ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of prey

 そんなわけで「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of prey」の感想を書いていきたいと思います。前日に「スーサイド・スクワッド」を観て予習は完璧だったのですが、予習はそこまで必要なかった感じです。これはもちろんジョーカーの恋人ことハーレイ・クインを主役とした映画なのですが、ジョーカーは出て来ず、この映画で初登場の仲間たちがいっぱい出てくるのでまっさらな気持ちで観てねという作りになっています。

 簡単に言えばジョーカーと別れてハーレイが独り立ちするお話です。ゴッサムの裏世界で大暴れしていたハーレイですが、ジョーカーの後ろ盾があるからみんな手を出せなかっただけで別れたとたん命を狙われだすというお話と、悪の帝王ブラックマスクのダイヤを盗んだスリの子を助けて逃避行するお話のミクスチャーな感じになっています。これよく考えたら単純な話なんですが、登場人物がやたら多いのと(これはしょうがない)、時制を行ったり来たりさせる凝った語り口のせいで、なんでこんなややこしい作りにするのかな、と中盤までは観ていて思いました。凝ったと言っても目新しいわけではないのです。もうガイ・リッチーが20年前くらいに流行らせたようなスタイルなので正直、またこれか……、という感じもありました。ただマーゴット・ロビー演ずるハーレイがそりゃ見ていて楽しいから何とか観ていられました。あとはちょくちょく挟まれるアクションがかなり見応えがあるので、そこを楽しんで観ることにしました。

 アクションの何が凄いって、たいてい女の人が男の人をやっつけるのってどこか嘘っぽいというか、そのパンチがそんなに効かないだろみたいなのがあって当たり前で、そうなっていてもことさらダメだなどと言わないよう温かい目で観る風潮はあると思いますが、この映画に関しては、蹴ったり殴ったりという打撃のマジで当たっている感と言いますか、女性たちの腰が入って本当に力を込めて攻撃している感と言いますか、「ああこの女の人たちならガチで男と殴り合っても勝つわ」という説得力がありました。こういうのって本当に大事で、ここがいい加減だと今回みたいにアクションがメインになっているだけに目も当てられないことになるんですが、本当にみんな頑張ってました。私の一番のお気に入りはハーレイのドロップキックですよ。空中でちゃんと綺麗に身体が伸びきって床に落下するところまでワンカットで本人がやっています。頑張りすぎです。

 この映画はもちろん男性の束縛からの解放と言いますか、男社会での女性の地位の確立と言いますか、そういうテーマも明らかに込められているのですが、そこまで前面に出ていない感じですので、そういう観点を全く気にせず観ることもできます。前面に出ていないというのはセリフで直接言ってないというレベルの話でして、例えばブラックマスクの悪事の描写など、人を殺したり麻薬の売買をしたりというのは当たり前のことでそんなに克明に描写したりはしません。では何をもってこいつの邪悪さを見せるかというと、笑っていた女性客を腹いせに恫喝してテーブルの上に立たせて服を剥ぎ取り踊らせるという、この行為をもって邪悪な存在であるという描写にしているのです。そしてこれを止められず、というか加担して服を剥ぎ取る情けない男たちも同罪なのです。こんな悪いことしている男を、ハーレイたち女がよってたかってギタンギタンにするのを観て溜飲を下げる映画なのです。

 後半は本当にスカッとします。遊園地でのバトルからカーチェイスのくだりは中盤までのまどろっこしい「あーいつものDC映画か……?」みたいな悪い予感を吹っ飛ばすくらいに痛快でした。カーチェイスは「レイダース/失われた聖櫃(アーク)」をちょっと思い出しましたね。あそこでハンドルに頭をぶつけてクラクションを鳴らしたりするところは客席からけっこう笑いが起きて、なんか久しぶりに映画館で映画を観る楽しさが味わえました。これで全体を通して脚本と言いますか物語そのものの面白さがもうちょっとあればなあと思わなくもないのですが、最終的にはなんかいい気持ちで観終わることができましたので、これはこれでいいのかもしれません。続編ができたら観ようと思えるレベルではありました。ちょっと今は厳しい時期ですけどヒットして欲しいですね。

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