常世

映画と詩

常世

映画と詩

最近の記事

「あなたのため」という呪いについて

「あなたのためを想って言っている」 こんな言葉を吐く人のことを見る度に、不思議に思っていた。その言葉に従って行動した人が、幸福そうに生きているのを見たことがないからだ。 僕自身も、何度も「あなたのため」という言葉を言われたことがある。 「部活は続けたほうがいい」 「文学部なんて入ってもしょうがない」 「習い事はやっておいた方がいい」 こんな言葉の前にはいつも、「あなたのために言っている」という文言が付け加えられていた。そして、その言葉に従って行動する度に、ひとつ、またひと

    • 個性を発見する旅ー『デジモンアドベンチャー』

      ひさびさに「デジモンアドベンチャー」を再鑑賞して、全く別のタイチ達の物語が見えることに気がついた。 21歳になった僕の目に映ったのは、個性を発見せんと捥がく、彼らの「通過儀礼の旅」だった。 * 子供の頃の僕にとって『デジモンアドベンチャー』は、なによりも「ワクワクする物語」だった。 DVDプレイヤーなんて家にはなかった、少年時代。なけなしのおこづかいを使って、錆びれたレンタルビデオ屋で、ビデオテープを借りた。 そして一目散に家に帰って、居間のテレビで再生すると、そこには

      • 僕が避けてた、譲れないもの。

        ○sumika『MY NAME IS』との出会い最近、sumikaの『MY NAME IS』という曲をよく聴く。sumika自体は日頃好んで聴くのだけれど、この曲とはまだ出会っていなかった。 この曲のAメロには、こんな歌詞がある。 変身ベルトも仮面もない僕に ヒーローは来るはずなく仕方なく 避けてた所ちょっと向き合って 覗き込んだ自分の仮面の奥 そして、続くサビの歌詞。 アイムヒーロー いつも僕の中 面倒で向き合わなかった所に 答えあったんだ そうか 僕の探す答えは僕

        • 「傍観者」はもう終わりにしよう-『グッド・ウィル・ハンティング』

          「グッド・ウィル・ハンティング」。僕の1番好きな映画だ。この映画の中に、どうしても忘れられない言葉がある。 * この映画は、天才的な頭脳を持つ若者と心理学者の暖かい交流を描く作品だ。 僕がいつも見入ってしまうシーンは、以下の箇所。 物語の冒頭、はじめてのカウンセリングのシーン。若者であるウィルは自分を守りたいあまり、心理学者ショーンの妻を侮辱してしまう。ズケズケと知ったような顔で。 そんなウィルに、ショーンはひとことこう放つ。 「君から学ぶことは何もない。君の言うこ

        「あなたのため」という呪いについて

        • 個性を発見する旅ー『デジモンアドベンチャー』

        • 僕が避けてた、譲れないもの。

        • 「傍観者」はもう終わりにしよう-『グッド・ウィル・ハンティング』

          『天気の子』-選択する物語

          「10代ってなんでもできるのに」 私は高校生の頃この言葉が嫌いだった。 10代には、10代らしい悩みがある。 彼女を家まで送る送らないで喧嘩したり、部活でレギュラーを取りたくて練習に打ち込んだり、挑戦したいことがあっても周りの声に押しつぶされてしまったり… 結局、10代は何でもできるなんて、歳食った大人のマウンティングでしかない。そう思っていた。 * そんな私も大学生になって、21歳になった。なんとなく迫ってくる将来や、形を持って存在する就活に、不安を抱く毎日。なにも

          『天気の子』-選択する物語

          「明日、輝く何かをしようと思った」

          僕の大好きな一冊、北村薫先生の「秋の花」。 文学部に通う少女、〈私〉と、落語家円紫さんが、日常に潜む謎を解いていく、心暖まるミステリ。  文化祭準備中に事故死した〈私〉の後輩である真理子、彼女の死をきっかけに心を閉ざしていく真理子の親友、利恵。 果たして彼女達になにがあったのか、〈私〉は事件の核心に迫ろうとする。 そこには、あまりにやるせない真相があった。 * この「円紫さんと〈私〉シリーズ」は、とにかくみんなが優しさを持っている。 若くて青い〈私〉も、

          「明日、輝く何かをしようと思った」

          衝動を信じて、書く。

           ちょっと映画を齧っている程度の大学生の自分は、なんとなく人生を通して映画について関わりたいなあ、とか考えている。しかしずっと行動に移せないでいた。 思えば今まで、いつも自分に言い訳していた。 映画について書くって言っても…他にもそういう人は沢山いて、自分より心に響く文を書く人なんてたくさんいる、自分の文なんて無価値じゃないか、と考えていた。  でも最近気づいた。それでも書きたい、伝えたい、という衝動が自分の中にある。その衝動を信じて行動に移すのは人生において大事なこと

          衝動を信じて、書く。