現職地方女性議員の「選挙と妊娠」#4
こんにちは!
台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。
「選挙と妊娠」について、選挙3ヶ月前に第二子を出産した私と選挙2ヶ月前に双子を出産したうすいさんの経験をリアルタイムで記録に残している本企画。
今回は2022年12月、本目が妊娠9ヶ月、うすいさんが妊娠7ヶ月の頃の記録をお届けします。
二人の現状の体調と仕事、現職女性議員の妊娠出産や議員のさまざまな働き方について話し合いました。
■2022年12月の記録(本目 妊娠9ヶ月、うすいさん 妊娠7ヶ月)
―(インターン)今回もよろしくお願いいたします。お二人の体調や状況はどのような感じでしょうか?
(本目)今私が35週で、一応先週から産休の産前6週間の期間には入っています。ただ、おとといの子育ての委員会は出席しました。来週の保健福祉の委員会に出るかどうかは体調と相談という感じです。
体調的には、ついさっき徒歩5分ぐらいの郵便局に歩いて行ったらお腹の痛みが下の方にずんっときて立ち止まってしまって。外出るのが結構しんどいなっていうのはあります。
(うすい)私は7ヶ月で26週で、もう元の体重よりも10キロ増加しました。今は里帰り先の北海道にいて、前回もお話した通り欠席届けはもう出しています。
ただ最近もオンラインでは仕事したり、 研修受けたりはしていたんですが、8時間コースを4日間受け続けていたらさすがに辛くて。オンラインでご相談を受けてる間も「ごめんなさい。ちょっと横になってもいいですか?」みたいな瞬間が出てきたり、座ってるのもつらくなってきました。
オンラインならできると思っていた仕事もできなくなってきたことでもどかしさを感じていて、寝転がりながら仕事ができるPCテーブルやクッション等を買おうかなと思ってます。
あとは母の32年前のマタニティ服を譲ってもらったのですが、母が臨月で着ていたはずの服が7ヶ月の私が既に着れなくなりそうで、多胎ってこんなに大きいんだというのを日々実感しながら過ごしてます。
(本目)私は多胎ではないけど座っているのだけでも辛い気持ち、よくわかります...自撮り棒兼三脚があるのでそれにスマホつけて寝ながら返信したり、音声入力で「台東区議会議員・本目さよです。」と入力して返信したりしてます。
―本目さんは産休に入られてから委員会に出席されてたということですが、一般の会社員だと産休に入ると、雇用主が働かせないようにすると思うんです。
本目さん達の場合は議員の立場なので、参加しようと思えばできるけど、体調と相談して出たいものは出るといったスタンスですか?
(本目)そうですね、基本的に労基法でも産前の休業は自己申告制のはずです。ただ産後の休業は必須なんですよ。雇用主は産後6週までは絶対休ませなきゃいけないんです。
医師の許可があれば産後6週経ったら復帰できるけれど、基本は医師の許可がなければ産後8週になりますかね。
労働者の場合、産前は申請したら休ませなきゃいけないのですがそれは議員も一緒です。なので、私はまだ産前の休業申請を出していないんです。ただ本会議の一般質問については自分の質問がなかったこともあり、座り続けてるのが辛かったので途中で抜けさせてもらいました。
―産前直前になると、やはり座っているだけでも辛いものですよね。
(本目)家でオンラインかつビデオオフならまだ仕事もできますが、役所での仕事でしかも生配信もされるというと、緊張もするし楽な姿勢にもなれないし、「これはここで言わなきゃ!」みたいな、気持ちの面でも「戦い」じゃないけれども。やはり神経を使いますね。
―お二人とも出産に向けての準備は、揃いつつありますか?産休に入ると、本当に目前に感じられますよね。
(本目)一応入院グッズはスーツケースに今ポイポイ詰めてるところです。でもコロナ禍なので洗濯ができないとか、お見舞いに来てもらえないから後から夫に持って来てもらうこともできないので、どこまで何枚持っていけばいいんだろうというのは悩んでます。
―うすいさんはどうですか?産む時期まではまだ先なので、いきなり産気づくことはないかと思いますが...
(うすい)そうですね。ただ私は多胎で管理入院になるのは早いかもとは以前から言われているので、一応荷物もまとめています。
(本目)私の方からもお話したいことがあって。今ちょうど都内の議員の人たちの出産ラッシュなんですよ。 ちょっと前にたしか3人目を産んでた方もいらっしゃって。2人目3人目をこの期で、1人目を新人で産んでたようで。SNSを見ると、結構産む直前までガンガン仕事されているようでしたね。
他の区でもお2人ほどいらっしゃって。お一人はつい10日前ぐらいにご出産されたそうで、退院後5日くらいで議会にも出ていたようです。
―退院後5日って、本当に産んだ直後ですよね?
(本目)出産10日後くらいだと思います。
もうお一人もあと3日ぐらいで出産予定日だそうで、SNSで投稿されていらっしゃいましたね。
―みなさん、公にされてるってことですよね?
