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旅の思い出

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旅の記録のつめあわせ
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#映画

富士山と愚問-もののけ姫-

「なぜ山に登るのか」と問われ、登山家ジョージ・マロリーが「そこに山があるからだ」と答えたことは有名に過ぎる。 なるほどとも思うが、少々エキセントリックだとも思う。 富士山に登ろうと思うと言ったとき、それに対して「なぜ」と訊く人はいなかった。 「一度登らぬバカ、二度登るバカ」というように、富士山に登ることについて、改めて説明はいらない。 大方の日本人が「富士山に登ろうと思う」とき、その理由はただ一つ、「富士山が日本一の山で、私は日本人だから」だと、それで十分事足りる。 「富

ユタさんとジャック-A.I.-

大学1年のとき、ニュージーランドで一ヵ月半ほどホームステイしたことがある。 ライオンズクラブのstudent exchangeプログラムを利用したもので、期間の前半を首都Wellingtonから車で1時間ほどの小さな町Fielding、後半をNZ最大の都市Aucklandで過ごした。 Aucklandでお世話になったホストファミリーは、ドイツ系の一家だった。 ホストマザーのユタさんは50代の専業主婦、ホストファーザーのラインホルトさんは大工、それから大学生の息子ヨハンとおば

シチリアの結婚式-ゴッドファーザー-

モンレアーレは、盆地の肌にはりつくように築かれた、小ぢんまりとした田舎町である。 この町のハイライトは12世紀に建てられたというノルマン様式のドゥオーモ。 「回廊付き中庭」と訳されるキオストロは静まり返って柱の影を落とし、一組の熟年夫婦が寄り添って歩く姿が絵になっていた。 ガイドブックによれば、モンレアーレのもう一つの見どころはクローチフィッソという名の巨大なマヨルカ焼の壁画。 本には正式な名前さえも載らない、教会の外壁に描かれているらしい。 もてあますほど時間があったの

マンジャーレ!-シェフとギャルソン、リストランテの夜-

午前中の散歩から帰って、キーボードを叩いた。 もう少し経ったらランチに行こう。 今日は街には出ないと決めたから、ホテルの中で済ますつもり・・・ とロビーにて、ランチは予約のみとの表示が目に入る。 なんということだろう、しかたがない。 確か少し歩けば、幾つかレストランがあったはずだ。 本とデジカメと財布を持って、再度、外に出た。 あいかわらず眩しい光。 今度は坂道をしばし下る。 オレンジの車体の路線バスとすれ違う。 道いっぱいを走るので、ぎりぎりまで身をよける。 右側に

五色沼トレッキング、夢と現-オー・ブラザー!-

東北は数えるほどしか行ったことがない。 関西生まれの私にとっては、相当に遠いところだ。 イメージだけで言えば、北海道より北にあるような気さえする。 北海道がカナダなら、東北はスカンジナビア半島で、前者がリゾートであり開拓地なら、後者は神話の国であり原初の地。 なぜか神秘的な印象がある。 旅行3日目の朝は少し早く起きて、五色沼まで出かけた。 もう2年近く運転をしていないのに、うながされて運転席に座る。 30分ほど車を走らせれば、裏磐梯の尾根を縫って、青葉のくぐり戸を抜けていく

上海の宇宙ステーション-2001年宇宙の旅-

上海は2度目だが、仕事で来たのは初めて。 前回は学生だったので安宿の宿泊だったけれど、今回はグランドハイアットを利用した。 今、上海で一番ホットなホテル、だそうだ。 聞くところでは、世界で一番高いホテル。 値段ではなく、ビルの高さが。 もちろん値段もそれなりに高い。 普通に泊まると一室3万5千円くらいか。 私はカンパニーレートなので一室2万円。パッケージツアーを使えば、プライベートでもこのくらいの値段で泊まることもできるだろう。 シングルユースではちょっと高いが、もともと