ポタージュ1
この間、間接照明を買いました。
月の形をしていて、ぼんやりする光を見てるとものすごく文章がすらすらと進みました。
今まで長編の小説を書いていたのですが、なんかうまくいかないとで短いのを書いていくことにしました。
ポタージュ
夜になるとあらゆる感情が3倍ほどになってしまう。公園に落ちている砂つぶを、空から落ちてきた星だ、なんて思った夜が多々ある。それはこんな僕にも美しいと思わせる月のせいであると確信している。
月とは、それほどのものなのだ。
季節が冬になり、肌寒くなると特にそうだ。冷えた指先が、吐く息の白いことが、より一層感情を加速させる。寂しさも、喜びさえも、自分の思い通りにはならない。そんな自分が嫌いだ。どうやら今夜は感傷的なようだ。
冷えた体を温めればいくらかマシになるだろうと、自販機でコンポタージュを買って、握る。そんなことをしても何も変わらないことくらい百も承知なのだが、それでも一際美味しそうに光るそれを買わずにはいられない自分は、おそらく弱い人間なのだろう。もちろん、余計に買った一本を君に渡しても気持ちが伝わらないことくらい、百も承知だ。
ガタンガタンと自販機から落ちてきたコンポタージュを二本手に取る。悴んだ指先がじんとする。やはり指先が温かくなるだけで、それ以上の効果はない。公園のベンチに戻ると、「おかえり」という君をみてコンポタージュを買ったとき以上の気持ちになる。だめだ、やはり今夜は感傷的だ。
僕たちは放課後、次の予定までをこの公園のベンチで過ごす。僕は塾で、彼女はバイトだ。意味のある会話の方が少なかったが、それでよかった。今日の体育は疲れた、生指がだるい、最近楽しくない、そんな会話ばかりだ。周りから見ると僕たちは仲良くなるように人種には見えないと思う。僕はサッカー部とはいえ、眼鏡で学校でもあまり話さない(運動ができないわけではない。)。対して彼女は茶髪にカラコンだ(これはただの偏見。)。初めは彼女の愚痴を聞くため、僕が愚痴を言うために集まっていたのだが、それは今となってはどうでもいい。この公園に来る僕の目的は、ただの憂さ晴らしから別の目的になっているのだから。