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あなたのなかの忘れた海


11月は結構好きな月だ。秋と冬の狭間の季節。どっち付かずで宙ぶらりんな月。
三連休が終わってしまう。なんだか人と会う気も出掛ける気もあまり起きず、殆ど家にいた気がする。美容院に今日こそは行こうと毎日思いつつ、気付けば2カ月前に切ったきりボブから大分伸びてしまった髪の毛もそのままに。

あ、でも大学の時の先輩後輩同期との飲み会には行ったんだった。サークルの中でも同じ学科だった人と数人で定期開催しているその会は、まあまあな高頻度で開催される。 ちょうど半年ぶりの今回は全ての話題になんだかしっくり来なかった。何度か途中で帰りたいとすら思ってしまった。             

誰かの結婚の話と仕事の話と昔話。話の6割はその場にいない昔の共通の知人の噂話で、主に私以外の人が話す。全てが今の私の年代にはタイムリーな話で、全てが今の私がしたい話では無い。いつも通り乗り切ったつもりだけれど、きっと曖昧な笑みをしてしまったんだろうな。薄い愛想笑いが、お酒を飲めない私が頼んだジュースみたいに薄いピーチサワーに溶けていく音がする。

大学を卒業して4年ほど経てばどこの飲み会でも話題はこんなものなんだろうか。

さっき夕方に近所に少し出た。音楽を聴きながらふらふらと。日が暮れてからは大分寒い事に今年初めて気付いた。毎日会社から帰る時には気温を気にする余裕も持っていなかったのに。
子供を迎えに来たお母さんも、咥え煙草で自転車に乗る老人も皆一様に寒そうにしていて、冬が少しずつ近づいている事を実感した。

そういえば今まで生きてきて人と付き合ったり離れたりしたのは決まって寒い時期だった。一年前のクリスマスに行った江ノ島の海は、すごく静かで綺麗ですごく寂しかった。

今年の冬はどうなるだろうか。
身体が冷えてしまったから生姜のスープを作って飲もう。

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