地バチ
新潟県に明星山という山があります。ロッククライミングで有名な山で、「みょうじょうやま」とも読みますが、私の周りでは、もっぱら「みょうじさん」と呼んでいました。日本で有名な岩場としては、剱岳、穂高岳、谷川岳があります。これらは、いずれもロッククライミングを始めるまでに、結構歩かなければなりません。明星山は、道路からはっきり岩場が見えるという珍しい山です。
明星山には、一般ルート(岩登りが不要な登山道)もあるので、岩場の偵察も兼ね、山仲間に声をかけて、登山道を登りました。岩場は有名ですが、登山道はそれほど登る人が多くありません。岩登り技術はいりませんが、藪がひどく、草をかき分けての登山となりました。
私は、クモの巣をはらい、藪こぎしながら、先頭を歩いていました。しばらく歩いていると、少し後ろを歩いているメンバーから、悲鳴が聞こえてきました。走ってこちらに来るので何が起こったかと思ったら、その後ろに大量のハチがいるのが見えました。地バチの巣を踏み抜いて、大量のハチに襲われたことがわかりました。
地バチは、正式にはクロスズメバチといい、名前の通り、色が黒いスズメバチの一種です。オオスズメバチやキイロスズメバチとは異なり、地面や低いところに巣を作るのが特徴です。
大量のハチで驚きはしましたが、そのまま登山を続けました。後日、聞いたら、刺されたメンバーの多くが、病院を受診したということでした。幸い、重篤な症状はありませんでしたが、ハチに刺されると医者にかかるということを、初めて知りました。
私は、子どもの頃から、アシナガバチ、クマバチ、ミツバチと、ハチにはよく刺されていました。刺される痛さは知っていましたが、それほど怖いものだとは思っていませんでした。自分の経験で、痛かったり、腫れたりするものの、そこまでだと思っていました。ずいぶん経ってから、ハチに刺されると、時にはアナフィラキシーショックで死に至ることもあるということを知りました。経験は大事ですが、自分の経験がすべてだと思ってはいけませんね。私は、その山行のリーダーでしたが、リーダーとしては知識が不足しており、判断も不適切だったと、反省しています。
最近は、山や畑に行くときは、ハチ対策にポイズンリムーバーというのを持ち歩いています。太めの注射器のようなもので、吸引して毒を抜きます。幸か不幸か、まだ使っていません。
自然に足をふみ入れるということは、虫や動物の世界におじゃまするということなので、ハチもヘビもクマも(いるところには)います。そういうものだと思って、正しい知識をもち、対策しながら、うまくつきあっていく必要がありますね。
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