ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり

 3月24日、H・P・ラヴクラフト原作のホラー映画などで有名なスチュアート・ゴードン監督が亡くなりました。ご冥福をお祈りします。

 さて私がスチュアート・ゴードン監督を初めて知った「ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり」のことを今日は書いてみようと思います。当時、劇場で公開されてすぐに観に行ったのですが、確かショー・コスギさんの忍者映画と同時上映だった気がしますが、そちらは観ずにこれだけ観たのを覚えています。コスギさんごめんなさい。冒頭からいきなり脳みそを手の上に出したりして、数人の観客が逃げ出したのを覚えています。そうですこの映画は本格的スプラッタホラーなので、ワッと来てキャッと脅かすタイプのビックリ箱的なホラーだと思って観るとえらいことになるのです。

 原作はかのH・P・ラブクラフトさんですが、主人公のハーバート・ウェストが死体蘇生に夢中になるという骨子をいただいているだけで、かなりのアレンジがなされています。そもそも舞台が現代なので翻案と言った方がいいかもしれません。どうにもエキセントリックな人物が多すぎて、ちょっとコメディの域にまで達しています。演出もちゃんと緩急をつけて笑いが起こるようにしているので、コメディタッチなのはきっと狙い通りなのだと思います。私はこれと「バタリアン」と「ブレイン・デッド」がコメディホラーの三傑だと思うのですが、まあそれはどうでもいいですね。

 とにかくマッドサイエンティストのハーバートが友人を巻き込んでいろいろ実験をしているうちに学長(だったっけか? あまり覚えてない)と対立して最後にはゾンビ軍団を率いた大決戦となっていく素晴らしくもバカバカしいホラー映画なのです。それをエログロナンセンスいっぱいに描いていきます。私は最初の死体蘇生実験で死体が生き返ったらいきなり暴れ出して手がつけられなくなるあたりから爆笑してしまい、この監督は天才に違いないと確信してしまいました。不必要なまでに残酷な手段でその死体を再び殺すところも最高です。

 そして学長だったか博士だったかと対立して、ひょんなことで殺してしまって蘇生させて実験に使ったりします。首を切断しても死体蘇生薬によって身体も首も生き返ります。そして身体をテレパシーなのか何なのか分かりませんが遠隔操作できたりします。そんなことあるわけないんですが、映画なので出来るのです。本当に映画って素晴らしいですね。

 そのように博士が恐ろしい化物となってしまい、他の死体も生き返らせてなんか知らないけど女の人も誘拐して(確かハーバートか友達の恋人だった)、無意味にエロいシーンもあったりして、なんだかんだでクライマックスの大決戦です。ここで両手に注射器を持って現れるハーバートが無駄にカッコよかったりして最高です。

 お話はまあこの手の映画としてうまいことまとまったね、という感じで終わるのですが、この映画はストーリーがどうとかそういう問題ではないのです。とにかくそれやりすぎだろというような制御不能感が本当に凄くて、こういったタブーを弄んで普段感じないような非日常の恐怖や、また自分の中の秘めたるダークな感情を揺さぶられることが本当のホラー映画なのだなあと感じ入ったのでした。今観るとビジュアル的にちょっと物足りないかもしれませんけど、残酷描写が全てCGではなく作り物で表現されているこの時代の方がなんだか生々しくてショッキングだったりしますね、いつも書いてることですが。

 そういえばこの映画には続編もあるのですが、監督さんがブライアン・ユズナさんに変わり、雰囲気はガラッと変わってしまったのですが、なかなかわけの分からない方向へパワーアップしていてそちらも一見の価値のあるものとなっています。機会があればぜひそちらもご覧ください。

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