ファイヤーフォックス

 はい本日は特に何かにちなんでということもなく私の趣味で、クリント・イーストウッド監督・主演のスーパー戦闘機アクション大作「ファイヤーフォックス」について書きたいと思います。ファイヤーフォックスと言ってもブラウザではありません。ソ連の最新鋭戦闘機の名前です。こいつを盗み出すお話なのです。

 アクション大作と書いたものの実は全編スパイ・サスペンス調の展開となっています。ファイヤーフォックスを奪って脱出するクライマックスがSFX満載のドッグファイトになっていますが、アクションと呼んでいいのはそのシーンくらいで、本当は地味な映画なのです。

 私は当時の予告で海面に衝撃波で水柱をあげながら飛行するファイヤーフォックスの映像を見せつけられたので、最初から最後まで戦闘シーンがあるかのような期待をして劇場に行ってしまいました。そのせいか前半はちょっと退屈してしまったことは否定できません。

 これ逆に主演がクリント・イーストウッドでなければ、アクション的な期待をしないので、前半のサスペンスも素直に観られるのではないかと思うのです。そのくらいイーストウッドがイメージと違うキャラクターを演じています。ロシア語を解するパイロットというだけで、大して腕っ節も強くなければ強烈な個性があるわけでもありません。諜報員達に手引きされてファイヤーフォックスの元に案内されるだけです。タフなアクション俳優とかでない人が主人公を演じていたらハマっていたのではないでしょうか。

 しかしお話はなかなか面白いです。イーストウッドはちょっと戦場体験でトラウマを持つパイロットで肝心なときにフラッシュバックが起きたりしてちょっとイライラ、もといハラハラします。いよいよ工場に忍び込んで黒尽くめのコスチュームでこっそりファイヤーフォックスに向かうシーンとかサスペンスとカタルシスを同時に味わえて最高です。また諜報員達の身を挺しての仕事っぷりがなかなかいいです。ひたすら地味なんですが、そのせいで諜報員の一人が追い詰められた頭上をファイヤーフォックスが無事飛び立つのを見上げるシーンがちょっと感動します。

 さてクライマックスなのですが、ファイヤーフォックスを奪って飛び立ったイーストウッドを敵の戦闘機が追ってきていよいよ戦闘シーンです。当時はCGなどなかったものですから、ジョン・ダイクストラによるSFXが目玉になっています。実はこれ当時の私が見てもあまり出来は良くなかったような気がします……。でも前半の鬱憤を晴らすくらい派手で、まるで違う映画かと思うほどですのでまあ良しとしましょう。

 この映画に関してはもうネタバレしてもいいでしょうから書いてしまいますが、この戦闘機、パイロットの思考を読み取って操作できるのですが、ラストにイーストウッドがソ連の戦闘機だからロシア語で考えるんだ、と気付いてロシア語で考えて兵器を作動させて相手を撃墜するという、ツッコミどころ満載なのですがスカッとする決着で、このアイデアだけは多くの人が気に入ったのか今でもいろんなところでパロディにされたり引用されたりしています(「G.I.ジョー」や、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」でもこれにちなんだギャグをやっていたような気がします)。

 しかし新兵器を開発したというだけで、ソ連の工場に忍び込んでそれを奪取して、追手を撃墜してそれでめでたしめでたしという映画が作られ、観客も何の疑問も持たずにそれを観ていたわけですから、そういう時代だったのですねえ……。ちなみにこの映画の同時上映が「マイ・ライバル」というスポーツ映画かつレズビアン映画だったのですが、これのオチもモスクワ五輪ボイコットというものでしたので、いやあ時代を感じます。

よろしければサポートお願いいたします。