ロックアップ

 さっきちょっとツイッターでタイトルを見かけたので急遽「ロックアップ」をご紹介したいと思います。何度も言っていることですが、シルベスター・スタローンほど素晴しい映画を作り、出演し続けていながら正当な評価を与えられていない人も珍しいのではないかと思うのですが、この映画などは特に、スタローンさんがちゃんとその役を演じながら、娯楽作品としてのツボも押さえた良作だと思うのです。

 確かこれは90年の正月映画だったと思います。同時期にはあの「バットマン」や「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」などがあり、興行的には苦戦を強いられていたと思います。というかハッキリ言って当たりませんでした。しかし、この映画は長らくマンネリ気味のスーパーヒーロー路線やコメディ路線に迷走していたスタローンが(と言っても個々に見ると面白い作品もありますが)、久々に等身大の人間を演じて、逆境から這い上がる感動的なアクションに戻って来た記念碑的な作品なのです。観ていない人は必見です。と言ってもこの映画は一時期やたらTVでやっていましたので全く観ていない人は多分いないでしょう。いないと信じて続けます。

 話は単純です。スタローン演ずる主人公はもうすぐ出所できる囚人です。外では恋人も待っています。そこへ彼に怨みを持つ所長(ドナルド・サザーランド)が配属になり(スタローンが移送されたんだったかな?)、スタローンを徹底的にいじめまくります。キレてスタローンが反抗すれば罰を与え、脱走でもしようものなら刑期が増えますので、スタローンは必死で耐えます。やがて所長の魔の手が恋人に及びそうになったので、スタローンは脱走を試みるのですが……。

 いやー分かりやすいストーリーです。ありがちで地味な話なんですが、構図の分かりやすさとキャスティングの妙で、ぐいぐい引き込まれてしまいます。クライマックスの脱走シーンまでスタローンはひたすら耐えます。いじめや、仲間を殺されたり、囚人を使って刺されたり、ありとあらゆる方法でいたぶられます。独房に閉じ込められて、寝ている時であろうがいきなり光とブザーを鳴らされ、点呼を取らされるという精神を破壊しかねない仕打ちも受けます。この描写がやはり見物と言えるでしょう。肉体派の方にはプロテクターも何もつけないアメフトシーンが迫力満点でオススメです。

 そんな感じで耐え続けてラストには脱走をするわけですが、ここの今まで耐えて来た怒りが一気に噴出するかのようなアクションシーンが最高です。防具をつけ、武器まで持っている看守二人を相手にスタローンは己の肉体のみで立ち向かいます。ここの格闘シーンはいかにもアクション映画といった立ち回りでなく、もの凄くリアルな泥臭い戦いになっているのでハラハラします(この映画は全編そうですが)。裏切りやどんでん返しの後に、どんな結末が待っているかというと、まあ意外に簡単にケリがつくので拍子抜けする人もいるでしょうが、この映画のオープニングを思い出すと、これしかないというエンディングですので、うまくまとまっていると思います。

 監督のジョン・フリンさんは「ローリング・サンダー」などを撮った方で、日本の任侠映画みたいな耐えていた男が最後に怒りを爆発させる映画を撮らせたら天下一品です。また音楽が「ロッキー」のビル・コンティということもあり、我が家のような安心感があります。さすがにこれをシリーズにするわけにはいかなかったでしょうが、こういう路線、もっと観たかったですね。今からでも遅くないですけど。

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