(本目)妊娠中から「今何ヶ月です」みたいな投稿をされている方もいらっしゃれば、産んでから発表された方もいらっしゃいますね。
妊娠中でも選挙応援や遠方に視察に行ってるのを見て、めっちゃすごいなと素直に思いました。ただ一方で何かあった時に事務局が病院手配等をするはずなので、そのあたりは大変だなとも思ったのですが。
―かかりつけに間に合わないこともありますもんね。
(本目)そうなんです。だから本当に個々人の方針というか、選択ですよね。私自身はいろんな面を考えて、遠方への視察はやめることにしました。すごい行きたい案件もあったんですが...休みます。
―これまで子育て世代の女性は政治の世界とはかけ離れてしまうイメージがあったんです。両立は大変でしょうし、ロールモデルもそんなにいるわけじゃないし。あと旦那さんの反応とかも。今のお話を伺うと、現職で妊娠出産をされる議員の方も少しずつ増えてきてるということなんですかね?
(本目)都内はそうかもしれませんね。これまでも都内は比較的20〜30代の女性議員がいたので、その方たちが妊娠出産をされているかもしれないです。でもそれも、2023年4月の統一地方選前に産むのか、選挙後に産むのかといったところで 今挙げた女性議員たちにも聞いてみたいところではありますね。
ちょうど選挙中に妊娠がかぶらないようにしてるのかな?とか。でも今産んでも、やっぱり選挙的には体力的にもしんどかったりはしますよね。
―半年ぐらいになると、割と保育園でも預けやすくなると思いますが、どうしても生後3ヶ月ぐらいまでは自分の体調も戻るか不安ですよね。
でも次の世代の方というか、これから産もうと考えられている議員の方や、これから議員になりたいけど妊娠や出産をどうしようと思っている方に「両立は不可能じゃないし、こういう風に乗りきれたよ!」みたいな「先駆者がこれだけいるよ」というのは心強い情報になりますよね。
(本目)そうですね。反面、生後すぐからガツガツ活動している姿を見てしまうと、プレッシャーに感じてしまう方もいるかもしれませんが。
―たしかに、「ギリギリまで頑張る姿」がロールモデルになるとしんどくなっちゃいますよね。体力や状況は人それぞれですし。
(本目)そうなんですよね。なので、私自身もこのインタビューで「ギリギリまで委員会は出る」と言ってしまってはいますが。でも特に愛ちゃんは多胎ですし、私や愛ちゃんが「もう無理。議会はちょっとお休みです!」っていう状況も発信できたらとは思ってます。いろんなパターンがあるよ、というメッセージが届けられればと。
―男性だと奥さんが妊娠していようがしてまいが関係なく動けるので、そういうパターンと比べられちゃうところもありますよね。
一方で女性だからみんな同じかというとそうでもなく、いろんなパターンがあると。「できないことはできない」と線引きして活動しているパターンもある、ということが伝わらないと「結局強い人しか現職中に出産できない」という伝わり方になってしまいますよね。
(うすい)そうですね。あとは同じ議員の仕事でも、国会議員なのか地方議員なのか、地方議員の中でも区議なのか都議なのか、あとは地方なのか都内なのか、といった環境の違いも影響すると思います。
私自身都内で区議をしているわけですが、国会議員や都議の方と比べるとスケジュール調整がしやすく、また地方で議員をされている方よりも前例があったりするので「初めてでも産もう」と思えたのかな、と。
(本目)それはそうですね !都議も大変そうだなって。夜中まで活動されているみたいですし...
(うすい)そう考えるとやはり都内の地方区議で、しかも女性議員の人数も増えつつあるからこそ理解も得られやすいというのはすごくあると思います。
―私からすると、国会議員と台東区議会が違うっていうのはわかるんですけど、都議ともやっぱり違うんですか?都議と区議はかなり違う?
(本目)二つ大きな違いがあると思います。まず一つは、議会のやり方が違っていて夜中までかかる場合も多いようです。台東区の場合は遅くなっても20時とかなんですよね。しかも、過去12年間に20時までかかったのも1〜2回だったと記憶しています。ただ20時といっても予測ができない20時だったので、なかなか大変でしたね。あらかじめ21時までって決まってれば、シッターさんを手配する等できますが、「何時になるかわかりません」みたいな形だったので...とはいえ台東区ではそんなこともほとんどないのですが、都議会は午前様になるということも結構見聞きします。
もう一つは、都議は選挙区が広いので取る票数っていうところの意味だったり、お呼ばれする会、例えば新年会の数とかは全然違うんですよ。
―具体的にはどういうことですか?
(本目)例えば台東区の中で私が谷中(※台東区内のエリア)だとして、谷中の行事や町会には行くけれども、蔵前(※台東区内の別エリア)で呼ばれるか?っていうと呼ばれないんですよね。
一方で都議だと台東区全域の選出の議員ということになるので、台東区のいろんなところから声がかかるんです。そうすると、凄まじいスケジュールになりますよね。もちろん「欠席します」と言えたらいいんですが、そこは結構勇気が入りますよね。
―休むっていうと、票を失う可能性もありますよね。
(本目)そうなんです。例えば台東区では2人都議がいるので、「1人は来てくれてるのに、なんでもう1人は来ないんだろう?」と言われちゃったりする可能性もあるので。
あとは台東区からの都議が2人=台東区の代弁者は2人しかいない、ということでもあるので、地元(台東区)の声を吸い上げたいって思うと、活動量が必然的に多くなりますよね。
―なるほど。同じ東京都内でも区議と都議では仕事のスタイルが結構違ってくるんですね。
■次回予告
以上が2022年12月、本目が妊娠9ヶ月、うすいさんが妊娠7ヶ月の頃の記録となります。
次回は2023年1月、本目が予定日を過ぎ、うすいさんが妊娠8ヶ月となった頃の2人の様子をお伝えします。
聞き手:小林美保(本目さよ事務所インターン)
編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)
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