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今だからわかる歌詞の意味ー夏が来るー

最近は滅多に行かないが、学生時代はカラオケにもよく行った。

私がカラオケで歌うのは、自分が好きな歌というよりは、歌いやすさとか場の雰囲気を重視した歌なので、必ずしも趣味というわけでないのだが、比較的よく歌う歌の一つに中山美穂の「ただ泣きたくなるの」があった。

女の子ばっかりで好き勝手に歌う場合は、男性ボーカルものも悪くない。
しかし、コンパの二次会で歌うのは、ぜーったいに女性ボーカルでなくてはならない。
これは鉄則。と、私は(今でも)信じている。

さらに、どっちかっていうと歌っている人自体がかわいいことがかなり重要な要素だと、これも私は信じている。
顔がかわいいというよりは、雰囲気が女の子っぽくて、ちょっと健気な感じというのがいい。
私自身はおよそそういうキャラではないが、必ずしも親しくない人が多い場では、そういう歌の方が「無難」だと私はそう思っている。
初対面で、下手にリアルな私の印象など与える必要はないからだ。
かわいい子と思われたいというよりはむしろ、癖のある個性で誤解を与えたくないという方が感覚に近い。

こういう私のポリシーがコンパ道的に正解なのかどうかはおいておいて、私はそういう基準で中山美穂を好んで歌った。
中でも「ただ泣きたくなるの」は歌いやすいメロディと、地味でしおらしげな感じが気に入っていた。

しかし、最近、この歌の歌詞を久々に見て驚愕した。
私はこんな歌を歌っていたのか、と。

とても忙しい恋人の家の前に座り込んで「私寂しいわ。でもがんばる」みたいな内容なのだ。
しかも「次々と友達結婚してく 現実的にあぁ夢が騒がしく見える」なんていう強烈なフレーズ。
これは、ハタチそこそこだったから許されていた歌詞だ。
今は、もう絶対に、何があっても歌えない。

結婚云々と言っていることがというよりは、男の部屋の前で座り込んで帰りを待ってしまういじいじしたところと、「結婚」がリンクするところが嫌なのだ。
お前の目的はそれだけか?という感じが。

この歌を聴いて、その健気さにぐっとくる男性は多いのだとも聞くが、本当だろうか。
少なくとも私はぞっとするし、勘弁してくれという気持ちになる。
いくら自分をカモフラージュするに近い目的で歌っていたとは言っても、今の私はどうしても受けつけられない。

今考えると赤面してしまう。
というか、悪寒が走る。

そして、当時の私が決して歌わなかったし、あまり好きではなかったのが大黒摩季。
あのワイルドなルックスや声と、意外に女っぽい歌詞というのがどうしてもマッチせず、ゆえに私の趣味ではないと思っていた。
ただ実際は、あまりきちんと歌を聴いたことも、歌詞を見たこともなかった。

そして、最近、真鍋かをりのブログで「夏が来る」をカラオケで熱唱した話が載っていて、それで初めてちゃんとその歌詞を確認した。

___


「夏が来る」大黒摩季

近頃 周りが騒がしい 結婚するとかしないとか・・・
社会の常識・親類関係 心配されるほど意地になる

私が好きになるぐらいの
男には当然 目ざとい誰かいて
お見合い相手の付録に一瞬グラッとするけど
One More Chance!!
本気の愛が欲しい

夏が来る きっと夏は来る 真っ白な馬に乗った王子様が
磨きをかけて 今年こそ
妥協しない アセらない 淋しさに負けない

「何が足りない・・・。どこが良くない・・・。」
どんなに努力し続けても
選ばれるのは あぁ結局
何も出来ないお嬢様

物事いろいろ知ってしまうと 瞬発力が無くなるもので
運命の人だと思っても 経験が邪魔して素直になれない

価値観・将来・etc・・・
を話し込んだならイイ友達にされそう
愛してる・・・なんて本気でHしたら その日から都合のいい娼婦(おんな)扱い
マジメなだけなのに

夏が来る いつも夏は来る 両手広げて待っている
年をとるのは素敵なことです
イジけない ネタまない 間違ってなんかない

こんな私を可愛い奴だと 抱き締めてくれるのは
優しいパパと 親友だけ
そういえばママもお嬢様

夏が来る きっと夏は来る 頑張ってるんだから絶対来る
恐がられても 煙たがられても
諦めない 悔しいじゃない もう後には引けない

「何が足りない・・・。どこが良くない・・・。」
どんなに努力し続けても
残されるのは あぁ結局
何でも知ってる女王様

それでも夏はきっと来る

私の夏はきっと来る


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これもまたすごい。
リアルすぎる。

ある意味リアルすぎて決して男性の前では歌いたくないが、一言一言がズバズバくる。
まるで女友達との会話を盗み聞きされているようだ。
(最近は幸せな友人が多いのであまりこういう話題にならないが、少なくとも数年前はかなりこのまんまだった感じがする)

ここまであからさまに、しかもあのワイルドで力強い声で歌い上げてくれるなら、拍手を贈りたい気持ちだ。
大黒摩季、今さらながら見直してしまう。

20代前半の頃はこういったトーンが浅ましい印象もあって、だから決して好きではなかったわけだけれど、人間、ものの感じ方は変わるものだ。
この歌が重視しているのは、結婚云々じゃなく、あくまでも「本気の愛」であって、結婚のために妥協する恋愛なんてしたくないのよ私って、という方が、実はずっとずっとリアルな女心。
「ただ泣きたくなるの」を平気で歌っていた分際でこの歌を浅ましいだなんて、よく思っていたものだ。

今の私を成長というのか、老けたというのか知らないが。

大黒摩季。
場の雰囲気や他人に与える印象を差し置いて自分一人で悦に入るなら、これほど気持ちいいカラオケの選曲はないと知った。

夏が来る(1994年・日)
作詞・作曲:大黒摩季
歌:大黒摩季

■2006/6/17投稿の記事
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