フォードVSフェラーリ

 本日も映画を観てまいりました。マット・デイモンとクリスチャン・ベールの共演が話題のレース大作「フォードVSフェラーリ」でございます。この映画、予告を見たときから気になっていたのですが、ひょっとしたら地味な映画かもしれないと心配もしていたのですが、観た人の評判が凄く良くて、そこまで車好きでもなくレースのことはてんで知らない私でも楽しめるだろうと思って観てまいりました。実話を元にした映画で、結構有名な話ですので今回もネタバレ満載でお送りします。未見の人はお気をつけ下さい。しかしネタバレされて困る映画ということもない気がしますが……。

 結論から言うと、大迫力のレースシーンはもちろん、ストーリーも見応えがあり、映画としての面白さが目一杯詰まった大娯楽作で大いに堪能しました。お話は実話が元になっており、レース好きの人にとってはよく知られているフェラーリ買収に失敗したフォード社が、レースに参入してル・マンで見事フェラーリを打ち負かすエピソードを、恐らく結構脚色して描いていきます。私が面白いなと思ったのは、これフォード最高! と持ち上げるような映画じゃなくて、フォード社の中にもウザい人がいて邪魔されたりと、決して美談みたいにしていないことです。というか登場人物全員ロクでなしです。主役のシェルビー(マット・デイモン)ですらかなり汚い手を使ったりして、「勝てばよかろうなのだ!」という精神が貫かれていて逆にすがすがしいです。人間ドラマももちろん織り込まれているのですが、感動を押し付けるような演出も特になされません。私が一番嫌いなのが、緊迫した状況で時間を止めて感動的なお芝居とか入れたりする演出なのですが、そういうのは一切なかったですね。とにかくシーンの密度が濃く、物語は常に動いています。2時間半と長尺な映画なのですが、長さを感じさせません。しかし観た後、ドッと疲れます。60年代という時代背景を損なわないためかカット割りはそんなに早くないのです。が、常に同時に何か起こっているような画面構成なので情報量が凄いです。何か字幕を読み損なって状況がわからなくなる、という危険性はあるかもしれません。ただ、少々わからなくなっても、そんなに面白さを損なうようには作られてないと思います。

 やはりレースのシーンの迫力が凄いです。スピード感とエンジン音に圧倒されます。ぜひスクリーンが大きくて音響のいい劇場での鑑賞をお薦めします。ほぼ実車を使って撮影しているので、事故のシーンの生々しさはなんか観ていて懐かしい感じさえしました。おそらく俳優が映り込むところとか局所的にしかCGは使っていないと思います。撮影は本当に大変だったんじゃないかなーと思いました。そもそもが24時間も車を走らせるとか、雨の中レースするとか、そんな死と隣り合わせなことを何十年もやっているモータースポーツというもののとんでもなさというか、もともと内包する狂気というものが垣間見えたりして、よくこんなことを実際にやっている人がいるなあとあらためて感心してしまいました。

 もしこの映画に弱いところがあるとするなら、ストーリー面と言いますか、フェラーリに雪辱を果たすぞといって始まった物語にしては、この結末はちょっと拍子抜けかなという点があるかと思いますが、これは史実なのでどうにもならず、その制約の中ではうまくまとめたのではないかと思います。あるいはことの顛末をみんな知ってるだろうという前提で作ってるのかもしれません。ただ、レースが終わった瞬間に映画も終わってよかったのではないか? という意見もあるようですね。この辺は人によって分かれるところかもしれません。

 役者さんも好演で、特にマイルズ役のクリスチャン・ベールは、え? これベール? と最初に見た時驚いたくらい別人のように見えたので、さすがだなあと思いました。役者さんとしては当たり前のことかもしれませんが。マットはいつも通りです。あと特に良かったのはマイルズの息子役のノア・ジュプくんですかね。うまく言えないのですが子供であることを売りにしたような演技をしてなくて、凄く好感が持てました。

 新年早々素晴らしい映画が観られて縁起がいいですね。この調子で今年もたくさんいい映画が観られますように、とお祈りして締めの言葉とさせていただきます。

よろしければサポートお願いいたします。