むかし書いた韓国コラム #137

 髪が薄くなってきた人にとって毛髪移植は救世主だろう。最近は技術も向上しており、日本人向けに施術を行うクリニックもあるそうだ。ところで新聞の広告記事で変わった毛髪移植を見つけた。「もみあげ」だ。広告記事によると、先天的な理由や傷がもとでもみあげがない場合、「容貌が女性的で弱々しく見える」ので、もみあげ移植をする男性が増えているのだそうだ。そういう需要があるということに驚いた。

 というのも、ひと昔まえの韓国では床屋に行くと問答無用でもみあげを刈られたからだ。韓国語もおぼつかない時代に床屋に行き、韓国語で「もみあげ」がわからずもたもたしているうちにすっかりもみあげがなくなってしまった苦い経験がある。それから10年以上過ぎたが、そういえば最近は床屋でなにも言わなくてももみあげは温存されるようになった。もみあげの有無を気にする人がそれだけ増えたということか。もみあげをなでながら時の移ろいを感じるのであった…。

【解説】
 韓国生活を始めたばかりの1999年には床屋が恐怖だった。韓国語で日常会話に不自由はなかったが、さすがに「もみあげ」という語彙はなかった。もみあげを刈られたところで周りの男性もみんなもみあげがないのだから気にすることもないし、逆にもみあげがあるから日本人とバレやすいという弊害もあった。それでもやはりもみあげは温存してほしかったもの。そんな苦労も昔の話になったようだ。

(初出:The Daily Korea News 2015年5月22日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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