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旅の思い出

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旅の記録のつめあわせ
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#映画感想文

富士山と愚問-もののけ姫-

「なぜ山に登るのか」と問われ、登山家ジョージ・マロリーが「そこに山があるからだ」と答えたことは有名に過ぎる。 なるほどとも思うが、少々エキセントリックだとも思う。 富士山に登ろうと思うと言ったとき、それに対して「なぜ」と訊く人はいなかった。 「一度登らぬバカ、二度登るバカ」というように、富士山に登ることについて、改めて説明はいらない。 大方の日本人が「富士山に登ろうと思う」とき、その理由はただ一つ、「富士山が日本一の山で、私は日本人だから」だと、それで十分事足りる。 「富

沢と煙-激流-

柄にもなくアウトドアづいた勢いに乗り、誘われるがまま、「ラフティング&カヤック合宿」なるものに参加した。 埼玉県の長瀞という土地まで赴く。 数ヶ月前、TOKIOの「鉄腕DASH」で長瀞の渓流下りにチャレンジする企画が放送されていて、「ながとろ」という地名だけは覚えていた。 まったくの素人であるTOKIOメンバーが一般の客を乗せて船頭をやれるくらいなので、大して難しいこともないだろうと高をくくる。 私が体験するのは、屋根付きの小舟に乗った渓流下りではなく、ゴムボートによる「ラ

物語が生まれる街-スパイダー・マン-

摩天楼は山であり谷だ。 切り立った崖の連なり、影の落ちる峡谷。 谷底から見上げれば、尖った山が天空を削るほどにそびえ立つ。 尾根に立って見下ろせば、狭く深く暗い裂け目に膝が笑う。 そのマンハッタン峡谷を自由自在、蜘蛛の糸にぶら下がり、ターザンみたく駆け巡る。 大きなスイングでビルからビルへ。 しなやかな跳躍、目を奪う速度。 スパイダーマンが大都会に躍動する姿は感動に等しい。 縦方向の直線に比べ、マンハッタンの道は不釣合いなほど狭く感じる。 80階を超えるほどの高層ビルが