インディ・ジョーンズ/最後の聖戦

 そんなわけで「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」でのお話をしたいと思います。三部作の完結編みたいに言われてましたけど、確かこれで終わりということは誰も言ってなかったように思います。タイトルに最後のとついてますが、これは地上で行われる最後の聖杯探索みたいな意味でシリーズの最後ってわけじゃないんですよね。とかぶつぶつ言いましたが、これ観た当時はちょっと物足りなく思ったのですが、ビデオやテレビで何度も観るうちに好きになっていった作品であったりします。

 初めて観たときにひっかかったのは、映像の感じが前二作と違っていたことです。前二作は原色チックでおどろおどろしい色彩と言いますか、そんな昔の冒険活劇世界を構築していたと思うんですが、なんだかこの映画は光が自然光っぽくてリアルというか現代風な映像だったのです。ベニスのシーンとかは何だか本当に現代っぽいんです。それがちょっと気になったようです。

 お話は聖杯を探して親父といっしょにナチスと戦うというものですが、なかなか「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」ほどノンストップムービーというわけではありません。女科学者といっしょにベニスの地下迷宮で火あぶりにされかけたり、ボートチェイスをしたりしていますが、いまいちテンポが悪いように思われました。ネズミが大量に出たり、アクションが凄かったり、人の命が軽かったりするのはいつも通りでいいんですけどね。

 この映画が本領を発揮するのは何と言ってもショーン・コネリー扮する親父さんが登場してからです。ここからはもう掛け合い漫才のようで文句なしに面白いです。アクション的な見せ場もギャグもこれでもかと連続します。バイクチェイスや、ヒトラーを茶化したり、飛行船に乗ったら追っ手が来て空中戦からのカーチェイス、そして絶体絶命の危機を親父の機転で切り抜けたりと、息つく暇もなく楽しみました。

 そしてアクション的には戦車戦が何と言っても大迫力です。ここでハリソン・フォードが例によって戦車にぶら下がって壁に挟まれそうになってピンチに陥るのですが、このときのリアクションが素晴らしすぎます。こういうのを観ていると本当にハラハラします。今のアクションスターに欠けているのってやっぱりピンチに落ちたときのリアクションのうまさだと思うのですが、そもそも今のアクション映画って主人公がピンチになるシーンそのものが無かったりするのかも知れません。

 なんだかんだで聖杯を隠した城というのでしょうか、谷の中の建物に到着するのですが、ナチに見つかり、親父を撃たれてしまい、インディがトラップだらけの道を進まされることになります。この辺りはそれまで親父とのやり取りがコメディタッチであっただけに本当に衝撃的です。スピルバーグ監督はこういう緩急のつけ方が本当にうまいと思います。

 トラップをくぐり抜けたインディは聖杯を手に入れ、悪い奴も女科学者に騙され命を落とし、親父も助かりめでたしめでたしと思われましたが、女科学者が円卓の騎士の言いつけを破って聖杯を外に持ち出そうとしてしまい、建物が崩れだします。

 ここで聖杯が地割れに落ち、女科学者も落ちそうになるのですが、インディが助けようとしているのに、女は地割れの途中に引っかかった聖杯を取ろうとすることに気を取られてしまい、力つきて落ちてしまいます。愚かな女だな……、とここで観客に思わせておいて、また地面が揺れて、今度はインディが地割れに落ちそうになり、親父の手にぶら下がります。ここで立場が先ほどの女科学者と同じになり、もう少し手を伸ばせば聖杯が取れる、とインディも誘惑に負けそうになります。この脚本は本当に面白かったですねえ。しかし親父はやさしく、「放っておけ」とささやきかけ、インディは正気を取り戻して親父の手を掴んで地上に上がるのでした。

 実を言うと、この場面のせいでこの映画がシリーズ完結編と言われたということもあります。これはつまり宝探しをあきらめ、もっと大切なものは家族の絆であり、自分の命であるというメッセージとも取れるからです。だから「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」のインディはあんなに宝に執着心がなかったのかも知れません。インディのキャラクター作りは整合性がとれているのですが、じゃあそもそも続ける必然性は無かったんじゃ……、と思ってしまいます。

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