソルロンタンの味はそのままだが、風格のある2階建ての店とは雰囲気が違う。新しくなってきれいになったのは歓迎すべきなのだろうが、古き良き時代の面影を残す以前の店のほうが「老舗のソルロンタン」を食べた気になれたもの。きれいなお店で「老舗です」と言われてもどうもピンとこない。

 鍾路のヘジャングク屋の清進屋も移転して複合ビルに入っている。ここは内装・外装とも昔の雰囲気を残した作りなのは幸い。同じビルにはスンドゥブの「甘村」も移転しているがこちらは昔ながらのたたずまいは姿を消した。

 どの店も味は移転前と変わらないが、料理は味だけでなく店の雰囲気も重要なエッセンスだ。彼らも移転したくて移転したわけではないだろうが、移転後の老舗に行くとふと寂しさを感じてしまう。

【解説】
 鍾路1~2街界隈は昔ながらの風景は一変してしまった。里門ソルロンタン、清進屋、甘村はいずれも老舗だが飾らない雰囲気のお店で、近くで働いていたときは愛用していたもの。勤務地が鍾路から変わったせいもあるが、移転後はあまり行くこともなくなってしまった。
清進屋はその後さらに移転したようだ。

(初出:The Daily Korea News 2012年12月4日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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