ターミネーター

 つい最近も最新作が公開されていたという長寿シリーズにまでなりました「ターミネーター」の感想をいよいよ書いてみたいと思います。第一作目のことですね。この映画は確かスターログという雑誌で紹介されていたのを読んで、かなり期待して観に行ったと思います。「コナン・ザ・グレート」でアーノルド・シュワルツェネッガーの存在は知っていたのですが、それが不死身のロボットの殺し屋になってどこまでも追ってくるというのですから期待しないはずがありません。当時はジェームズ・キャメロンのことはよく知りませんでしたが、そもそもあまり監督さんで映画を観ていなかったような気もします。

 地元の小さな劇場に観に行ったのですが、まあ何と言うか、お話がよく出来た映画でした。SFとしてありがちなタイムスリップものなのですが、矛盾点をうまくごまかし、面白さに変換しています。そしてシュワルツェネッガーの怪演が映画を引っ張っています。自分のルックスが映画にどういう効果を上げるか知り尽くした演技です。黙っているだけだから誰でも出来るだろ、みたいなシュワちゃんの演技力を馬鹿にするような意見は当時からあったのですが、似たような役をやってこのターミネーターのようなインパクトを出せる役者が何人いると言うのでしょう。シルベスター・スタローンもそうですが、シュワルツェネッガーもまた役者として過小評価されている人だなあと思います。

 あらすじはサラ・コナー連続殺人が起こって、リンダ・ハミルトン演ずるサラ・コナーが謎の男に殺されそうになるところをカイル・リースが助け、実はカイルは未来から来たソルジャーで、サラが未来の機械との戦争において指導者になる男の母になる予定なので命を狙われており、それを助けに来たのだというお話です。分かりにくいまとめですが、まさか観ていない人はこの記事を読んでいないでしょうから、まあそんな感じです。

 で、ターミネーターが、現代にやってきて本当に無頓着に人を殺していくので、観ていてかなりビックリしました。でもだんだん痛快になってきます。銃砲店のシーンや、警察署襲撃のシーンなんかは、何の罪もない店主や警官が撃たれているのに、なんかスカッとしてしまいます。あまり大きな声では言えないんですけど、そういう不謹慎な暴力衝動や破壊願望を充足させてくれる映画という感じがします。

 ターミネーターは撃たれても平気なのでサラとカイルは逃げつつ反撃みたいな展開が続くのですが、構成がうまいので飽きるということはありません。また後半激しいベッドシーンがあったりするのもこの手の映画としては珍しいと思います。観客サービスとしてのベッドシーンではなく、もっとシリアスなものです。つまり生まれてくる指導者の両親がこの二人である、という結末に向けて、ちゃんと伏線を引きつつドラマ的な盛り上がりも狙っているわけで、あまり予算のないB級映画だったはずのこの映画がここまで評価されて今に至っているのも、キャメロンがアクションだけにとらわれず、真面目にテーマと向き合っていたからだということがよく分かります。

 実はラストの工場での戦いで、ターミネーターがまるであばしり一家の直次郎のように表面が焼けて完全なロボになってしまうのですが、ここからの展開はちょっとグダグダな感じがして私はあまり好きではなかったりします。ロボの姿になって立ち上がる瞬間は好きです。あの絶望感は大好きなんですが、そこからの追跡戦は決してストップモーション・アニメのせいじゃないと思うのですが、やはり迫力不足というか、追う方も追われる方もどちらもパワーダウンしているのでアクション的に一番もっさりしていて、それが最後の見せ場ということに少し不満を持ってしまうのです。でも何故かこのシリーズはそういう構成を必ず踏襲しているので、何かこだわりがあるんでしょうか、よく分かりません。

 最後にはガソリンスタンドで撮られた写真が、カイルが最初に持っていた写真だったということが分かり、うまくつながったね、と感動します。こういうタイムスリップものは、なにかしらうまくつながればそれで成功みたいな感じがしますので、こういうのは大事です。ところどころ予算の無いのが惜しいと感じる映画ではあるのですが、アクションが主眼と言うより、ターミネーターの怖さをメインに据えた、半分ホラーみたいなお話で、これはこれでまとまっていて非常に出来のいい映画だと思います。

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