アルタード・ステーツ/未知への挑戦

 またまた脈絡も無いのですが、ケン・ラッセル監督の異色SFサスペンス「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」について書いてみたいと思います。これは特殊メイクとかSFXだとかが流行り始めた頃に、そういった流れの中の一つ、つまりエンターテインメントSFアドベンチャーか何かのように公開されたものですから、それを期待して観に行ったら、妙に真面目に、そして地味に一人の科学者の実験を追ったSFだったので、ちょっととまどいました。これを劇場で観た時は私もまだ子供だったと思うのですが、それでも飽きること無く最後まで観れましたね。

 お話はウィリアム・ハート演ずる科学者が、食塩水の中で浮かぶ一種の瞑想タンクの中で、いろいろ実験をしているうちに、精神世界へのめり込んでしまい、幻覚を見たり、前世の記憶が蘇ったり、挙げ句の果てに肉体まで先祖返りを起こしたり、とかなりトンでもない内容の映画なのですが、不思議と一貫してシリアスムードが貫かれており、見事なSF映画となっています。

 中でも幻覚描写の映像がかなり幻想的で、ドラッグを使用した時のトリップ描写にも見えて、変な話ちょっとP・K・ディックの小説を思わせるところもあります(というのは後に思ったことで、公開当時はまだディックを読んでいたりはしませんでしたが)。もともとケン・ラッセル監督というとアートよりな映画を撮っていたようで、ハリウッド系のSFX映画とはちょっと違った雰囲気の映像世界となっています。

 これは別にホラー映画ということではないのですが、最後のシーン、肉体が変容して壁を叩いて暴れ回るシーンなどは子供心に本当に怖く、私の中ではトラウマになっています。今観るとそうでもないのかも知れませんが、奥さんも巻き込んで、体がおかしなことになり、いったいどうなるのか、この悪夢的映像はいつ終わるのか、と泣きたい気分でした。

 その後、特殊メイクやSFX等の映画の中の不気味なクリーチャーは全部作り物なんだということが分かり、それはそれで楽しんだりするようになったのですが、この頃のように本気で怖いと思って観れた時代が一番幸せだったのかも知れないなあとちょっと寂しい感じもします。


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